自民崩壊が現実味 | 俳句の里だより2

俳句の里だより2

俳句の里に生まれ育った正岡子規と水野広徳を愛する私のひとりごと

衆院補選惨敗

 

今日から5月、皐月(さつき)が始まる。春から夏へと季節が移り変わり、桜から新緑が美しい爽やかな季節でもある。今日5月1日は、唱歌「茶摘」の歌「夏も近づく八十八夜・・・」でも知られる「八十八夜」であり、立春から数えて八十八日目にあたる。「八十八」という字を組み合わせると「米」という字になることから、農業に従事する人にとっては五穀豊穣を願う特別重要な日とされてきた。また、八十八夜に摘まれた新茶は、昔から栄養価が高いとされ、古くから不老長寿の縁起物として珍重されていた。また、先月末から今月初めにかけては、「昭和の日」「憲法記念日」「みどりの日」「こどもの日」など祝日が続く「ゴールデンウィーク」であり、世間は旅行や帰省などで民族大移動が始まっている。まさに、人々にとっては、愉快で楽しく嬉しい季節である。


そんな多くの国民にとっては「明るい」「爽やかな」季節であるが、それとは真逆の「暗い」「憂鬱な」季節を迎えている人々が居る。言うまでもなく、先月28日に行われた3つの衆院補欠選挙で惨敗した自民党の議員連中であり、特にトップの岸田首相にとっては大打撃を食らった。ボクシングに例えれば、強烈なパンチを食らってダウンし、そのまま立ち上がることが出来ずノックアウト負けを喫したと言ってよい。岸田首相は、このところ長期間20%前後に低迷している内閣支持率を、この補欠選挙で勝利して少しでも回復し、9月の総裁選前に衆院解散を行い、何とか自民党の議席数を減らさないようにして、総裁選を勝ち抜きたいと目論んでいた。しかし、そんな淡い期待も今回の惨敗によりすべてが吹き飛んでしまい、解散も出来ず、総裁選すら出馬も望み薄となった。

 

もともと、今回の衆院補欠選挙では、昨年末から世間を賑わした多くの自民党議員や派閥による「裏金疑惑」により、自民党が勝利するのは難しいとの下馬評だったが、岸田首相はじめ自民党幹部は「ひょっとして勝利も」との一縷の望みを賭けていた。しかし、自民党議員の「裏金事件」やスキャンダル、汚職疑惑による世間の風当たりが予想以上に厳しく、3つの選挙の内、長崎と東京では自民党候補者すら立てることが出来ずに不戦敗だった。また、島根では候補者を立てたが、自民党自体が有権者に猛反発を受けたため、あえなく大差で野党候補に敗北を喫した。すなわち、今回の補欠選挙は、いろいろな予想はあったが、終わって見れば至極当然な結果に終わったのであり、自民党の敗北は順当な結果に落ち着いたのである。

 

特に、島根はこれまでずっと自民党のみが議席を独占していた「保守王国」だったが、それも良識ある県民の前には空しく吹き飛んでしまい、この全国の「保守王国」への影響は計り知れない。そのため、岸田首相はじめ自民党幹部の連中は、今後衆院・参院、あるいは国・地方にかかわらず、もしも選挙をやれば、どこでも自民党が大敗するのではと恐れおののいているに違いない。世間ではゴールデンウィークと言って多くの国民は楽しい、明るい時間を満喫している一方で、自民党の連中は誰一人そんな浮かれた気分にはなっておらず、暗く淀んだ気持ちに苛まれているのではなかろうか。

 

新聞各社の社説でも、「裏金事件への岸田政権のこれまでの対応が、国民の信頼回復につながっていないことを如実に示した結果」「自民王国で議席を失ったことは、党への不信がそれほど根深いと知るべき」(朝日)、「自民党の 凋落 ぶりが浮き彫りになった」「岸田首相は危機的状況をどう立て直すか、政権運営は厳しさを増す」(読売)、「「政治とカネ」の問題に正面から向き合わない自民党の姿勢に、有権者が「ノー」を突き付けた」(毎日)、「派閥パーティー収入不記載事件やその後の対応が原因で、厳しい審判を突きつけられた」(産経)、「自民党派閥の政治資金問題をめぐる生ぬるい対応などに、厳しい民意が示された」「支持率が低迷する岸田文雄首相にとって打撃は深刻だ。9月の自民党総裁選に向け、政権運営は崖っぷちに立たされた」(日経)、「岸田文雄首相ら政権幹部は、選挙結果を直視し、自らに政権を担当する資格や能力があるのか、自問すべき」(東京)など、岸田政権や自民党の先行きは厳しく、お先真っ暗と言ってよい。

 

それでも、当の「楽観的な」というか「鈍感力の優れた」岸田首相は、「結果を真摯に重く受け止める」「総裁としても政権与党としても課題に一つ一つ取り組んで結果を出し、責任を果たしていかなければならない。自民党改革や政治改革、さらには賃金や物価対策などで答えを出し、国民の信頼回復に努めていきたい」「問題の再発防止に向けて政治資金規正法の改正に取り組まないといけないが、それ以外の課題にも委員会での議論に資するよう、自民党としての方向性を明らかにする」「一つ一つの課題に取り組み、結果を出すことに専念しなければならず、衆議院の解散については全く考えていない」と、いつものように悠然と構えており、事態の深刻さなどどこ吹く風のようだ。

また、同じ与党公明党の山口代表は、「厳粛に受け止めなければならない。自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題やその対応への国民の厳しい評価が表れている」「信頼回復に向けて、今の国会で政治資金規正法の改正を実現させる」「今、問われているのは政治に対する信頼を回復することで、真摯に国民の期待に添うような対応を進めていく姿勢を取ることが重要だ」と、自民党に代わり自分たち与党の先行きを深刻に受け止めているようだ。

 

一方、野党の立憲民主党の岡田幹事長は「政治資金の問題で、事実関係を明らかにせず、適切な処分もできず、具体的な対策を打ち出せないことは全部、岸田総理大臣の責任ではないか」「自民党の政治改革案がダメだという民意がはっきり示された」と話した。また、共産党の小池書記局長は「岸田政権に対する明確な不信任の審判となった。潔く身をひくべきだ。衆議院の解散・総選挙で国民の信を問う」「政治とカネの問題であいまいな決着は許さないという補欠選挙の民意に応えるよう国会で奮闘していく」と話したが、「ぜひとも野党に政権交代を」との理解と期待が必ずしも多くの国民に得られないもどかしさがあるのは情けない。

 

ともかくも、今後6月下旬の国会会期末まで、「裏金」など政治資金問題や政治改革案に関する与野党の国会での攻防は続くが、いずれにしても与党自民党と岸田政権はこれまでになく窮地に陥っており、長かった自民党政治、自民党政権の凋落と崩壊が現実味を帯びてきたと言ってよい。