母親は、息子に護身術を身に付けさせたいと言う。
ところが、母親の思いとは裏腹に当の中学生は虚ろな目をして突っ立っている。
(やる気あるのかねぇ)とおれは思ったが、近頃こんなパターンはよくある。
武道を修得させたい母親と武道に興味すら示さない息子のコンビ。
母親が、とれ程願おうと 習う本人にやる気が無ければ武道の修得も上達も無理な相談だ。
武道修得と上達の条件は、強くなりたいと言うシンプルな目的意識だ。
武道経験者や中高年から武道を始める者の中には、独自の目的を持つ者もある。
だが、中学生以下の者が武道を始めるに当たっては、強くなりたいと言う目的以外は必要無いとおれは、思っている。
八光流のモットー「挑まず、逆らわず、傷付けず」何て事や活殺自在の奥義も修行を続ける中で後から分かって来る事だ。
今回 見学に来た中学生からは、八光流と言う力を手に入れたいと言う強い意志を感じられ無かった。
しかし母親は、次回の練習の時に息子に技の体験をさせて欲しいと言って来た。
おれは「本人にその気があるなら」とだけ言っておいた。
少年が、感情を表に出さないとしても 練習に参加すればその動きで必ず本心が分かる。
少年がもし本気で八光と言う力を求めているなら 強くなりたいなら親に言われなくてもおれの道場に入門するだろう。
八光流をやるもやらないも本人しだい。これだけは自分で決めなければならない事だ。
おれとしては、少年が八光流を求めるなら誠心誠意その思いに応えようと決めている。