かろうじて座る場くれて夏木立 | 自由俳句 「風薫」(ふうくん)

自由俳句 「風薫」(ふうくん)

宇都宮で自由俳句の会「風薫」を主宰している陽子です。自由な感覚で俳句を詠み合う句会を月に1回開催しています。俳句集もすでに10集集目を刊行しております。

 夏祭が復活し、花火大会も今年は開催されます。私たちの住む町でも、ちょうど句会が開催された日に子ども神輿が窓の外を通っていきました。暑い日ではありましたが、伝統を受け継いでいくための貴重な行事です。

 さて、先日の日曜に開催した句会の兼題「汗」。汗の99.5%は水分ということですが、そうやって体温調整をしている身体の神秘的な仕組みに今さらながら驚きます。夏場、室内でじっとしていても3リットルの汗が出ると聞きました。

 名古屋場所も大詰めとなってきました。新大関は誰か、などなど楽しみです。        (7/21記)

 

 

 

高崎志朗
村雨や「拾円パン」は五百円
釜川をペットボトルの滝登り
田子倉ダム梅雨の恵みを湛へて蒼
流し麺うまく掴めぬ小暑かな
球追へば鼻頬からの玉の汗

 

加納弘志
道場にまばゆい汗が迸る
給料明細打ち込むテンキーに汗
金の汗共に流した友は今

 

疋田 勇
麦わら帽汗滴りて川掃除
玉の汗一心不乱居合道
朝焼けや鳥鳴き交はす木々の径
軒先の八重ドクダミの無垢の白

 

山 多華子
映像のパリ五輪の汗思う
雨上がりやや納涼くる窓の月
トマト五個洗う桶の水ぬるし
占いの最凶の日鰻食う
庭そうじ松葉牡丹の種散らす

 

渡辺 健志
冷汗や微風ひとつ揺れる橋
剣豪家草を刈る老婦人
炎昼の陰日向天国地獄
寝入端轟きは蚊雷のごと

 

大竹 和音
ロマンスは縁遠きこと夏の果
立ち漕ぎの坂を下れば汗に風
風呂敷をほどき形見の浴衣かな
カメラへとムササビのごと蠅一匹
また今日も溝川土手の茗荷汁
すゑめしに一人あたらぬ日のバイト
父の日や普段通りの花屋かな
古里にパーマ屋ひとつ紫陽花
銀鱗の竜神泳ぐ夜の川

 

小林泰子
雷雨止み闇に溶け込む滴の音
髪乱し手汗の滲むエコバック
四年振り囃子を待ちわびる
夏料理勝手口から囃風
炎天や坂道がなるトラクター

 

白石 洋一
パスタの玉ねぎ畑に掘りに行く
猪の食べ残した筍頂く
愛車見送り溢れた涙温か
ジャガタラやミミズが邪魔する土の中
矩形の端皮はブックエンド
radioから美空ひばり「人生ってえええ」
ヤサラとピカタ戸塚の夕飯アンダンテ
糠床を作り畑のキュウリ仕込む
曇り空水墨画のごと木っ葉たち
汗滲む朝から長風呂温泉屋

 

刈谷 見南國
汗拭ひさつきあらかた察しつく
眼鏡畳まる白南風に蔓向けて
会話ふと止まる白薔薇咲くやうに
梅雨雷キーホルダーがとれちやつた
海ほおづき芳一の耳落ちにけり
血のにじむやうな捜査や虹かかる

 

福冨 陽子
髪一本首に貼りつく雨づつみ
汗かひてなんぼと云つた父若し
糸蜻蛉飛んだあしたに雨やまぬ
洗ひ髪つつかけ履ひて風を待つ
甚平をずぶぬれの人に貸すも夫は
虫に好まれず赤紫蘇の葉は無事
土用の丑世間に耳塞ぎ過ぐ
納涼床まれびと来るもどかぬ猫
学生たちの声雪加の声止む

驟雨にも負けず名を知らぬ花咲く