八光鍋の味 | 八光流 道場記

八光流 道場記

京都で約30年、師範をやっております。
つれづれなるままに書き綴ってまいります。

八光鍋と言う鍋料理がある。

甘辛い 少し薄目の牛鍋のような出汁で牛肉と野菜を煮て食する。
欠かせないのは、ニラとキノコ類で牛肉の代わりに白身魚とかでもいいらしい。

おれは、この料理を師範になった日の夜の宴会で食べた。
そんなに凝った料理でもない有りがちな鍋料理だったが非常に美味かった。

その後 何度か自宅で八光鍋を作って食べる事は、あるが師範献帯式の夜食べた八光鍋ほど美味い八光鍋は、作れない。

料理には、材料や味付けだけじゃなく その時の心情も食べ物の味に大きな影響がある。

あの日食べた八光鍋の味は、おれの師範になった意気込みと 一つの目標を達成した心地よさの表れだったようだ。

食べ物と人の心の繋がりは、深い。
思い出に残っている料理は、その料理を食べた時の相手や会話や景色が、次々と浮かんで来る。時には、思い出したくもない 人知れず流した涙の味まで滲む事もあるけれど それは、それで おれと言う男の隠し味と言う事なんだろう。