冬星座名を知る前に名乗つてみる | 自由俳句 「風薫」(ふうくん)

自由俳句 「風薫」(ふうくん)

宇都宮で自由俳句の会「風薫」を主宰している陽子です。自由な感覚で俳句を詠み合う句会を月に1回開催しています。俳句集もすでに10集集目を刊行しております。

  先日の皆既月食にとても感動しました。今回の句会はそういった天体の話題にも触れながら開催しました。本日の午前三時ごろ、おうし座付近で火球が見られるとのことで、しばらく夜空を見ていましたがあいにく目撃はできませんでした。久しぶりに長時間眺めていたせいか、月や星々がいっそう綺麗に感じられました。

 冬の寒さに負けずそれぞれの感性でこれからも日常を詠んでいきたいと思います。

 

 

疋田 勇

闘病の窓季節移りて南天の実

尚仁沢枯れ葉踏み踏みコーヒーのため

冬の路地独りの老婦に手を添へし

寒牡丹つぼみあつたり咲き惜しむ

 

 

山 多華子

好きなこと秋冬鬱か手につかず

赤蜻蛉学童保育下校せり

秋深しテレビの映像夢行路

秋の雲大学駅伝天仰ぐ

柿簾空に雲なし昼下り

錦秋の祭りは終わり息白し

 

 

大竹 和音

セコハンの音盤掘りて冬の花

冬枯や荒野をよぎる琵琶音かな

煙突のけむりたなびく石焼き芋

奇天烈な夢途切れたり冴ゆる星

小春日の鐘ふたつ鳴るのど自慢

キューピット役しくじりし神の旅

ねんねこにつひてくる月まるひ月

孫思ふ母の手紙や残り花

冬ぬくし対バン終へし純喫茶

霜晴るる天に召されし星の粒

 

 

白石 洋一

仔猫も成長して性格はそれぞれ

土の匂いトラクターは掻き回す

思い出の海に浮かんで生きている

犬亡き後猫が鳴く朝冬近し

仕事一段落気の抜けた日々

指の冷たい朝犬は居ない朝

薪ストーブを焚くダルマの形

ギター十二本あの世には持って行けぬのに

モノばかりの家、捨てられない自分

娘が彼氏を連れてくる日ムカゴ飯

 

 

刈谷 見南國

オリオンは胴長短波ワッチせり

天狼にツートツートとモールス音

名も知らぬ墓も知らぬや白障子

障子越し妻の背後を通過せり

グラウンドだけの格闘冬うらら

返り花子の立候補親の知る

 

 

石井 温平

それぞれに生くはらからや秋惜しむ

妻の声耳に活き活き虫の庭

佛檀のあるじ恋しき今朝の秋

朝寒や月刊の句誌早や届く

歳時記をあさり図書館冬に入る

 

 

 

福冨 陽子

小説の仲間増へたり小春凪

書き綴れば本気で生きる別人生

五分以内ミシンの音は冬の音

中古車のひと月経ちて手足なる

凍蜂の羽音忙し昼短か

千両の実の五つだけ無事でゐる

皆既月食みていた前世砂の上

数珠玉の半枯茎に冬蝗

冬昴なにかにつけてただ観しも

八つ手の花が満開