季節変わる 風の香変わる | 自由俳句 「風薫」(ふうくん)

自由俳句 「風薫」(ふうくん)

宇都宮で自由俳句の会「風薫」を主宰している陽子です。自由な感覚で俳句を詠み合う句会を月に1回開催しています。俳句集もすでに10集集目を刊行しております。

 9月もすぐそこまでやってきています。みなさん、夏の思い出はいかがですか?

旅行、祭、花火など楽しい記憶は増えたでしょうか。

 8月26日、残暑厳しい日ではありましたが、自由俳句「風薫」句会での作品です。

 

 

■小林泰子

 

秋天に トンボ群がる 中禅寺湖

湯につかりふける思いや 虫の夜

 

 

 

■荒木あかり

 

盆の夜虫の音静かに夏過ぎる

筑波山雲をまといて秋来たる

白き百合 はっとし歩を止む

さやさやと稲穂満ちも我宿題残す

油蝉 都庁の声や田舎に勝ち

 

 

 

■大竹和音

 

熱中症  殺風景なる工業団地

平日じゃん土曜の牛に何故鰻

水庭に蜻蛉のセスナと笹の舟

嵐前赤青絵の具滲む空

蝉ダウン木陰に運ぶ情け人

蝉の飛ぶ錻のやふなぎこちなさ

まだ抜かぬ軒の踊り子猫じゃらし

椋鳥や夕暮れ時に蝉のやふ 

夏まつり会えるはずない(ひと)探す

ラムネ瓶ビー玉鳴りて終わる夏

 

 

 

■大竹銀河

 

薄明かり鈴虫の音 背に受けて

虫籠で鳴くその姿美しく

闇越しにマツムシ見つけ耳すます

秋暑し麦茶のコップ汗かいて

 

(夏の歌)

なぜ()()はミンミンみんな鳴いている

なんなんなんせ空を知るため

 

 

 

■白石洋一

 

腹の立つ神出鬼没な亀の虫

何思う 網戸に張り付くカナブンや

ピーマンの茎にビッシリ名未知虫

紫蘇の葉に 穴を開けたは 何虫ぞ

蜂の音 受粉に感謝の 早い朝

 

 

 

■刈谷吉見

 

命日を忘れしけふも蜻蛉舞ふ

階段を猫と降りてや涼み月

台風や鉢にひつそり蝉骸

四国勢まだ生きてゐる残暑かな

望郷は深すぎるプールと夜ラヂオ

望郷は蚊帳の裾振り入る母

老猫のコピー年鑑にもたれ涼

蟷螂の猫後ずさりする構へかな

大葉穫り持つたまま打つ藪蚊かな

虫になるカフカの狙ひは何でせう

 

 

 

■石井温平

 

隅田川花火や歴史かいま見る

手花火を囲みしゃがみし孫ひ孫

このソファー指定の席や虫今宵

すいっちょやひ孫むすめと堪能す

がちゃがちゃを被ひて深き庭の闇

 

 

 

■福冨陽子

 

宮花火見た人おらぬ秋湿り

厨房にコオロギの居て菜切り置く

鯖二尾の西京漬焼く秋日和

おにやんま秋桜とまりて花揺らし

草の市求む人なく墓地盆花

八ツ橋の土産とともに秋気来る

湧水庵新蕎麦の声や聞こへり

真夜中の半月見たりむかご付く

虫の音の泣きやまぬ夜風去りし

朝顔を見やれぬ心の味気無さ

 

 

 

 

 

                 陽子