汎用機全盛時代、IBM、富士通、日立が横並びのシェアをもっていました。残りのシェアをユニバック、バローズと共に分け合っていたのがNEACという名前の汎用機を出していたNECでした。富士通、日立がIBM互換だったのに対し、NECは独自のOSを展開していましたが、シェアは伸びず住友銀行(当時)はじめとする、NECが属する住友系に使われていました(使ってもらっていた?)。

 

NEACシリーズを止め、入出力が速いOS(実記憶方式)を搭載し、一時我々も苦戦したACOSシリーズを出して挽回を図ったものの叶わず!やはり陣容的に、先行する他社に追いつくのは無理だったようでした。そこで汎用機に見切りをつけ、パソコンに活路を見出そうとしました。98シリーズの誕生です。パソコン市場は爆発的な勢いで拡大し、これを見て富士通(FMV)、日立(FLORA、Prius)を出して追随したものの及ばず!1980年代の日本のパソコン市場はNECが席巻しました。

 

一方、世界ではIBMのPC/AT仕様が浸透し、この仕様の下で次々と各社がパソコンを発表。同じMSDOSだったものの、98シリーズがNEC独自仕様(Proprietary)だったのに対し、IBMはPC/ATの仕様を公開(open)しました。オープンの効果は目覚ましく、世界中のベンチャがこれに向けてのデータベース、通信、ユーティリティ、業務アプリケーションを開発したため、NEC陣営の体力ではとても敵わず、あえなく生産を終了する羽目になってしまいました。

 

オープンになったPC/AT仕様のパソコン、価格は一機に下がって価格破壊を起こしました。先陣を切ったのがCOMPAQ。価格は98シリーズの半値程度、個人でも入手可能な価格帯になり、パソコン浸透のきっかけになりました。98シリーズの浮き沈みをグラフにするとこんな感じです。


 

それから大分経ちましたが、先日、こんなニュースが配信されてきました。

「パソコンで大敗したNEC」が再び世界トップへ

営業赤字72億円のどん底から復活させた"世界最高峰の技術"

 

なんだと思ったら、米国国立標準技術研究所のベンチマークテストで世界1位を複数回獲得した画像認証の技術でした。2025年11月1日放送のNHK『新プロジェクトX〜挑戦者たち〜』でも、この顔認証技術実用化と世界トップに上り詰めるまでの苦労が描かれました。NECのホームページにその一旦が紹介されていました(こちら)。

 

4年ほど前ですが、画像解析について調べたことがあるので、簡単に紹介します。

 

顔に数千点の評価ポイントを設定してその特徴を抽出し、統計的に処理することで、実用レベルの顔認証のシステムが完成しました。

NECの顔認証システムは抜群の精度で世界を席巻しています。米国国立標準技術研究所のベンチマークテストで世界1位を複数受賞したことでも、その実力のほどがわかります。

ただし完全に一致しているのではなく、一定の確率を以て一致するということで、顔の整形手術を受けたり、想定外の変装をすれば、本人なのに別人として認識されてしまう可能性は0ではありません。

 

それを認証エラー率と言いますが、NECの顔認証システムの場合、それが1%以下ということなので、実用レベルに達していると言えます。この応用で臓器の画像も解析できます。医師の協力を得て臓器の特徴分析を行い、病変のある臓器の画像も併せて学習させて双方の違いを理解することで、病変の有無を実用レベルで検出することができるようになりつつあります。これは、読影経験の薄い医師にとっては救世主です。しかし、精度の高まった顔認証システムでも一定の認証エラーがあるように、医療画像診断にも一定の確率で認証エラーが発生します。読影経験の浅い医師が画像診断システムに丸投げして頼り切ってしまうと、正常な状態なのに異常と判断したり、その逆に異常なものを正常と判断したら、患者の生死に関わります。画像診断システムが怪しいと判断しても、医師法に基づく法的な決まりにより最終的には医師が確定診断しなければならないことになっています

NECは、映像から事故状況や作業進捗を自動で分析・レポート化するAIシステムを世界で初めて開発しています。先日、ソフトバンクがスポンサになって、独自の生成AI基盤モデルを構築する新会社Preferred Networksが発足しましたが、NECはホンダと共に加わっています。NECのAI技術が評価されとことがわかります。 

PC98が大成功したことで、この牙城を守ろうと保守姿勢になり、Proprietaryな仕様にした咎めが、世界の潮流に乗り遅れることになり、98のガラパゴス化を招きましたが、今回はどうなるでしょう。注視したいものです。


明日(4/29)の祝日(旧天皇誕生日)から5/10までGWの大型連休、リラックスして過ごしてください。
当ブログもお休みします。その間、過去にスキャンして保存しておいた記事を眺めることにします。

 

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前回の電子カルテ標準化(その1)からの続きです。

 

前回はポリシーなく必要になった業務からシステム化を進めると、相互に連携しない機能やデータを重複して持たざるを得ずサイロ化し、一気通貫な情報の利活用ができない状況になってきたこと。および、厚生労働省が遅まきながら根幹となる電子カルテシステムの標準化を図ろうとしてきた経緯を取り上げました。

 

しかし、既に異なるベンダの電子カルテを導入し、且つ、検査/手術/病棟など、電子カルテとの連携が必要な他のシステムも同様に五月雨的に導入&運用されてきたことから、今までとは異なる使い勝手の標準化を志向されても必要性を感じつつも、二の足を踏んでしまいます。そもそも標準化とは、本来カルテが持つ情報と、それと関係する検査/手術/病棟/治験などの付帯情報とが、どのように連携するのが良いのかという視点から考えなければなりません。

 

あーすべき、こーすべきというべき論はともかく、上述のように既に何十年も使ってきたシステムから乗り換えることに不安を持つ人が多いというか、それが大多数。特に、病院ごとにワークフローが違う/診療科ごとの個別最適性が強い/使い勝手が違うという、使い込んできたなかで改良を加えてきた機能、UI(User Interface)、UX(User Experienceが、標準化の名の下に変わってしまうと、操作に手間取ったり、誤操作したり、メッセージが表示されたりで、使いこなすまでには相当な時間を費やします。時間が解決するものは良いものの、改良を加えてきた機能、UI、UXが、標準化されたシステムに反映されていない場合には、どう対応していいのか分かりません。人が介在しなければならなくなる可能性もあります。こういうことまで考慮して検討した標準化なのでしょうか?

