今日は自民党総裁選投票日。候補者が乱立していますが、今日はネタにした選択肢の多いことの是非を取り上げます。
コロンビア大学ビジネススクールのアイエンガー教授の講義をNHK教育の白熱教室で拝聴したことがありますが、彼女は選択の科学という著書の中で、選択肢の多いことはあまり良いことではない、と言っています。
選択肢の多さは柔軟性を高め、選べる種類が多いことを好む人達には好まれるものの、選択に迷う人が多いということも考えなければならないという主張で、私が画面設計のユーザ-インターフェイスを考える時、参考になる考え方でした。というか、実務を理解して設計している者にとっては、常識なのかもしれません。
もっとも、何の選択肢なのかで違ってくるという面もあります。いろいろなお菓子を見せられた小さな子が、『どれでも好きなものを選びなさい』と言われた時と、生死に関わる選択肢とは選ぶ真剣さ、切実さが違います。選択肢の是非を検討する場合には、一般論ではなく、どのような状況・場面なのかという視点を考慮する必要があります。
上述のアイエンガー教授の本に書かれていたことを紹介します。
スーパーの店頭に、6種類のジャムを並べたテーブルと24種類のジャムを並べたテーブルを置き、試食をして気に入ったら買ってもらうという販売実験をしたところ、前者は試食した客の30%が購入したのに対し、後者は3%しか買わなかったという結果がでたとのこと。統計的な確からしさを以て結論づけるには、様々な条件を加味して実験を繰り返さなければならないと思うので、同教授はもっと実験をしたと思います。目移りするのか、甲乙つけがたいのか?結論としては『選択肢が多いと選びづらい』ということだそうです。少し調べてみました。
選択肢が増えると迷ってしまう心理
〇選択パラドックス
選択肢が多すぎることで、かえって決断が難しくなる
〇情報過多
多くの情報の中から最適なものを選ぶことが難しく、判断が遅れる
〇決定回避
多くの情報の中から最適なものを選ぶことが難しく、決断すること自体を避ける傾向
〇欲張り
ある選択肢を選ぶと他の選択肢を諦めなければならないことから、決断を躊躇
なぜ選択肢が多いと迷うか?
〇比較の困難さ
選択肢が多すぎ、選択肢を比較検討することが難しくなる
〇完璧主義
最適な選択肢を選びたい気持ちが強すぎ、どれを選んでも後悔するのではないかという不安が生じる
〇時間的制約
選択に与えられた時間が短い場合、焦りや不安を感じる
ということです。なるほどと思いますが、既に書いてきたとおり、何の選択をしなければならない場面なのかということが大いに影響しています。情報システムの画面設計の場合には、業務を知り、その業務を構成する作業を理解し、現場を観察し、現場にヒアリングすることで、選択肢が多くても少なくても、そうすることの根拠があります。ただし、業務・作業分析を誤ると使いづらい階層構造(カスケード)になったりするので、注意を要します。
タイトルに掲げた自民党次期総裁選に話を移します。9名もの候補が乱立し、誰にしようか選択に困っている議員、党員がいることと思います。議員は主義主張を以てこの人!と決めたいものですが、実際にはそうではなく派閥の縛りや、有力者からの指示だったり、論功行賞を期待したりで、様々な思いが交錯して悩むことでしょう。党員も同様ですが、党員はどうせ国会議員の投票で決まると思っているので、それほど縛りはなく、比較的自由に選ぶことができると思います。
さて、この9名の候補・・・裏金問題、旧統一教会問題で自民党に向けられた厳しい視線を浴びながら、危機に瀕した党を立て直すという覚悟があると思います(思いたい)。間違っても、兵庫県の斉藤知事のように権力を振り回したいと思っている人はいないでしょう。あっ、いました。岸田さんです。総理に就任し、地方行脚した際、小学生に『どうして総理大臣になりたかったのですか』と聞かれ、『一番権限が大きいから』と口走ってしまったことがありました!小学生なので、分かり易くと思ったのかもしれませんが、いささか情けない!
派閥解消で、派閥の縛りがないことから存在感をアピールするチャンスとばかりダメ元で立候補した人はいないのか?9人もいるので、負けてもそれほどダメージはないと思っている人はいないでしょうか?増税しないという候補もいましたが、財源が絵に描いた餅でないことを願いたいものです。
9名の立候補は、56名が立候補した都知事選よりはマシですが、蔵書のアイエンガー教授の選択肢が多いことは一般的に良くないという選択の科学を思い出した次第です。
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