洗濯の手ぬぐひ二枚秋暑し | 自由俳句 「風薫」(ふうくん)

自由俳句 「風薫」(ふうくん)

宇都宮で自由俳句の会「風薫」を主宰している陽子です。自由な感覚で俳句を詠み合う句会を月に1回開催しています。俳句集もすでに10集集目を刊行しております。

  八月の定例句会は緊急事態宣言も出て開催しませんでした。メールでの開催です。パラリンピックも今日〈8月24日〉開幕。どうか一日も早くもとの生活にもどれることを祈ります。俳句は家にいても詠めますが実際の体験や見るもの触れるものを新鮮に詠みたいものですから、堂々と外で行動してすがしい句を詠みたい。ささやかな希望です。

 

 

疋田 勇

河原路のみそはぎ揺れて赤トンボ

空ひらく雷鳴とどろく夕の闇

幼子の手もみじ可愛や秋探す

赤とんぼ夕焼け空の指とまる

秋近し河原路ふもと女郎花

苦瓜の蔓ジャングルとなり身の狭し

 

 

渡辺 健志

視界ゼロ高架強ばる大夕立

もう会えぬ店主変わりてあの味や

 

 

大竹 銀河

半袖着る戦禍の火種身のうちに

猫の毛をふはりとつけし夏布団

科学者の視線ででむしの渦の上

プールよじ登る白波より生まれ

石巻港発ちてトラック嵐へと

パチスロで涼みサイコロ振らぬ神

東京を出て店開き秋立ちぬ

メガソーラーパネルの露と芋の露

 

 

山 多華子

猛暑日一句の心汗ひとつ

猛暑日更新続く新記録

夏の日に挑む覚悟金メダル

夏つばき神と崇める靖国か

彼の夏も辛い記念日九段坂

旱干し見舞い送るや北の地に

真夏日にカーテン開ける雨続く

花火咲く籠もり日続く盆の庭

長雨に独活も韮も花成らん

エアコンの除湿かける洗い物

夏休み雨を数える南窓よ

宿題や停滞期圧母の檄

夏疲れ身心休めサスペンス

夏盛り緊急事態録画尽き

夏陰り土留めの花愛らしく

 

 

大竹 和音

切れぎはの外灯まばたく秋の蝶

はいどうぞ幼な子配る落花生

裏山に池みつけたり秋蛍

迎へ盆じいちゃんにこにこ宙にゐて

送り盆「本当だね爺ちゃんいたね」

盆踊り浴衣の女子の大人びて

はたおりひめ多重録音中のクイーン

名画座の客まばらなり天の川

 

 

白石 洋一

貴方は誰と所詮他人の私に義母

すきっ腹にコーヒーのブラック

紫陽花の根元を移植根付きけり

草ぼうぼうの畑を這うカボチャ

エコーに脂肪肝写りやっぱりか

玉ねぎ糠漬けの味を噛みしめる

待合室には人生模様が溢れてる

眉毛が五センチの爺ちゃん横切る

点滴をしながら待つ半ズボン爺

偶然にも蝶の最期を看取った

 

 

刈谷 見南國

自転車の廻る後輪野菊轢く

別れぎは糸瓜に受粉しといてと

曼殊沙華母のラヂオにコードなし

付き添ひはひとりまでです秋夕焼

もみ殻の交じりし風や少年期

秋ついり採血あとの砂時計

軽快車朝刊の束終戦日

ゆらゆらと土の香立ちぬ敗戦忌

うずらの世人の世行き来一遍忌

マン・レイ自伝託して去りぬいなびかり

 

 

石井 温平

大西瓜独りでつつく婿若し

老ひぼれに厚き西瓜の手に余る

山をなす西瓜の皮や三所帯

甦る妻の微笑み西瓜割る

大西瓜さつとたひらぐ甥と姪

 

 

福冨 陽子

秋蝶の動かぬさなぎに雨そそぐ

青瓢すんとも揺れぬ重みかな

闇に咲くひさごの花の話し声

送り盆通用門の閉じる音

カンナ咲く咲けどバツタの群がりし

柚葉尽き幼虫に蜜柑鉢買ふ

秋晴れや柘植剪定の脚押さへ

さだめ来て別れ鴉の鳴き続け

稲妻や夢の続きも地に堕つる

むつまじくオンブバッタの葉の揺れり