 

電子カルテの標準化を推進するに際し、厚生労働省には様々な分野の専門家からなる有識者会議が立ち上げられ、彼らの知見を反映していると思います(思いたい)。しかし、彼らの中に電子カルテをシステムを使って診察したり、必要に応じて検査データを参照したり、病歴、手術歴、薬歴などを使い込んだことがある医療従事者は参画しているの?という疑問がわきます。コロナ騒動の際、毎日のようにテレビで見かけたコメンテーターの開業医が、『政府の有識者会議に、臨床経験豊富な方がいるの?』という率直な疑問を呈していたことを記憶していますが、同じことが電子カルテの標準化にも言えます。コロナより大変なのは、既述のように既に大小合わせて何万もの医療機関に各社各様のシステムが導入され、長きに亘って運用され、慣れていることです。

 

そもそも、上述のように標準化の仕様を検討する有識者会議のメンバに、臨床現場経験豊富な現場の医師、看護師、検査員などはいないでしょう。そんな中で決められた標準仕様で作られた電子カルテ、実用に耐えられるでしょうか?泥かぶったことがない皆さんによる、理想論、机上の空論の結果が使い物になる・・・のはかなり難しいでしょう。

 

一方、日本医師会が作り、オープンソースで無償提供した医事会計システムORCAは、約2万の導入実績があり、医事会計システムの標準になったではないか!と反論する向きもあるでしょう。しかし、冷静に考えてみましょう。医事会計システムの計算ロジックは、法的に決まっています。つまり、工夫とか目からうろこの妙案が入り込めません。自由度が低いということです。

 

これに対して、電子カルテは紙カルテに記載されている情報が漏れなく反映され利用できれば、実現方法は自由です。私が電子カルテを含む病院の統合情報システム開発プロジェクトを進めていた際、医局メンバや外来、オペ室、病棟のベテラン看護師と仕様作成を進めました。プロパーの医師、東大、医科歯科、筑波などの医局から来ていた医師の話では、カルテ記法には東大方式、京大方式はじめ、各大学それぞれに工夫しているが、決まりはないとのこと。その理由は、問診/検査/診察/所見/処方の情報が漏れなく記載されていれば、カルテとしての機能を果たすので記法を決める必要はない!なるほどと思いました。

 

標準化が進められ、有識者と称する臨床現場を知らない学者、評論家の皆さんが机上の空論を戦わせたようですが、長年工夫し、改良して現場が使い込み、親しんできた使い勝手を凌駕する標準化が実現できるとは到底思えません・・・それを承知で、私のアイデアを2つ紹介します。

 

~~その1~~

日本医師会が医事会計システム(ORCA)を作って普及させたように、日本医師会仕様の電子カルテを作る。開発予算手当は厚生労働省が行う。作られたシステムは、希望する医療機関に無償で配布する。メンテは希望するSIベンダに有償で任せる。

~~その2~~

厚生労働省が作った標準電子カルテの仕様をSIベンダに公開。自社の電子カルテの整合性がとれるよう、中間ファイルや読み替え用の変換テーブルを用意・・・出入口は同じだが、中身は各社各様のまま!

 

20年以上前、病診連携、病病連携、PHRなどの構想がありました。

この時、厚生労働省に先見の明があれば、今頃、標準化を叫ぶことはなかったでしょう。

 

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ベンダ各社がそれぞれの仕様で作ってきた電子カルテ、マイナ保険証などとの連携が必要になってくたことから、厚生労働省は電子カルテの仕様を統一(標準化)しようと動きだしました。マイナンバーカードの交付が始まったのは2016/1からでしたが、その3年後の2019年の2月にはこんな画を描いていました。

それから9年経過しましたが、なかなか浸透しません。少し振り返ってみることにします。

 

厚生労働省のホームページにはこんな一覧表があり、ネタフォルダに保存してありました。


電子カルテシステムが稼働すると、カルテが必要とする情報/カルテからの情報を必要とする検査、病棟、外来処置、手術、給食室、医事会計、治験、研究などの院内各部門とのデータ交換、情報授受が必要になります。それを可能にするには、各部門の業務が電子化(システム化)されていなければならず、人が介入しなければならない作業(※)、紙ベースの作業があると一気通貫な処理ができません。※処置、注射、手術など、必ず人手が必要な作業がありますが、これは元々電子化できないものなのでシステム化対象外。

 

また電子化されていても、情報授受のために必要なデータの形式、更新を意識した授受のタイミングの整合性がとれていないとスムーズな連携ができません。できないだけではなく、旧データを使うことによる誤診につながる可能性もでてきます。各社各様の仕様で作られた業務対応のシステムが院内に存在する現状ではそれが問題になっています(統合情報システムが必要な所以)。


