ブッちゃんとの出会いは20年前にさかのぼる。
拙書「ミータ」(書肆侃侃房) にも書いたことだが、
ブッちゃんはミータの子だ。野良猫ミータの2度目のお産で
生まれた、4兄弟のなかの唯一の雌猫だった。ミータが
どこかで産んだ子供たちの目が明いて歩けるようになってから、
うちの隣の家に連れて来た。
日曜日の朝、私と夫が家にいるとき、リビングの前の庭を
子供たちを連れて通って行った。
「連れてきましたよ」と私たちに知らせているみたいだった。
隣家の勝手口の、色々と物を置いているところに子供たちを
隠したようだった。
その頃は私も仕事などで忙しく、あまり気にかけてもやれな
かったが、ミータには朝晩餌をやっていた。そのうちミータが
子猫たちを連れてくるようになったので、お皿を大きなものに
替えて、量を増やしてやるようにした。
餌の入ったお皿を置くと、子猫たちがワッと集まってくる
のだが、その中にいつも三毛の雌猫がいなかった。その子は
いつも私たちを警戒して庭木の下に隠れていて、呼んでも
お皿をすぐそばに持って行っても絶対に出てこようとは
しなかった。そのうちにお皿の餌はお兄ちゃんたちに食べられて
しまっていた。
私たちがいると出てこれないので、お皿を置いたらすぐに家の
中に入るようにして、そっと窺っているとおもむろに出てきて
食べ始めるのだが、いつもその頃にはあまり残っていなかった。