自由俳句 風薫 句会 | 自由俳句 「風薫」(ふうくん)

自由俳句 「風薫」(ふうくん)

宇都宮で自由俳句の会「風薫」を主宰している陽子です。自由な感覚で俳句を詠み合う句会を月に1回開催しています。俳句集もすでに10集集目を刊行しております。

自由俳句「風薫」の定例句会を開催しました。やっと涼しくなってきましたね。秋祭や収穫祭、新酒の御味見会など秋ならではのイベントがあると日常も楽しくなります。これからしばらく窓を開けたくなるような気持ちのいい季節を満喫したいと思います。

今回の兼題(テーマ)は蜻蛉です。

 

川島育郎

玄関の脇にひそむや銀やんま
赤とんぼ羽をつまめば暴れたり
秋の庭孫にせがまれトンボ採る
羽おろすトンボの背中つかみたり
人の世のはかなき知るや秋の夜
小盆栽ひと雨来ての残暑かな
旅に出ず盆栽棚で紅葉狩り
なるようにしかならぬ夜濁り酒


池田アキ


秋の宵楽しむ前に高いびき
酔っ払い秋の夜長に千鳥足
赤とんぼ幼き頃の夢はるか
夕暮に何を思うの赤とんぼ
赤とんぼゆるりと泳げ空の海
暑い秋まだむくむくと雲太る
秋暑しギターとベース交換し
台風の雨風まだか小雨空

目覚めても心はいまだ夢の中
満月やまだ見ぬ夢を追いかけて


高崎志朗

軟式の白いボールに秋あかね
野良着の母赤トンボを連れてをり
落ち鮎や銀鱗光るヤナの上
一時停止吾と同時に秋カラス
落ち柿や湖面は波紋をつくりたり
つがい鴈前を交互に川面ゆく
燕帰る吾も真似てや月一度



渡辺健志

新涼や羽織選びに時くらひ
赤蜻蛉羽は西陽をすくひけり
夕富士や穂波の影は深まりて
芝に落つ洗濯物や野分あと
月時雨猫の喧騒鎮まりぬ
鶴瓶落ち影の伸びゆく帰宅路
鳥集ひ落穂啄む長き影
父祖の地や実り消へけむ捨案山子


大竹和音


片隅の媚びることなき草の花
立て板にバス釣り禁止糸とんぼ
ゆらゆらと河原に燃ゆる赤とんぼ
蜻蛉や猫の手軽くかはしけり
とんぼ追ふ子の身軽さよ筑波山
つらなつてざれあつているとんぼかな
仲間来て音重ねたり星月夜
県芸の選外知りて秋夕立
はしくれの我も今こそ草の花


小林泰子

セキレイや尾羽ゆらゆら三拍子
秋の風ホールド掴む指震え

赤トンボ低空飛行や雨予感
電車内みな端に座る秋の夜
秋雷のわずかの闇わずかの無音
レモンハイ一口二口雨月かな


白石洋一

海の上時の過ぎるのが見える
五尺四寸の私
起きたら大阪に居るなんて
オリオン座見上げた夜空露天風呂
稲倒れコンバインは苦戦する

ジャガイモの後にブロッコリー植え
アスファルト蟻の穴有りホントかよ
コーヒーの搾かすを土に還す
カメラ持ちトンボ追いかけ彼岸花
赤とんぼネギの苗には興味無し


刈谷見南國

川とんぼ過去ばかり見て時止める
ジジ、ジジとトンボは時を戻しけり
空気読むとんぼアンテナ回すよに
とんぼうや雷蔵ばりのニヒリスト
笑ひ止まらぬとき蜻蛉消へにけり
機微に触れ踵を返すギンヤンマ

埃取るハタキの埃星月夜
爽やかや目覚ましなしで起きし日は
制服の裾から背中三日の月
秋分はつかめぬものやつかのまに


福冨陽子

つんと飛ぶ迷ふことなき秋茜
蜻蛉に選ばれし草木の誇り
蜻蛉や大群に紛れしも孤影
秋づけば蛇口からも澄み水の
翅ふるひ鈴虫鳴く夜の大相撲
寝覚月あかときを欲しひものとして
三日月や危ふき恋の鎌のごと
鰯雲さながら海まで群なして

秋扇出番のなしや猫またぐ
曼珠
沙華伸ぶ伸びてゆく一尺よ

翼のように羽を広げる白いコスモス