スムーズな情報交換の重要性をようやく意識した厚生労働省が重い腰を上げましたが、既に電子カルテはじめ、業務対応の各種システムが入り乱れて稼働している現状があり、個別対応をするよりもスクラップ&ビルドした方が早いと思うほどのスパゲティ状態です。

 

電子カルテシステムと医事会計システムとの情報授受を例に問題点を整理してみましょう。
 

《他社製品との接続》
電子カルテシステムがA社の製品の時、医事会計システムがA社の製品ではなく、X社、Y社、Z社の製品だった場合、電子カルテシステムが持っている請求に必要な情報をどうやって医事会計システムへ渡すのでしょう。送受信の方法(接続仕様)につき、ベンダ間で打ち合わせが必要になります。データを渡す側は、『この順番(データストリ-ム)と形式(英数字、カナ漢字、画像など)でデータを渡すので受け取りをお願いします』と言い、受け取る側は、『自社の医事会計システムの画面から入力されたデータを受け取るのと同じような形式で送ってください』などと言います。

どちらがどちらに合わすのかはともかく、自社の製品の中身を公開することにもなりかねないので嫌がるのは当然、やったことがある人なら分かると思いますが、技術面以外の調整がとても面倒な作業です。しかし、これをやらないとシームレスな接続ができず、その部分は手作業(ハンドリング)となってしまいます。さながら、高速道路と一般道が切れ切れにつながっているようなもので、全体の作業効率は上がるどころか下がります。

《統一された仕様での接続》
統一された接続仕様があり、業界内でオーソライズされていれば手間のかかる異なるベンダ間の接続仕様を検討することなく、連携がスムーズに進みます。しかし、総論賛成各論反対にあって議して決せずの状態が続くのが過去の例です。

日本医師会が無償で提供しているORCA(オルカ)と呼ばれる医事会計システムは、ソースコードや接続仕様が公開され、情報授受のためのインターフェイスも公開されているので、他社製品と接続するよりもストレスがありません。実際使いました。

しかし、最もストレスがないのは、同じ会社の電子カルテと医事会計システムであることは言うまでもありません。自社製品なのでデータ授受に関する情報は細大漏らさず分っており、誤解が生じることもなく、動作の齟齬もありません。しかし、全体構想を描いてから順次システムを導入するのではなく、必要になった業務から五月雨的に導入するのが常で、各社のシステムが入り身だれて運用されているところがほとんどなのが現状です。

 

もっとも、フィンランドのように国レベルで一つのベンダ製品に統一してしまうと、競争相手があり切磋琢磨して製品が良くなっていくという良い意味での競争原理が働かなくなり、ベストソリューションであり続ける保証がなくなる可能性があります。

 

以上、電子カルテシステムと医事会計システムとの接続を例にしましたが、院内には数多くの業務システムがあり、これらを相互に支障なく接続し、データ交換、情報授受を行うには膨大な手間がかかります。これをフィンランドのように他社製品を考慮することなく、1社の製品で統一すれば簡単にトータルシステムが出来上がります(当たり前ですが)。

 

どこに行っても自分の診療情報を参照でき、適切な治療を受けられるという“どこでも診察”ができるというフィンランドの環境は、1社のベンダの製品で統一されているからという単純なものであることがご理解いただけたと思います。しかし、本来は既述のような情報授受のための共通インターフェイスを作り、異なるベンダ製品でもストレスなく情報交換できる環境が望ましいことは言うまでもありません。
 

以上、医事会計システムと電子カルテシステムとの情報授受を行う際の問題を列挙しましたが、電子カルテシステムの仕様と標準化して統一するアイデアは良いと思うものの、院内の他の業務を担当するシステムとの情報授受についても調整が必要になることに思いを馳せているのかどうか。別ベンダ製品だった場合には、不可能に近いかもしれません。全業務を俯瞰した統合情報システムが必要となる所以です。

 

明日も続きます(こちら)。

 

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毎日、配信されてくるニュースに、こんなものがありました。

バラバラに存在するデータのため、情報収集に手間取る。その結果、顧客にアピールする提案、プレゼンがうまくいかない。どうしたら良いのか、それを教えるセミナのようです。

 

一見、良いじゃないかと思いますが、書かれているような『必要な情報が手元にないまま』プレゼンに臨むことは一般的にはありません。このセミナの案内文を書いたのは、現場の人なのかライターに外注したのかわかりませんが、おそらく実際にプレゼンした経験のない人物なんだろうと思います。資料がダウンロードできるようになっていましたが、多分役に立たない当たり前のことが書かれていると思って止めました。

 

それはともかく、この案内は営業職向けになっていますが、職種を問わず、また社内外を問わず、企画・提案することはあります。その際、訴求力・説得力のある主張をしなければいい評価は得られません、どうすればそれが可能なのでしょう?

 

もちろん提案の中身が重要ですが、その重要性や新規性、他社や既存案より優れている点をアピールするには、根拠ある定量的な数字が必要です。またその数字を持つ情報は、単独で存在する場合少なく、必ず他の情報と一定の相関を持っています。それがあちこちの業務システムに散在し、且つどのような相関があるのかが分かっていない状況では、その情報を活かした訴求力ある企画、提案はできません。

 

1973年秋の第一次石油ショックの際、当時在籍していた事業所の製品に関係する因子を見つけるため、霞が関の通産省(当時)にある資料室に出かけ、鉱工業統計をコピーさせてもらったことがあります。様々な指標を時系列に書き写し、それをキーパンチャー(当時)にカードに打ち込んでもらいデータを作りました。そのデータ群を読み込ませ、多変量解析手法の一つであるステップワイズ分析を行い、サッシや板ガラス、エレベータ、ビル建築確認申請数、小型棒鋼などに一定の確率で有意な相関があることを把握しました。これらを、寄与率を勘案したうえで生産管理システムの先行指標とし、根拠のある生産計画を立てることができました。これが数字、情報の活用です。なお、経験的にサッシやエレベータなどが事業所の製品の先行指標になっていることは知られていましたが、それらの因子がどのくらいの相関で影響しているのか把握されていませんでした。

