松手入れ職人ハシゴの支度かな | 自由俳句 「風薫」(ふうくん)

自由俳句 「風薫」(ふうくん)

宇都宮で自由俳句の会「風薫」を主宰している陽子です。自由な感覚で俳句を詠み合う句会を月に1回開催しています。俳句集もすでに10集集目を刊行しております。

 自由俳句「風薫」の定例句会を開催しました。兼題は「星月夜」。月は出ていないのに秋の夜空いっぱいに星が出ている場面、最近は街のにぎやかな光で見えないことが多いのですが、ちょっと足を伸ばして自然豊かな場所へ行くとこの光景を満喫できそうです。

 まだ暑さが残りますが、たしかに日没の時間が早くなりました。

 

 

高崎志朗
 

土間の隅虫を照らすや星月夜
鈴虫や音色競へば星月夜
新月や夜道明るき人の声
唐黍のハモニカ喰ひの子ら五人
ペアルツク会話が止んで星月夜


疋田 勇
 

せわしなき身体やすめば星月夜
秋雨や終わりはいつか問うてみる
猛暑日にうれしうれしの通り雨


山 多華子
 

星月夜十五の登山十勝岳
望郷の想い届けよ星月夜
仏花水朝晩替える残暑かな
和塩ふる芋のサラダの旨さかな
憧れは今年もテレビ風の盆
ドライブや秋雨前線くぐり抜け


渡辺 健志
 

先客の蜻蛉の踊る露天風呂
ミンミンとカナカナ混ざる峠道
星月夜空喰らふ富士の山影
落蝉や黒影集ゐ無常也


大竹 和音
 

ウインクかまばたきなのか星月夜
スナフキンとムーミン谷の星月夜
塒とは逆方向へ夜這星
色恋の邪魔者来たる雨月かな
還暦を咲かせ咲かせと草の花
あれ今日はアベツクばかり星祭
紅葉の道なき谷に誘ふ古ナビ
居酒屋の客を待伏す秋の風
恩人を探し当てたる老織女
酷評を笑ひ飛ばせり南洲忌


小林泰子
 

久々に逢えば秋色友の髪
試し書きくるりくるくる紅芙蓉
揚げたてのポテトかかえて秋の星
鵙の贄ねずみの眼空蒼きかな


白石 洋一
 

遠花火記憶の奥は手を握り
ゴム銃を上手く撃ちたくて
秋の虫の声深夜便の声に重なり
遠雷や網戸の向こうの水の糸
片足のバッタ菊の葉にしがみつき
ノーシグナルそれが私の最期
息をする又息をして生きて行く
蝶の幼虫苦瓜の蔓にへばり付き
満月や子猫四匹鳴き競う
イノシシは朧月夜に芋盗む


刈谷 見南國
 

路線図に帰る駅なき星月夜
知り合つて罵り合つて星月夜
グラウンド人文字のここ星月夜
星月夜板塀越しの団欒に
深い深い友達が欲し星月夜
ばんもんに月とどろろと百鬼丸
ウルトラQのロゴがぐるぐる残暑かな
十三夜鳥の映画をもう一度
震災忌シーツを高く振りにけり


福冨 陽子
 

星月夜隠るる者たち禊受く
人以外反応してをり星月夜
駱駝乗り砂漠を往くなら星月夜
野分の夜ごふごふと窓一枚
野分雲鎮まる隙に零余子(むかご)採る
朝顔の雫は堕ちぬ朝ぼらけ
すずむしの棲家増えたり猫そぞろ
足早も宵の速さも白露かな
蟷螂や獲物を前に太公望
糸瓜忌や人が歩けば道となり

庭で見かけたイトトンボ