冬星座幼きの声のもどり来る | 自由俳句 「風薫」(ふうくん)

自由俳句 「風薫」(ふうくん)

宇都宮で自由俳句の会「風薫」を主宰している陽子です。自由な感覚で俳句を詠み合う句会を月に1回開催しています。俳句集もすでに10集集目を刊行しております。

 先日開催した「自由俳句風薫」の句会です。本年最後の詠み納め。時の経つのは本当に早いもの。あっというまに年の瀬がすぐそこに来ています。大きなことができなくても、少しずつでもちいさな目の前のできることををやり遂げるのが日常の極意なのかと最近思います。

 

 

 

高崎志朗

年の瀬や日捲り暦透けてをり

樹の枝に凩避けてつがい鳩

スタッドレス履き替え終へて冬の雲

寒空や親父の歳に近づけり

蒼き空男体山頂初化粧

憧れやギター習ひてはや師走

露天に月肩にはらはら冬の華

浄土ヶ浜後光とともに波靜か

震動のいびきや闇裂く友と旅

 

 

疋田 勇

軒下の干し柿しばし時期を待つ

柚子の木や日差しを浴びて香り増す

日溜まりを選び群れてや冬蒲公英

雪催ウクライナ民謡を聴く

 

 

山 多華子

来る年や断捨離尚も続くかな

霧氷咲く夜の川面に月畝る

朝時雨心病む人また涙す

七五三最後の祝い孫6人

冬菫日だまりに在り我笑う

 

 

大竹 和音

行く年と来る年の間の子の寝息

高下駄の花魁道中狂ひ咲

冬ざれや鳩の羽落つ吹き溜まり

ビードロの花差し残し雪女郎

弦六本張り終へしいざ枇杷の花

襖よけ音響機材起こしけり

個展の絵背にしてライヴ冬日射し

暖簾くぐる女子高生の毛糸帽

冬の虹留学前の弾き語り

 

 

小林泰子

冬うらら指かろやかにドレミドレ

冬の空雲はいくつあっただろう

古暦手帳の断面ふくれたり

来る年やみそ汁は豆腐と葱

 

白石 洋一

娘をくれてやる後は頼むよ

この年で病院通いも無い事や

来る年かまた一つ老いてゆく

行く年は来る年と受け入れるだけかな

鳥の囀り早朝に聞くひんやり

数えては酒抜く日々の苦痛かな

来年の今頃は生きているかしら

花に父を重ねて菊が咲いた朝に

片腕の相棒死す切なく切なく

葬送の日の淋しさは心失い 

 

 

刈谷 見南國

分倍河原の新年妻はまだ海原

しりとりの終はりは晴れや大旦

あらたまの書「初歩のラジオ」かヘッセか

北颪拾はれぬ声バケツへと

冬蒲公英回路のやうな通学路

内側の服ほど長しクリスマス

笹鳴きや切手をつまむ手をつねる

切手売る仕立屋鯨眠りたる

 

 

福冨 陽子

行く年と来る年のはざまで跳ねる

山茶花の堕ち花びらに冬雀

枯蟷螂ゆつくりと動けば庭の隅

牡蠣洗ふ残る海の香竹の笊

流星群あはてぬさまなり冬の月

あれよ半月の記憶海の上

凍て空や星座の傍に流れ星

うりの蔓落とせば空の広きなり

寒蜆海無しの地の計り売り

同人誌二号出したり冬至来る

冬庭に咲くゼラニウム