 

上掲の営業マン向けのセミナを企画したところは、どのような解決策を示そうとしていたのか、またそれは実効ある実行可能解なのかがわかりませんが、断片的なHowtoを教えたところで、実戦では役に立たないでしょう。教えるなら、付け焼き刃のHowtoではなく、まずはwhyでしょう。

 

案内文に書かれていた必要な情報があちこちのシステムに散在(サイロ化)していて、ストレスなく一気通貫に連携して利用できない問題は業界業種を問わずあります。全社的な情報システム整備計画・方針(ISA)がなく、五月雨的に必要になった順に作られてきた業務単位のシステムがサイロ化を招いてしまった結果です。それが問題視されたのは、全社全業務を包含する統合情報システムの必要性が説かれた1990年代前半です。CIOという会社全体の情報システム整備・開発方針を指揮する役職まで出来て、戦略情報システムを構築しようとする機運が高まりました。しかし、いつものブームのように、数年で立ち消え!ブームが終わると同時に忘れ去られました。

 

そこへ、数年前からブームになっているスウェーデンのストルターマン教授が提唱したDX登場!またしてもブームとなり、猫も杓子もDXDXと叫んでいるのが今の状況です。

 

これは統合情報システムの趣旨と全く同じで二番煎じの感がありますが、歴史を知らない皆さんが、難題を解決してくれる魔法の解としてブームになり、まだ続いています。1990年代前半の統合情報システムを目指して整然と環境を整えてきた企業は、今更DX、DXと騒ぐことはないでしょう。もちろん統合情報システムの発想で構築されたシステム群は構造的にサイロ化するはずがなく、業務上必要とする情報は、その相関を踏まえて余すことなく利用され、デシジョンメーキングに使われ、対外的な資料にも、経営会議にも使われているはずです。

 

オフィスはOA、製造現場はFAという表現が定着し、急速に普及していったのは、1980年代から1990年代にかけてですが、2000年代以降に登場したのが、SFA(Sales Force Automation)です。私がCIOをしていたセキュリティベンチャで、SFAの売り込みを受けたのは2006年くらいでした。そのSFAは、営業が訪問した回数、誰と会ったか、役職は何だったか、どんな話をしたか、感触はどうか、競合他社の動きはどうかなど、いくつかの項目を営業日報に入力し、このままいくと受決までいけるのか、より上の役職にアプローチした方がいいのか、こちらも訪問者の役職を上げた方がいいのかなどを判断する情報を提供するというものでした。この方が、感覚的に分かりやすく実用的な印象がありました。

 

今は、もっと広範なデータを集め、それを統計処理したり、AIに学習させたりして説得力のある企画、提案ができる環境が整ってきましたが、あくまでも人が主役です。データ(data)⇒ 情報(information)⇒ 知識 (intelligence)の遷移を理解して、あなた任せにしないようにしましょう。

 

今日は、営業職向けセミナ案内から、情報のサイロ化、統合情報システム、DX、それを指揮するCIOまで、連鎖反応的に書きましたが、参考になれば幸いです。

 

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アニマルセラピー犬(セラピードッグ)とは、特別に訓練された高齢者施設や病院などで人々との触れ合いを通じて心身の癒しや機能回復をサポートする犬のことで、時々ニュースで紹介されています。

ストレス緩和や会話の増加、リハビリのモチベーション向上に効果があり、オキシトシンなどの幸せホルモンを分泌させる科学的根拠も認められています。高齢者施設や小児病院では動物介在療法(AAT/Animal-Assisted Therapy)という名で運用されています。動物介在教育・療法学会という名の学会まであり、科学的な裏付けと効果に関する研究が行われています。犬の持つ不思議な力を、オフィスワークにも持ち込めるのではないかとして、犬同伴出勤ができる会社も出てきています。

 

犬と接する効果についてハーバード大学とアメリカ心臓協会から出されたレポートを見つけたので、今日は、犬は企業にとって低コストの福利厚生策として取り上げることにしました。

