昨年夏、コロナ患者急増のさなか、オリンピックパラリンピック村で使われていたトヨタ製の自動運転バスが、視聴覚障害を持つパラリンピック柔道選手と接触する事故を起こし、選手は試合を棄権することになった事件がありました。この事件を調査していた警視庁は、バスの問題ではなく、発進や停止を担っていたトヨタ社員2名に過失がある人為的なミスと判断しを2名を書類送検したとのこと。

以前にも書いたことがありますが、改めて自動運転につき評価します。

 

自動運転機能開発が自動車メーカ以外のIT企業も参入して世界中でしのぎを削っていますが、上述の事件のように自動運転中の事故は珍しくなく、世界中で起きています

選手村内道路の横断歩道を渡ろうとしていた選手に気が付かず、右折してしまい事故を引き起こしたそうです。優秀な研究者、技術者がありとあらゆる場面を想定して作り込んだ機能と機構を以てしても、実際に起きる場面の考察が足りないということかもしれません。あるいは、それ以上は人間の判断と操作によるしかないとされる機能なのかもしれません。

 

さて、自動運転、運転支援について少し考察してみましょう。どうして自動運転という領域がクローズアップされてきたのか?警察庁の統計にも出ているように高齢者は他の年代に比べて事故につながるケースが多くなってきていることへの高齢者運転支援という面が確かにあります。

池袋で起きた母子2人をひき殺した前工技院院長の高齢者は、あくまでもブレーキが利かなかったと主張し自分の過失はなかったと言い張っていますが、操作ログを見るとブレーキではなくアクセルを踏んでいる記録が残っていると車を作ったトヨタが発表しています。高齢者の思い込みではなく、操作、動作をリアルタイムで記録するフライトレコーダのような機能が車に備わっているとは知りませんでしたが、この事例でも分かるように、ブレーキを踏むべきところをアクセルを踏み込んで加速してハネてしまうようなことは、運転支援機能があれば避けられたでしょう。自動運転機能のレベルには5段階あります。

選手村村内で運行されていたトヨタ製の自動運転バスはレベル2の初歩的なもので、運行支援のためにトヨタの社員2名が乗車していました。一人は乗降ドアの開閉、もう一人は発進、停止の操作を担当していましたが、乗降ドア担当者はともかく、発進停止を担当していた社員は何をしていたのでしょう。仮に彼が見逃したとしてもレベル2の運転支援機能には、自動ブレーキが備わっているはずです。この機能があれば、進行方向に人影(物体)を確認したはずです。すなわち、そのまま進むことなくブレーキをかけて止まったはずです。しかも、横断歩道です。前方カメラには人影と共に横断歩道が映っていたはずでなので、レベル2の機能の範囲で事故は防げたと思われます。どうして防げなかったのでしょう?
①自動運転機能、機構に不具合があった、

②横断歩道、標識を認識する機能がなかった、

③正常だったが、発進停止を担当する社員が自動運転機能を切っていて、手動にしていた、
④手動にしていたのに停止させなかったのは、横断歩道、横断者を見落とした?あるいは歩行者が止まると思い込んだ

 

のいずれかです。①は十分なテストをしているはずだし、自動運転機能としては既に確立しているポピュラな機能なので、考えにくいことから、②、③、④が考えられます。発進停止担当者を乗せていたことから推測すると・・・

 

②で示す、機能がなかったと思われます。しかし、進行方向に障害物を検知すれば自動的にブレーキがかかる仕組みはレベル1の機能なので備わっているはずです。この機能があるのにどうして進んでしまったのでしょう?ということは③の自動運転機能を切っていた可能性があります。JRなど鉄道の運転士は、状況を見極めATSやATCの列車制御装置を解除し、手動で運転することができるようになっています。これは、システムが対処できない状況が起きても、人間なら適宜状況を判断して臨機応変に対応できるだろうという発想から来たものですが、自動運転機能を切って手動で発進停止をしていたトヨタの社員が、死角に入ったのか、選手を見落とし横断歩道なのに止まらずにバスを発進させて接触しまったという推測です(④)。何らかの障害物(この場合は選手)を検知したバスは止まろうとして自動的にブレーキをかけたのに、運行を監視していたトヨタ社員が歩行者が止まるだろうと思い込み、運転支援機能がかけたブレーキをリリースして進んでしまったという推測もなりたちます。

 

運転サポータ役、それもバスを製造した会社の社員が2人も乗車していての事故は、中途半端で完成度の低い自動運転機能を実装したバスをオリンピックで運用して世界にアピールしたいという製造メーカの強い思い入れと、技術先進国日本をアピールしたい政府との合作で引き起こされたものと言えそうですが、自動運転機能の指示と人間の判断が違った場合、どちらを優先するかを決めておかなければなりません・・・航空機の場合は、欧州上空で起きた航空機事故がきっかけになりパイロット(人間)を優先するようになりました。

 

明日から3連休です。その間ブログもお休みします。

 

※質問はosugisama@gmail.comにどうぞ!

※リブログを除き、本ブログの無断転載、流用を禁じます。