降り月や 穂を照らしつつ刈りを待ち | 自由俳句 「風薫」(ふうくん)

自由俳句 「風薫」(ふうくん)

宇都宮で自由俳句の会「風薫」を主宰している陽子です。自由な感覚で俳句を詠み合う句会を月に1回開催しています。俳句集もすでに10集集目を刊行しております。

  台風が来ていますが、9月最後の日曜日、自由俳句「風薫」の句会を開催しました。

  兼題は「秋彼岸」でした。各自詠んだ句を持ちよりましたが、あっというまに仲秋が過ぎ明日からは10月です。立秋、白露と秋は一刻一刻進んでいくのですね。

  北関東の冬は、日光連山や那須連山から冷たい風は吹き降りて、東京からもどると、つい「寒っ!」と言ってしまいます。そんな冬を迎える前に秋を謳歌しておきたいものです。


  句会で読み合った句を紹介します。


 

■小林 泰子

 

十五夜に 母と見上げ 笑い合う
庭の隅ひとつ残り咲く彼岸花

 

■荒木 あかり

 

鈴虫の涼やかな音色に秋深まり

彼岸花 レッドスパイダーリリーの名 合わせ持つ

胡弓の音 タジキスタン広場に溶けゆく
踊り子の揺れる衣やタジキスタン

秋彼岸墓参り後のことは存ぜず

 

■大竹 和音

 

雷光や綾取りのやふに天を這う

落雷やB29の爆撃か

お彼岸やお菓子貰いに廻る子ら

妛あけびとり宝の山の童かな

運動会 親来れども知らんぷり

無花果や大人の女の甘さかな

悪餓鬼の初恋のやふな石榴かな

秋曇りイマジン・スカイいつの間に

金木犀イブという名のガムの味

墨絵空招かざる客台風前

後光さす泥にこそ咲く蓮の花

 

 

■大竹 銀河

 

つるべ落つ街路の雀わななきぬ

彼岸花亡骸埋まる木の根元

暮の間に秋コウモリがちろちろと

赤青黄コウモリ傘は秋の花

日を惜しむ最後の宵ぞ秋彼岸

彼岸入り雨長袖の衣服出す

長月や月影にじむ明日は雨

 

(短歌)

赤くして風に散りたるもみじ葉は心の内を悟られたとか

菊の花人は終わりと思えども終わらじと我ひとり聞くなり

 

 

■白石 洋一

 

仏壇に万寿釈迦の赤二輪
仏壇で枯れた彼岸の花に気がついた
白赤黄色彼岸の花や道飾る
心に空いた穴を彼岸の風が

彼岸の頃に母の夢を見た

 

 

■刈谷 吉見

 

モヒートの蓋固まりて秋の宵

売り切れの多ひ自販機夏の跡

パスワード忘れて不安九月来る

落ちさうに便座ぐらつく九月かな

野分きて雨戸押さへる父の指

秋桜や娘に隠しごとありて

自転車の鍵忘れをり秋桜

彼岸花恋といふこと知りもせぬ

南水噛む抜けてゐる歯を避けて

六年生思ひ出帳持ち彼岸旅

 

 

■石井 温平

 

秋彼岸セピアの写真親二組

秋分の日 亡き妻のバースデー  (昭和7年9月23日生)

生と死のはざま覗けり秋彼岸

古き井戸残る霊園秋彼岸

年恰好似し隣人や秋彼岸

 

 

■福冨 陽子

 

彼岸入り田の道飾る花の赤き

栗剝くも手のまどろこしや秋嵐

仲秋の月雲間に観し宙の凪

冬瓜を二十いただく皮算用

秋茄子の皮厚くなり雨の音

朝顔の実集めし朝の露堕つ

秋虫や月夜に逝きて土となり

夕映えの空コウモリの自由さよ