 

~~~レポートのなかからわかりやすい部分を抜粋しました~~~

My twice-daily walks with my border collie, Clair DeNoon, are the highlights of my day. A new report from the American Heart Association will put an extra spring in my steps on these walks. It turns out that having a canine companion may help lower my risk of heart disease.

心臓に持病を抱えるある患者は、犬との1日2回の散歩を楽しみにしている。この楽しみは、単なる楽しみではなく、心臓病のリスクが軽減される可能性を持っている

 

Although that’s still lacking, a panel of experts from the American Heart Association (AHA) has weighed all the available evidence. The verdict: Having a peta dog in particular—likely lowers the risk of heart disease.

ペットを飼うこと(特に犬)は心臓病のリスクを低下させる可能性が高い

 

“People who have dogs live longer than people who have cats, and the assumption has been that dogs naturally cause their owners to be more active,” suggests Dr. Thomas Lee, Co-Editor in Chief of the Harvard Heart Letter. “The emotional benefits of having an affectionate creature are also one of the theories for why dog-lovers live longer.”

猫を飼っている人より、犬を飼っている人の方が長生きする・・・それは散歩する犬は飼い主を歩かせるから!また、愛情深い生き物と暮らすことによる精神的な恩恵も、犬好きの人々が長生きする理由の一つ。

 

The evidence reviewed by the AHA indicates that dog owners are more likely to exercise, have a better cholesterol profile, have lower blood pressure, be less vulnerable to the physical effects of stress, and be more likely to survive a heart attack.

犬との散歩をする飼い主は、結果的に運動することになるので、コレステロール値が基準値内になり、血圧も低く、ストレスによる影響を受けにくく、心臓発作からの生存率も高い

 

なんだかいいことだらけですが、犬の散歩をする時間的な余裕がある人ばかりではないので、オフィスでの犬の効用を狙って、ロンドンのある建築事務所には、犬(タイガー君)が出勤しています。

所長は『ストレスの大きいこの仕事に、犬が癒やしをもたらしてくれる』とのこと。気難しい業者との電話の後でタイガーに話し掛ければ、気持ちが和み、打ち合わせに訪れる顧客は話をしながらタイガーをなで、靴の上で眠るタイガーにほほ笑む。中にはオヤツを持ってくる客もいるとのこと。日本オラクルには2010年10月入社の社員犬がいて、当時話題になりました。社員犬は、4代目まで続きましたが、2021年に亡くなった以降、今は空席だそうです。

会社が用意した社員犬ではなく、愛犬を連れて出勤することができる企業(グーグル、アマゾンetc)もあります。狙いは社員の福利厚生だそうで、ストレスに反応して分泌されるホルモンのコルチゾールの濃度を調べたところ、犬を連れてきていないグループは、勤務時間が終わるころ大幅に上昇していたのに対し、犬連れのグループは終日低いままだったというデータがあり、犬は企業にとって低コストの福利厚生策になり得ることが、数字のうえでも証明されました。富士通でもペット同伴OKだそうです。

会社だけではなく、学校でも伝説的な犬がいました。長野県を代表する松本深志高校には、1960年頃から約12年間にわたって住み着いていたクロという名前の黒いメス犬がいました。 野良犬だったクロですが、学校公認の学校犬として、自由に教室に出入りし、職員として 職員名簿に名前が載り、なんとボーナス(エサ代)まで支給されていました。夜になると用務員さんと一緒に校内を見回る番犬としての仕事もこなしていました。 1971年に亡くなった際には、校長先生が弔辞を読み、全校生徒が見守る中で異例の学校葬が執り行われました。

私にとっても、犬は最良の家族でした。

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有名な『エレベーターが遅い』問題があります。既に承知している方もいると思いますが、簡単に整理します。

 

問題(利用者からのクレーム)

エレベータが2基しかなく、エレベータも古く、昇降スピードが遅いという問題を抱えた古いビルがあり、利用者から『エレベーターがなかなか来ない』とのクレームが多く、ビルオーナが専門家にアドバイスを求めた。

~~専門家の提案~~

①高層階用と低層階用に分ける
②最新の制御システム(群管理)を採用する
③エレベーターの台数を増やす

専門家提案の問題

①は、運用で実現できるものの、2基しかないので難しい。また昇降スピードが遅いので、高層階利用者の不満は解消せず、逆に増える可能性がある。②と③は多額の費用が発生する・・・という問題があり、頭を抱えていた。

 

別の専門家に聞いたところ、

〇本当に“遅い”ことが問題なのか

〇待っているのが嫌(退屈)なのか

を調べるべきとのこと。これにヒントを得たビルのオーナは、実際にエレベータ待ちや昇降中の利用者の不満を聞いているスタッフに『お金をかけずに済むいいアイデアはないか』と尋ねたところ、エレベータを待っている場所に大きな鏡を置いたらどうかとの提案があり、鏡くらいならということで設置したところ、苦情が激減した・・・という話です。どうして?

 

