今回は栃木市内吟行の予定でしたが、天候が悪く通常の句会となりました。急に寒くなりました。先日まで半袖でいたのが嘘のように朝晩は冷えます。宇都宮に転勤で来た方はおおよそ口をそろえておっしゃるのが「風が冷たい」「思ったより寒いところ」です。宇都宮は平野部ではありますが、日光連山、那須連山から吹き降りてくる寒気が特徴です。でも、寒いのは暑いよりまだ対策ができるのでマシかもしれません。暑すぎた季節に「さようなら」、寒い季節よ「手加減よろしく」というところでしょうか。
そういうわけで、今回は兼題なしの自由句を掲載いたします。
川島育郎
栗飯を作る妻の手指赤し
秋の蚊を叩けば壁の赤き染み
読書する腕も縮まる夜寒かな
スーパーの新米のみが山積す
痛風の腫れに悔いたる暮秋かな
池田アキ
秋入梅思いのたけはふりだしに
秋時雨洗濯物の多さかな
新米の値札だけ見る買物客
無花果を食べてめぐらす幼き日
寒暖差秋の夜長に身も震え
赤ワイン忘却の果ての夜長かな
温暖差唐突に晩秋となる街並木
秋の宵出かける前に服定め
高崎志朗
うんざりな夏は一気に秋寒に
秋めいて厚手のシャツでデートかな
散髪や足取り軽く秋うらら
大竹和音
満月や録音は弦変へぬまま
はしくれの媚び方知らぬ草の花
星月夜魔女に世辞言ふ鏡かな
二級酒を寝かし古酒とす小料理屋
無花果や女子は早くに大人びて
小林泰子
秋の夜のラテに混じ入る環境音
不夜城の道路工事の丸き秋灯
秋雨やまどろみに立ち入る夜半
渡辺健志
名月を眺む一刻風雅かな
秋風や獣過ぐるる一里塚
腰曲がる老女見上ぐる柿の木や
鱗雲黄金溢して西の果て
軒下に蟲ひそまりて聲しづか
七日ぶり日の目たのしき芒揺る
錦秋を眺むる者は熊ばかり
白石洋一
息をする今自分は生きている
金木犀下校の道のり四キロ半
金木犀母の葬式香る庭
秋の宿妻の寝息を闇に聞く
眠るのが苦痛になる時が多い
洗濯物のボタンを亀虫と間違えて
天誅殺トラブル重なる10の月
子育てが男を父にする
この世のモノはそもそも無用
酒は飲まずとも眠れはする
刈谷見南國
色鳥や母は水彩として残り
色鳥や母は水彩もしくは水
秋うらら母よろめきぬよそゆきで
しきび持つ母はよそゆき秋うらら
虫の闇落ちる硬貨やソースなど
鍵穴に焦点合はせ虫しぐれ
福冨陽子
猫じゃらし雨に打たれや背の丸む
鳴き声の移り移りて秋蛙
秋雨の問はづ語りは蔦雫
柿切れど二つに割れぬ蔕の意思
神無月越へれば我も新しき
かぼす届く新聞紙に包まれて
短編を書き上げたころ虫果てり
棉取りの笊の端に止む秋雀
ヒカリ座のけだるき椅子の丁度佳く
大分から届いたカボス
