ダークヒーロー イン・ザ・スクール (43) | 八光流 道場記

八光流 道場記

京都で約30年、師範をやっております。
つれづれなるままに書き綴ってまいります。

整体の仕事を始めて数年経った頃 ある初診の患者と話していたらこの患者は、かつておれが学童保育の在宅指導員だった時の児童の母親だと言う事が分かった。


学童保育の思い出をこの患者と暫く話している内にある少女の話になった。


「私は、娘にあの子と遊んじゃ駄目って言ってたんです」と患者が言う。


おれは「あいつは、父兄達に嫌われてたからねぇ」と言っていたら急激にあの頃の記憶が昨日の事のように甦って来た。


おれが、その学童保育に初めて行った時 室内に入って指導員に挨拶していると背後から「男の先生?」と声を掛けて来た。


振り向くと長い髪の少女が微笑んでいた。


身長がおれの肩位あつたので「学童保育のOBか?」と聞くと少女は「4年」と答えた。


どう見ても中学生位に見える少女だった。


彼女は「行こう」と言いながら腕を組んで来た。

そして部屋の片隅の畳の上に座った。

腕を組んだままだったからおれも座った。


彼女が「トランプする?」と言ったがおれは「いやおれは外で野球に参加するように言われているから」と立ち上がった。


「見に行こうかな」とまた少女が腕を組んで来たので「いちいちくっつくな」と言うと彼女は「何で?照れてるの?」と言って笑った。


少女を振り払って外に出掛けたら指導員と擦れ違った。

その時「早速目を付けたな」と指導員が言うのが聞こえた。


「おれはロリコンじゃ無い!」とその指導員に言ったら「逆ですよ」とその指導員が意味深な笑いを浮かべた。


逆って事は、おれがこの少女に目を付けられたのか?

たかが10歳の子供が大人の男に目を付けると言う表現には違和感がある。


だが、おれが男子と野球をしているのを古タイヤに腰掛けて見詰める少女の目は、確かに男を見る女の目だった。


おれは、薄気味悪さを感じた。


結局この日の仕事は、大人か子供か分からない少女に付き纏われて何と無くやり難かった。



(44)に続く