エレベーターの前に鏡を設置すると、待っている人は身だしなみや髪を整えたり、お化粧のチェックをしたりして、待ち時間が気にならなくなった・・・その結果、クレームもなくなった。実話なのか作り話なのかは分かりませんが、人の心理を読んだなるほどと思う対策です。銀行の待合室に精神を安定させるなごみ音楽を流したり雑誌を置くのも、同じように待ち時間のクレームを減らす対策です。

 

私が、外来患者であふれかえり、待ち時間の見通しがつかないというクレームが相次いでいたある病院のBPR(Business Process Re-engineering)をしていた時、最初に取り組んだのは予約制の取り組みです。ベースにしたのは、経験年数に応じた医師のパフォーマンス、簡単に言えば、診察品質を維持したうえで、単位時間あたり何人の患者を診察できるのかというデータです。これは診察予約枠を決める際に使いましたが、診察予約だけではなく特別な検査や手術の予約、ベットの割当て予約など、予約名のつく全ての作業を包含する総合予約システムです。これを運用した結果、グラフに示す通り、待ち時間は改善してクレームが激減しました。

当時、小泉改革の医療費抑制の余波を受け、全国の病院で外来患者が減少したなかで、我々の病院は、逆に受診者数が増える現象が起き、見学が相次ぎました。

そこまでは良いのですが、待ち時間の削減には限界があります。それをどう解決するかを考えた結果、エレベータ同様、待っている時間を退屈させない施策、逆手にとって利用する施策です。次の2点を考えました。

①患者さんが知りたい情報の提供
-どのくらい待てばいいのかの目安

 (自分の前に待っている人の数)
-診察の結果、追加検査を受けることになった患者

 (診察待合室にはいないが、戻って来たら先に診察を受ける患者がいる)

-緊急搬送されてきた患者対応で医師が席を外す(外しているので、診察が遅れる)

-待っている間に様態が急変した患者を先に診ている

等の、細かな情報を待ち画面に表示する。

②患者さんに知って欲しい情報を流す。
-学会出張などで休診になる医師
-保険負担の変更など、制度の改訂
-新たな病院施策の紹介と協力依頼
③患者さんがホッとする情報を流す

犬や動物の写真、風景や季節の写真など、癒しを感じる画を流す

 

これらは、日頃患者と接している第一線のスタッフの意見を聞き出すと共に、患者に混じって待合室に座わり、待っている時の患者の様子、会話などを観察し、それらを反映したものです。

 

待合室、診察室の前に大型ディスプレイを置き、カルテが診察室に到着したか(当時は紙カルテで運用)、診察中などの状態を表示し、患者が全体の進捗状況を把握できるようにすると共に、呼ばれる順番が分かるようにしました。これにより、今まで分からなかった状況が分かり疑心暗鬼であった待ち状態から、何時まで待てばいいのかの目安がつくことで安心していただくことができました。患者満足度向上は、この様な身近な不具合、不都合を解消することによってもたらされます。この表示は、患者さんに喜ばれ、漢詩の感謝状をいただきました。

呼ばれた時に不在では後回しにされてしまうのではないかという不安からトイレを我慢していたという話を伺ったこともありましたが、表示を工夫し、ルールを理解してもらうことで解消することができました。

 

ルールは一定間隔毎に説明画面に切り替えて周知しましたが、理解した患者さんが分らない患者さんに教えるという予期しない場面を見受けたことがありました。また、患者の国語の先生からテッロップに流す文面のテニヲハ、接続詞がオカシイという指摘を受けたことがありますが、画面をよく見ていることが分り、期せずして画面での周知効果があることを知ることができました。

 

これらを通して言えるのは、患者満足度の向上とは、心理学の先生など識者に意見を求めるほどのことではなく、また大上段に振りかぶるほど難しいことでもなく、現場の声を聞き、その背景を調べれば誰でも効果的な対応策を考えることができるということです。そもそも、識者と呼ばれるなかに泥を被っての現場経験を豊富に持っている人物は極めて少数なはずです。

 

実行可能で且つ効果が期待できる施策は、つぶさに現場を観察し、現場の意見を十分聞き、それに今までの知見を重ね合わせて初めて作れるものです。昔の成功体験や、一般論を振りかざす元現役達の化石的教科書的アドバイスや、アカデミックな理論、机上で議論したものからはこの様なアイデアは生まれません。患者満足度向上はもっと身近な観察から生まれます。

 

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配信されてくるニュースのヘッダーを見ていたら、“もう辞めます”を言わせる「静かな解雇」の最悪な実情というものがありました。静かな解雇という言葉は、昨年の今頃に知った言葉でしたが、今日はこれを取り上げます。記事を簡単にまとめると、以下の通りです。

〇重要なプロジェクトから外される

〇会議に召集されることが少なくなる

〇上司からの反応が不可解なほど冷淡になる

〇職場でのコミュニケーションが少なくなる

〇近づくと避けられる(ような感じがする)

等々、兆候があるようですが、これは組織が意図的に仕掛ける静かな解雇の兆しです。

 

以前、出世コースから外れ、重要な仕事や責任を与えられず、閑職に追いやられた社員を指す言葉として、窓際族というものがありました。業務時間を持て余す様子から名付けられたこの言葉、今や死語ともされますが、名前を変えて静かな解雇になったのではないかと思います。少し違うのは、それなりの年齢になり、役職定年になったようなケースも含み、経営側が、ここに居座られても困るという姿勢を(あからさまに)とる傾向が出てきたということではないかと思います。

 

人に仕事を割り当てる終身雇用を前提としたメンバーシップ型ではなく、仕事を人に割り振るというジョブ型が叫ばれるようになってきたことも影響していて、仕事をこなせる人ではなくなりかけている人(業績に寄与できていない人)に『クビ!』と言うことができない日本なので、自ら『辞める』と言わせるわけです。自主退職になるので、退職金も少なくて済みます。雇用側にとっては都合の良い辞めさせ方です。

 

2000年前半だと記憶していますが、ファンケルが対象者にシュレッダー整理や社内清掃、単純な入力など、本来の能力に見合わない補助的な作業をさせたことがありました。裁判所はこれを『退職に追い込むための嫌がらせであり、人事権の濫用』で違法と認定した事件です。勝訴した社員は職場復帰しましたが、どんな職場の雰囲気だったのかが気になります。『一緒になって嫌がらせをしやがって、このヤロ~!』という強い気持ちでいてほしいものです。

 

