リフィル処方箋/考察

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リフィル処方箋が導入されたのは、2022/4/1、なんとエイプリルフールの日です。そのせいなのか、3年経った今でも普及が進んでいませんが、今日はこのリフィル処方箋を取り上げます。

 

一般的にはあまり馴染みのないリフィル処方箋ですが、簡単に言えば、症状が安定している患者は、診察なしで同じ処方箋を繰り返し使うことができる制度です。今までの処方箋との違いを簡単に纏めると、以下のとおりです。

上表で分かる通り、医師の診察を受けて処方箋を貰えば、その後2回、最初に作ってもらった処方箋を使って診察なしで薬局で薬をもらうことができ、薬をもらうためだけに受診している人や、毎回同じ薬を処方してもらっている人に適しています。もう15年以上、同じ血圧、高脂血症の薬を処方されている私は、これに該当します。診察は、毎日付けている血圧手帳を見せ、コメントをもらうだけで、たまに血圧を測ったり、聴診器を当てる程度なので、病院まで行かなくても済むリフィル処方箋にして欲しいと思っています。電子処方箋を導入しても、リフィル処方箋対応になっているので、問題ありません。むしろ処方箋を保管し、持ち歩かなくても済むので楽なはずです。

 

2回目、3回目は医師の診察を受けませんが、症状が安定している患者が対象だし、そもそもそのような患者に対する診察は、いつもの薬を処方するdo処方!おざなりの感が否めません。形式的(セレモニ的)に診察しているのはないかとさえ思います。薬局で、2回目、3回目の薬を受取る際には、薬剤師が服薬指導を行い、何かあれば医師の受診を勧めるはずです。また、4回目には必ず受診することになっているので、リフィル処方箋は役人が考えたとは思えないとても良い制度だと思います。

 

もっとも、役人の狙いは2021年度で45兆円という医療費の削減です。

高齢化社会の進行にともない、慢性疾患の患者が増加していますが、慢性疾患=同じ薬を処方する割合が高いということで、リフィル処方が使えます。使えるということは、病院に行く回数が減ることになり、結果として医療費削減が期待できます。足腰の弱った高齢者にとって通院しないで済む回数が減ることはありがたい話です。しかし、リフィル処方を採用する病院が少ないのが現状です。

 

受診してもらい、検査を受けてもらうことで収入になる病院側としては、患者が減る=収入が減るリフィル処方はしたくないというのは本音でしょう。やりたくないのがお金なのかという非難をかわすために、

①服薬指導をする薬剤師の負担が増える

②病状の悪化が見過ごされる可能性がある

③医師の診察が減ることで残薬管理がしにくい

④医師と薬剤師との連携を密にする必要がある

などというとってつけたような理由を持ち出しますが、上掲①、③、④は、きちんとした病院/薬局は、今までもやってきたはずです。②の❝病状の悪化が見過ごされる可能性がある❞は、薬剤師が服薬指導時に患者の症状の変化を確認すれば、受診を勧めたり医師に連絡すれば済むことだし、診察なしで薬がもらえるのは2回だけです。3回目はリフィル処方箋で薬をもらうことはできず、必ず医師の診察が必要になるので、リフィル処方になったからといって、❝病状の悪化が見過ごされる可能性がある❞ことにはならないでしょう。多分、この時の診察も既述のようにおざなり感があると思います。

 

症状が落ち着いている患者に、漫然とした処方が続く場合、患者が必要以上の通院を繰り返すことで、時間や金銭的な負担が増えたり、医療資源が無駄に消費されたりします。リフィル処方箋を利用すれば、一定期間の薬が適切に供給されるため、通院回数を減らし、患者にとっての利便性を高めることができます。同時に、医療機関側も診療リソースを効率的に配分でき、より緊急性の高い患者への対応に集中できるようになります。さらに、国の医療費削減においても、リフィル処方箋は重要な役割を果たすはずです。無駄な通院や過剰医療の削減は、保険制度の持続可能性を高める助けとなると思います。

 

リフィル処方箋採用で、収入減を心配する病院に対しては、リフィル処方箋を利用した診療に対して一定の補助を提供するなどの政策的な支援などのインセンティブを導入することも一案です。また、リフィル処方箋採用で、患者満足度が向上することも考えられます。これによって、医療機関の評判や信頼を高める効果があり、回り回ってこれが結果的に患者数の増加やリピーターの維持につながり、収入減少を補う可能性もあります。本当に診察が必要な患者に医療資源を割ける余裕も生まれるでしょう。

 

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