選挙の劣化 | 俳句の里だより2

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俳句の里に生まれ育った正岡子規と水野広徳を愛する私のひとりごと

象徴的な都知事選

 

7月に入り、梅雨の真っ盛りというのに日本列島には猛暑が来襲し、熱中症患者が急速に増加している。すでに各地で35℃を超える猛暑日が出現しており、これから本格的な夏を迎えると気温は体温を大幅に超える恐れもあり、特に我々高齢者にとっては気が気でない季節と言ってよい。先日も高齢者仲間でのゴルフコンペを計画していたが、あまりの暑さで中止せざるを得なかった。以前は雪の降る冬場のみコンペを中止していたが、ここ数年は暑さのため夏場も避ける羽目になったが、その代わりに屋根があるゴルフ練習場へは、健康維持もかねて夏冬関係なく通い続けている毎日である。

 

それはさておき、私とは直接関係ないが、7月7日「七夕」日曜日には、東京都知事選の投開票日である。日本の首都の知事選挙とあって、それなりに国民の関心を集めているが、その中身(選挙戦)はなんともお粗末というか、品が無いというか、あまりにも低レベルの選挙と言ってよい。今回の知事選に立候補したのは、現職の小池百合子氏の他に、有力とされる蓮舫氏、石丸伸二氏を含め56名というから驚きだ。前回(2020年)の選挙では22名だったから2倍以上である。しかも、今回は一つの党(NHK党)から何と24名が立候補しているが、その目的がポスター掲示板へポスターを貼る権利を有料で第三者へ譲渡(販売)して金儲けしようと企むことというから、これまたびっくり仰天だ。

 

掲示板の一部を乗っ取り、それをビジネスにしているが、これに関してNHK党の立花党首は「候補者が許可したものを貼っており、法律上は問題ない」と突っぱねている。公職選挙法では「選挙の自由」を重んじているため、ポスターの内容を制限する規定はなく、専門家も「法律の想定外だ」としてこれを取り締まることは出来ず、まさに「法律のザル」を衝いた悪質な行為である。選挙の掲示板は、本来は有権者が投票をする候補を選ぶため、公費で設置される公共物であり、それを私物化し、ポスターを掲示する権利を金儲けのために販売しており言語道断である。

 

しかも、今回の都知事選の掲示板には、ほぼ全裸の女性のポスターや風俗店の広告ポスターなどが貼られた。これらについては、東京都の迷惑防止条例や風営法違反の疑いがあるとして警視庁が候補者に撤去するように警告したという。一方で、候補者とは無関係のSNSなどの宣伝目的とみられるポスターも貼られていたが、これらについては刑罰法規には触れていないとして見逃さざるを得なかった。いずれにしても、候補者が選挙世は無関係の好き勝手なポスターを掲示板に貼ることが出来るような「ザル法」は、早急に改正する必要があるが、何か先の自民党による「裏金問題」にも通じる出来事であり、「政治家の劣化」に倣い、「選挙の劣化」とでも言うべきである。

 

さらに「選挙の劣化」について言えば、今回の都知事選では、候補者がNHKのテレビやラジオで政策を訴えるはずの政見放送でも、政策とは無関係の内容が流されているという。大声で騒ぎ立てたり、自分の名前を連呼してSNSを宣伝したり、もはやNHKの政見放送が無法地帯となっているそうだ。私は、東京都在住では無いので、政見放送には全く関心がなく見聞きしていないので、どの程度酷いのかは不明だが、何とも小学生以下のお粗末で品位にかける行為である。こんなのが都知事に立候補しているとは、「裏金議員」など国会議員も同様であるが、日本の政治レベルが如何に低レベルであるかを如実に示していると言ってよい。

 

この政見放送について、公職選挙法では選挙の公正を保証するために「放送事業者(NHK)は、そのまま放送しなければならない」と定めているが、それを逆手にとってテレビ画面に半裸で動き回ったり、卑猥な言葉を繰り返したりと、かってし放題である。公職選挙法では「品位を損なう言動をしてはならない」との規定はあるが、こちらもまた「ザル法」になっており、今のままでは「選挙の劣化」というか「民主主義の劣化」がますます進み、日本は「二流」どころか「三流」まで落ち込み、世界中の笑いものに成り下がってしまうだろう。もちろん、これは都知事選に限った話ではなく、国会議員を選ぶ国政選挙についても同じことである。

 

最後に、今回の都知事選の有力候補とされる現職の小池氏には、学歴詐称疑惑(カイロ大学を本当に卒業したかどうか)や、現職の強みで一部の都民に対して選挙直前にカネをばらまく(低所得世帯へ商品券1万円配布、18歳以下へ月5000円の給付など)などの公職選挙法違反疑惑があり、また「裏金疑惑」で大問題となった自民党と密接につながる(自民党から支持)など、批判にさらされている部分も多いが、これらを都民がどのように評価するか、都民の良識とはいかなるものか、都民ではないが興味ある点だ。明後日の日曜日、その結果次第で小池氏の三選か、それとも敗北かが決まる。