このように、辞めて欲しい社員に対し、昇進・昇給なし/チームやプロジェクトから外す/現実的ではない業務量を任す/無意味な仕事や退屈な仕事を割り振られるなど、有形無形な嫌がらせをします。それは昭和の時代にもあり、身近で遭遇したことがあります。そのうちの一つを紹介します。

 

OSの設計部門からSEへ技術支援をする職種になり、SEの事業部に移ったある時、別のフロアに行くと皆さん忙しく動き回っている中で、机に新聞を広げたり、本を読んでいる管理職がいることに気が付きました。その時は気にならなかったものの、通りかかる度に新聞、読書はおかしいと思いました。よく見ると管理職の机にある『入』と『出』の箱が置いてありません。『入』とはその管理職に回覧されてくる資料、連絡などが入れられ、『出』は配布して欲しい資料、回覧などを入れておくものです。庶務担当が『入』に入れ、『出』から持ち出すようになっていましたが、彼にはその箱がありません。

何だかおかしいと思いつつ時間が経過しましたが、ある時、彼の素性と置かれている立場が分かりました。彼は外資系コンピュータ会社から引き抜かれ、社内に技術伝播をする人でした。当時の活躍は知りませんが、ヘッドハントされた人にありがちな体中からほとばしり出るようなオーラを感じることはなく、それどころか肩を落とし、皆さんと目線を合わせないようにしていました。ヘッドハントされるほどの人なら、会社から用済みと思われたり、処遇が違ってきたと思えば、次を捜したり別の会社からスカウトされたりするはずですが、その気配はありません。

初老に観えたその方には、もうヘッドハントされるだけの知識経験がなくなっていたのかもしれません。掌を返したような露骨な辞めろ作戦に出くわしたようです。全員から無視され、会話もなく(会話をしてはいけないことになっていました)、定時に出社、昼休みの少し前に離席して社員食堂に行き、一人で食べ、自席に戻ってから定時まで新聞、読書して過ごして帰社するという毎日を送っている彼の心中を推し量ることはできなかったものの、あからさまな嫌がらせを無視することで無形な抵抗を示していたのかもしれません。少しマシなのは、子会社に移らせ、雑用をやらせて退職を申し出るのを待つという、どこの会社でもやる子供じみた嫌がらせを受けず、管理職用の机と椅子をあてがわれ続けていたことです。その人を見届ける前に私は辞めてしまいましたが、非情さを感じた社内イジメでした。今で言えば静かな解雇とそれを感じつつも、居続けて逆嫌がらせを実行していたのかもしれません。

 

静かな解雇・・・私は一種のいじめではないかと思っています。

 

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『ウクライナは元々我々の領土だったので、よこせ!』という正気かと思う理由でウクライナに攻め込んだプーチン。圧倒的な軍事力の差でウクライナは数日で敗れるだろうという大方の予想は崩れ、数ではなく数、5年目に入りました。この間、死傷した兵士、民間人は、2026年2月時点で民間人死者1万5000人超、両軍の死傷・行方不明者は計180万人~200万人に達すると推定されています。2度の世界大戦を経て、平和の尊さを学んだ世界の知見が生かされず、一人の指示でこのようなことが起きてしまうと思うと残念です。

 

著名なジャーナリストで元TBSキャスター・国会議員だった田英夫が、自身の戦争体験を踏まえ『戦争を始めるのは政治家であり、その犠牲になるのは前線の兵士である』と言いましたが、球の飛んでくる心配のないところで勇ましいことを言う政治家や軍の上層部がいることは確かです。『年老いた者たちが戦争を宣言する。だが、戦って死ぬのは若者たち』と言ったのは、第31代米大統領フーバーですが、同じことです。忌野清志郎が、こんな歌をうたっていました。

ネタニヤフに煽てられ唆され、差し迫った具体的な脅威もないのにイラン攻撃に踏み切ったトランプ。数日で片が付くと豪語したものの、既に一か月を過ぎました。この間、イランではこれまでに1900人以上が死亡。また、イランの反撃によりイスラエルでは19人が死亡したほか、米軍の死者も13人にのぼっているとされています。ネタニヤフの指示でガザを抹殺しようとしているイスラエル軍は、これまでに6万34人を殺害、うち1万8592人は子供、9782人は女性。目を覆いたくなるが続きます。

 

新聞、TVで毎日見るこの種のニュースですが、真相を知りたい、背景を知りたい、今後の見通しを知りたいと思うものの、一介の市民が知ってどうする、分かってどうするという気持ちになってしまいます。ひどい目に遭っている人たちに心から同乗し、涙することはできても、具体的に何かをすることはできず、せいぜいSNSで思いを発信する程度です。

 

思い悩んでもどうにもならない状況にどう対処すべきなのか・・・ネガティブケイパビリティ・・・私は、個人ではどう抗っても何も解決しないどころか、不愉快になるだけな状況に置かれた場合、それを考えないようにする、関連する情報に触れないようにするという防御策をとっています。ある意味で逃げです。ネガティブケイパビリティとは、

◯どうにも答えの出ない、どうにも対処しようのない事態に耐える能力  

◯不確実さや理不尽さ、懐疑がある中で、性急に答えを求めずに居続けられる力

という意味だそうです。

この概念は、不確実性(Uncertainty)や曖昧さ(Ambiguity)が高まる今の社会をストレスなく生きていくために必要な力として心理学ビジネスの分野で注目されています。

 

政治や国際情勢のように、個人の力では変えられない/感情を揺さぶられる/刺激的な情報で疲弊する領域では、むしろ“考えない・見ない”という距離の取り方は、精神的な健全さを保つための自然な反応と思うようにしています。『不愉快になるだけだから距離を置く』という判断は、心の安全を保つためとも言えます。見ない聞かないというは、無関心とは違います。むしろ、影響を受けすぎないようにする感情的に巻き込まれないようにする自分の生活を守るという主体的な態度と思うようにしています。政治的な混乱や強い言動に疲れたとき、見ない、考えないは逃避ではなく、自分を守るためのセルフケア・・・と思うようにして、心の安定を図っています。

 

