行き止まりの家 (前編)  | 八光流 道場記

八光流 道場記

京都で約30年、師範をやっております。
つれづれなるままに書き綴ってまいります。

子供の頃 親父と二人で何かをしたと言う思い出は少ない。


親父は、百貨店勤務だったので休暇が合わない事もその原因の一つだが、おれと親父が二人で出掛けたり行動するとトラブルが起きると言う妙なジンクスがあったのでおれは、なるべく親父と二人で出掛ける事を避けるようになっていた。


そんな親父とおれは、ある夏珍しく二人で昆虫採集に出掛けた。


おれは小学4年だった。

おれ達は早朝山に向かったが、あれは滋賀県の方だったか京北の方だったかハッキリ覚えていない。


午前6時頃から数時間カブトやクワガタを探したが、思った程簡単に採集出来なかった。


それでも車で転々と場所を変えて目当ての虫を探し数匹のカブトとクワガタをゲットした。


昼を大分過ぎた頃「そろそろ帰るか」と親父が言った。


おれは「腹も減ったしなぁ」と親父に同調した。


おれ達は、帰り道で何処か飲食店に寄って昼飯を食べる予定だった。


ところが、この時 親父がとんでもない事を口にした。

「ところで ここ何処や?」


おれは「そんな事おれに聞くなよ」と呆れて言った。


山道を昆虫を探して無軌道に車を走らせていて気が付けば迷子になっていた。


(だからおれは、この男と二人で行動するのが嫌なんだ)とおれは心の中で思った。



後編に続く