文庫本その帯さへも処暑を待ち | 自由俳句 「風薫」(ふうくん)

自由俳句 「風薫」(ふうくん)

宇都宮で自由俳句の会「風薫」を主宰している陽子です。自由な感覚で俳句を詠み合う句会を月に1回開催しています。俳句集もすでに10集集目を刊行しております。

 残暑が続きます。

 さて、今回の自由俳句「風薫」の定例句会の兼題(テーマ)は「本」です。

 先の日曜、句会の前に文芸家協会主催の夏季講演会「松尾芭蕉の生涯」というテーマで黒羽の芭蕉の館の学芸員、新井敦史さんのお話しも聞かせていただくことができました。事務局長の三上様、ありがとうございました。芭蕉の俳諧が大成していく経緯を拝聴できてとても有意義でした。芭蕉の館は私たちも吟行を兼ねて訪れたことがあります。また訪れてみたくなりました。

 

 

高崎 志朗
秋暑し本読まぬまま返したる
盆休み脳が拒否するトルストイ
電柱に身を細めたる残暑かな

疋田 勇
台風に屋根飛ばされしヤギの声
満月や書棚の隅に武蔵伝
赤とんぼひらりひらりと夕の風

山 多華子
窓開けて夜半の読書稲光り
盆用意警戒レベル確かめつ
台風圏久々にカーテン開ける
猛威ふるう台風阻む里帰り
盆帰省肴は土産話かな   

渡辺 健志
旱魃やダムの水面に梢あり
まくなぎや高原の地に涼宿す
峠茶屋犬の散歩は避暑兼ねて
カンカンちりちりじりじり夏旱
後ろ手にアイス隠す子蟻の道
いいとこで頁飛ばさる扇風機

大竹 和音
学問の秋もラジヲとロック本
葡萄棚登場人物関係図
     ※牛久湖畔、住井すゑ文学館にて
雲魚亭の河童と遊ぶ真菰馬
    ※牛久湖畔、小川芋銭記念館にて
ひごろも草紐付き飴のスカ多き
夜明け前鹿の横切る御用邸

八月の護国の森はざはめきぬ
七夕や戻って来ないブーメラン
UFOの飛び出す絵本月の暈
悪餓鬼と競ふ𡚴の種飛ばし
施餓鬼会や饅頭ころげ禅問答

小林 泰子
燕の子ふちにとまってきょとん顔
墨文字の湾曲にとり憑かれし秋
秋晴れや今日の栞はチェック柄
歳時記をめくっては閉じ流星群
秋暑し刹那のケセランパサラン

白石 洋一
葉を巻いて虫を育ててペンペン草
長雨に草は茂ってズッキーニ腐る
reraを熟読する思わぬ展開に
干からびたミミズを囲む小蟻の大群
サッシ越しの風夕方の涼しさは荻
娘の挙式は10月それまでは生きていたい
姓が変わった記憶と記録にしか残らない白石千乃
rera読了それぞれのドラマの妙
蝉の腹網戸越しに見る朝よ
カボチャとスイカ雑草に負けてしまい

刈谷 見南國
文月の本抜き出した函へこむ
つるべおとし父は長らく無職です
初嵐本の山避け寝てをりぬ
新涼の本重なつてゆくベツド
金蛇の縞飛び出でる歯磨き粉
ひらけば興の乗る本ありや今日の秋
かまどうまレ点入れたるDOLBYオン
謝りたき人の名書いて終戦忌
母よりはクジ運良い子終戦忌
サンゴ店覗きし母の終戦忌

福冨 陽子
文章の句読の違和に秋の風
五色刷り夕焼けはけうも逃げてゆく
小飛蝗の赤紫蘇群れて風に耐ふ
線香を手向けぬ墓や秋茗荷
椅子のある本屋であれば金草鞋
盆の暮ヒカリ座休み知らぬまま
塩辛昆布より命名の蜻蛉


八月のユリ