出所不明なSNSからの情報ではなく、得られた情報のファクトを確かめたうえで報道する信頼できる既存メディアから得られる情報を見るようにしていますが、信頼できる数少ない情報源だけを見るのもセルフケアの一つ。それでもタイトル見てパスすることはあります。情報の摂取量を調整するだけで、負担は大きく減ると思います。ある意味で知らぬが仏かもしれません。

 

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医療サイトから配信されてきたの中に、泥をかぶった経験のない(と思われる)専門家が、マイナ保険証を称賛する完成した暁の夢物語を語っているニュースがあったので、前回に引き続き今回もこれを取り上げます。
 

彼の語る夢物語は、マイナンバーカードが医療機関、銀行、運転免許など全ての関連システムの総合窓口になることが前提になっています。しかし、そこが夢物語です。夢を現実のものとするための考察が不足しています。何をすればそうなるのか、評論家ではなく、実務家はそれを考えます。夢を語っていたこの専門家は、大学の先生や著名な有識者ではなく、一応実務経験者(と紹介されています)。しかし、実務経験ありとされても、その深さ広さが分からないと正しい判断はできません。

 

以前、巨大自治体で管理職教育の講師をしていたことがありましたが、その際、他の専門家(大学教授、大手企業のCIOなど)と一緒に、システム開発案件に応札した業者のヒアリングをしたことが複数回ありました。その中に、某大の先生が称賛したシステム提案がありました。しかし、現場を経験してきた者からすると『この先生、実際に泥をかぶって仕様作成、システム設計、開発、テスト、運用保守をやったことがない』と見抜かれてしまいます。数学や理論物理学とは違い、情報システムは事例を集めて机上で分析して理解したつもりになっていても、見えない部分があることに気が付いてほしいものです。マイナ保険証の有効性をアピールする寄稿をしたこの専門家にも言えます。

さて、前回約束した如何にしてその専門家のいうような仕掛けができるのかを考えたのが、以下に示すものです。救急隊員と書いていないところはシステムが行うことになります。

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①119に連絡が入り、状況を聞き、場所を確認し、駆けつける(ここまでは今まで通り)

②現場到着

③患者がマイナ保険証を持っていることを確認(救急隊員)

(持っていなかったら従来通り)

④マイナ保険証のICチップ情報を読み込ませる(救急隊員)

⑤救急隊員が持つタブレットに氏名・年齢・性別・住所・電話番号などの基本情報が表示される

⑥本人確認(救急隊員)

④で読み込んだマイナ保険証番号をキーにして、マイナ保険証を管理するサーバーを参照

そのサーバーから、該当する医療機関のサーバーへ当該搬送者の診療履歴を取りに行く

 (あるいは、予めマイナ保険証管理サーバーにマイナ保険証登録者の診療履歴を登録しておく)

⑨参照した結果が、救急隊員の持つタブレットに表示される

⑩これを見ながら、搬送先病院を決める(救急隊員)

⑪受け入れ先搬送先病院が確定したら、そこに受け入れに必要な情報を伝える(救急隊員)

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ここで重要なのはです。そうなるように、医療機関の持っている情報システムとの連携を取らなければなりません・・・泥をかぶってシステム構築をしてきた経験者なら、『大変な作業になる!』と身構えることでしょう。

 

何が大変か、細かな部分を挙げたらきりがないので、大きな括りでいうと以下の作業です。

 

①保険証を使う受診数が膨大

⇒病院、クリニック、歯科合計で一日当たり、約850万人(2024年のデータ)

 この数は、そのままマイナ保険証を管理するサーバの負荷となります。

②アクセスの集中

午前7〜9時にアクセスが集中するsuicaなどの交通系と同じですが、医療機関はスパイクとかバーストトラフィックよばれる午前9時〜10時がアクセスのピークです。交通系のようにチェック項目が少なければまだ良いのですが、マイナ保険証は、本人確認だけではなく、診療に必要な様々な情報が必要になります。例えばカルテです。この情報は各医療機関からupしておくのか、医療機関に見に行くのか分かりませんが、いずれにしろできるだけ待ちが発生しないよう素早い処理が求めらます。そうそう、お薬手帳にあるような情報も参照する必要があるので、さらに手間がかかります。

また、一般的に複数の医療機関、歯科に通院していることから名寄せも必要になり、一人の患者のマイナ保険証から発生するアクセスが1:nになり、システム、ネットワークに負荷がかかります。負荷がかかるということは、レスポンスが遅くなるということなので、待ち行列は長くなってしまいます。つまり、1リクエストあたりの通信量とサーバー側の処理時間が、suicaとか銀行カードの比ではなくなるということです。

③ 止まることが許されない公共性

銀行のシステム障害も深刻ですが、医療現場で保険証が確認できないと、窓口で全額自己負担を求めるか、手書き対応を強いることになり、CSもESも低下することになります。茨城県などでは、救急搬送時にマイナ保険証を使うという実証実験も始まりましたが、救急隊員は、救急対象者のマイナ保険証を使ってかかりつけ医に連絡をしたり、既往症、薬歴などを確認して、適切な搬送先を決め、患者情報を先方の担当者に必要な情報提供をしなければなりません。こういうときに②で説明したアクセス集中によるレスポンス低下が起きると命にかかわります。もちろん、今まで述べてきたことは当該システムが問題なく動いているという前提で、止まることが許されないシステムです。財産を扱うATMも公共性が高いシステムですが、マイナ保険証は、財産よりも重い命を扱うものなので、止まってはいけないのです。しかし、100%保証はできません。その時、どうするか?考えているのでしょうか?

④サイバー攻撃のターゲット

止まってはいけないシステムは、裏を返せばサイバー攻撃を行って身代金を要求するワルたちの格好のターゲットです。考えようによっては、形を変えた戦争かもしれません。防護側は100点を取り続けなければなりませんが、攻撃側は数千回数億回、攻撃を試み(しかも自動)、そのうちたった1回成功すれば勝利=侵入成功となります。人間の持つ脆弱性まで含めて守らなければならないのが、防御側の真の難しさだと感じます。

 

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