都知事選挙に出馬して約166万票を獲得した石丸さん、自民党筋は蓮舫さんを3位に叩き落した功労者と思っているようですが、彼等が応援した小池さんは、前回獲得した366万票から75万票も減らした291万票になり、小池票も食ったと思った方が無難です。安芸高田市の市長として既得権にしがみつく昔ながらの老害議員とのやり取りが全国に拡散され、既存の清濁併せ呑むという既存政治家のスタイルとは一線を画す石丸さんの歯切れの良い答弁ぶりは大変魅力的です。質問を受ける際には、その質問の趣旨を確認し、何を答えるべきかを整理したうえで的確に答弁する様子はYoutubeでおなじみですが、その彼がプレゼンの上手い人はたとえ話が上手いと言っていました。

あの冷静に分析し、理路整然と説明する彼をして『上手い』と言われたのは、三菱UFJ銀行時代の先輩でしたが、難しい話でも優しく解説し、解説された方は『なるほど』と理解するスキルの持ち主だったそうです。

 

20年近く前ですが、市ヶ谷の公認会計士協会で午前午後4コマで開いた研修の講師をしたアンケートに、たとえ話の持ち出し方が良いという評価があったことを思い出します。


石丸さんの評価項目と同じだったのは有り難いことですが、難しい話や説明の中で皆さんの反応がイマイチだった場合には、できるだけ身近な言い得て妙なたとえ話をするようにしてきました。プレゼン力を磨くというセミナの案内が舞い込むことがありますが、その様なセミナを受講してもプレゼン力が向上することはないと思った方が無難です。なぜ?プレゼンを上手くする技法などないからです。プレゼンしようとする内容が、実際にやってきたことであれば自信を持ってプレゼンできるはずです。質問にも自信を以て答えることができるでしょう。

 

安倍、菅、岸田首相や閣僚の答弁が、官僚の書いた紙を理解することなく棒読みするような場面はしょっちゅう見かけますが、この様な経験を何回積んでもプレゼンの力がつくことはありません。唐津一さんという有名な技術者がいて何回か講演を拝聴しましたが、スクリーンには講演テーマだけが映し出され、終わるまで変わりませんでした。彼は講演開始時に腕時計を外し、演台の上に置き、やおら始めます。原稿も何もなく、頭にある無尽蔵の知識経験をシナリオに沿って分かり易く話をして時間通りに終わります。唐津さんではない凡人の我々はそうはいきませんが、正にプレゼンの達人でした。我々凡人はどうすれば良いプレゼンができるのでしょう。経験に基づき、ポイントを列挙します。


《ポイント1》
とかくアレもコレもとなりがちですが、訴求したい内容を理解してもらえる展開になるようなシナリオを作ります。言いたいことが10あったら、まず半分の5に絞り、次に3つにします。最後に1つだけと言われた時のために最も優先順位の高いものを決めておきます。この様に、テーマ/audienceのレベル/期待値などに応じて主張したいことの優先順位を決めておくことを勧めます。また、飛ばしても良いところ/少し時間をかけて説明した方が良いところを決めておき、audienceの反応、時間の進み具合に応じて適宜反映します。
《ポイント2》
アドリブで説明を追加できるようにしておくことも印象に残るプレゼンにするポイントです。『ここには書いてありませんが、~のようなこともあります』と前置きしてから話します。この時audienceがメモを取ったり、うなづくようですと関心があることが分ります。それを観察しながら『巧く行っている!』と思うわけです。それが自信につながり、良い気分でプレゼンを続けることができるようになります。しかし、何より人前で話す機会を積極的に作ること=場数を踏むことが最も効果的ではないかというのが経験から言えることです。
《ポイント3》
司会者の紹介のあと『ご紹介いただきました××でございます』で始まりますが、いきなり本題に入らず、audienceを観察することを勧めます。このとき、会場の右から左、前から後ろまで、期待しているか文句をつけようとしているのか、義理で参加しているのかをサッと観て感じ取ります。次に歯切れ良く『本日のテーマは、ここに掲げる~です。』と、トップページの表題を見ながら読み上げます。『このテーマは~』と、どうしてそのテーマにしたかの背景を簡単に説明します。この時、audienceがどの様な反応を示すかを観察します。反応が鈍かったら、冗談を交えるなど❝面白そう❞と感じてもらうようにします。ただし、まだ入り口なので手短に話さなればなりません。場面にあった話(たとえ話)をアドリブで話せるよう話題を豊富にしておくことも必要です。次にシナリオ(目次)を説明しますが、一つずつ読み上げるのではなく(時間がかかるので)、「ここに書いてある順にお話します」と言って注目させます。『ここ』と言われると、『どこ?』ということになり、audienceは顔を上げて説明画面を見てくれます。強調したいものがあれば、『特にココは重要ではないかと思っています』と言いつつ、ポインタを当てて強調し、注目を促します。この時もaudienceの反応を観察します。アニメーション機能を有効に使うことも一つの方法です。この段階を最初の1,2分で済ませますが、audienceの関心を高める(イニシアティブを握る)重要な時間です。ここが上手くいけばプレゼンは順調にすべり出します。
《その他》
学会では発表原稿を作る場合がほとんどですが、私は作ったことがありません。上述のように、audienceの反応を見ながら発表を調整(内容変更、補足、削除etc)することはよくありますが、発表原稿に沿って説明しているとそれができません。邪魔です。そもそも、原稿を読んでいるようでは発表する資格がありません。みっともないので止めましょう。

 

明日から3連休。ブログもお休みします。


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