中学の三学期の大型行事はマラソン大会だった。
この大会は、1年~3年まで全員参加で行われる。
おれは、長距離走は大嫌いで持久力にも自信が無い。
それにただひたすら決められた道を馬鹿正直に走るのは、どうしてもおれの性に合わない。
このマラソン大会のコースは、12kmで中学の校庭を出て西山の柳谷観音まで行って帰って来る大半が山坂道のコースだった。
その頃まだ道は舗装されておらず悪路だったのでかなりハードなコースと言えるだろう。
だから1年の時のマラソン大会は、12kmのコースをおれは殆ど歩いてゴールした。
おれは2年のマラソン大会は、最初から最後まで歩くと決めていた。
最後まで堂々と歩いて最下位で大会を締め括るのも乙なもんだと思ったからだ。
マラソン大会当日 全校生スタートして走り出す中おれは歩いていた。
その時後ろから声を掛けて来たのは、1年の同級生の小太りだった。
「一緒に走ろう ぼくだけ遅いのカッコ悪いし」と小太りは、弱気な事を言う。
おれが「そう言えばお前去年の大会は、最下位だったな」と言うと小太りは「思い出したくない」と呟いた。
「おれは、今年走る気無いからおれと一緒に居たらまた遅くなるぜ」と言ったら小太りは「相変わらず変な奴だ」と言い捨てて走り去って行った。
「相変わらず気の小さい奴だ 一人だけ遅くて何がカッコ悪いのかねぇ」とおれは独り言を言いながら小太りの後ろ姿を見送った。
vol.22に続く