三日月の言葉少なや並木往く | 自由俳句 「風薫」(ふうくん)

自由俳句 「風薫」(ふうくん)

宇都宮で自由俳句の会「風薫」を主宰している陽子です。自由な感覚で俳句を詠み合う句会を月に1回開催しています。俳句集もすでに10集集目を刊行しております。

  気づけば秋の虫が鳴く季節になりました。いつだったかヒグラシの大合唱を、それこそ雨降るように聴いた記憶が懐かしいです。最近は蝉時雨に出会う機会がほとんどなくなりました。そういった場所はまだまだあるでしょうけど、なかなか遠出するにも気がひけます。

 今月も緊急事態宣言が出ていますので実際の句会は開催できませんでした。メールでの投句となりました。9月の自由俳句風薫のメンバーの作品です。

 

 

加納 弘志
 

長月の空を見上げて君想う
故郷へ想いを馳せて笑顔でる
星空に願いを託し祈念する


疋田 勇
 

無人駅コスモス乱るる雨の後
車道無事祈りたき秋蛙
稽古場に熱気増したる秋の風


渡辺 健志
 

長雨に負けぬ鴉のゴミ漁り
秋黴雨部屋の布団もしっとりと
部屋照らすプラネタリウム曇天夜


大竹 銀河
 

スタージェンムーンや土産の吊飾り
秋の蝉かくれん坊は終はりだぜ
まなざしの六十秒間山澄めり
父の指す酸素計器は秋の蛍
電話越し虫の鎮まり父の呼気
秋の果実得難し自宅療養は
秋雨の窓より抗原検査の手
花鋏兄の代はりに農家継ぎ
ギター弾き語る虫の音閉め出して
涼新た踏みし眼鏡の傾ぎをり


山 多華子
 

夏の月星探す窓マシン音
洗い髪更なる涼や月青く
病葉に咲き誇るは菊二輪
甘酒と西瓜冷やすは粋な夏
真夏の夜中途覚醒録画観る
暑気払いウイルス猛威独り酒
竹煮草思い激しく青き春
汗拭い甲子園湧く一句一打よ
玉虫の翅美しき箪笥かな
水菓子を冷やさずに喰う今宵なり
蘆茂る高温多湿も涼を呼ぶ
白玉や四季頂き一句有りや
素袷や痛み厭わずお気に入り
友の文現の証拠に初句有り
昼寝覚煩わし中幸有りと

周防酒ぐいと呑んでや獺祭忌


小林 泰子
 

茜色マニキュア映える昼の月
夕暮れのミラー越しの稲穂道
秋の虹まぼろしのように消えてゆく
父と剥く栗の渋皮しぶとくて


大竹 和音
 

疫病の弾に撃たれし厄日かな
愛情は哀しみに似て雨月かな
名月やご祝儀ふんぱつしたりけり

秋の蛾や加賀友禅召し白壁に

電信の温かな文字そばの花


白石 洋一
 

忘れていく脳上手く出来てる
開店前の句作後四分を楽しむ時間
変わらない事に感謝するもツマラナイ
聞き逃しのラジオ聴く深夜
夢に出て来た見知らぬ顔の人
ハウスの中でジワリと汗をかく
寝たまま星の光を捕まえ心逃がす
山頂の携帯局アンテナに群がるカラス
洗濯機脱水の音が徐々に弱くなる
蝉の声虫.は囁き鳥の囀る朝を歩く


刈谷 見南國
 

石鹸の大小ひつく月今宵 
天空を飛びださんとす小望月
ボサノヴァの波形のかろし秋の蝶
休暇明混むスポーツ紙W折
自分ちを屋敷と云える唐辛子
碁会所に饂飩自転車冷えにけり
高知から出る気なゐです秋の暮
どつちです従姉か従妹芋嵐
外厠花野の肥へとなりにけり
百科事典読まんかつたね鳥渡る


石井 温平
 

市役所と競ふ城址や星月夜
母の唄妻の微笑み盆の月
星飛ぶや声掛けし妻想ひ出す
渚てふ初孫の名や月仰ぐ
祝はれし杖のやさしき月の庭


福冨 陽子
 

秋星やまたたき太古の夢の跡
月あかり猫の鼾のこともなし
秋蝶のさなぎ抜け殻朝の雨
秋の陽や日光の過客となり
家康公此処に眠らる苔の道
鳴竜や拍子木のたび震へ鳴く
稲穂垂る田の高きに三日月反り

ビルの間から

宇都宮二荒山神社竹林を望む