梅雨の薄曇りの下、鳥は鳴き花は咲いて本格的な夏を迎えようとしています。道端にて足元を見ると小さな草や生き物が生きています。見上げた雲、星の様子も見逃すことのないよう、はじまった夏の句を詠んでいきます。六月十七日(日)、自由俳句「風薫」の句会の作品です。
小林 泰子
トライアルGPエンジン唸り固唾呑む
雨粒に揺れる紫陽花こぼるえみ
荒木あかり
朝の富士 良い予感もらい田んぼ道
梅雨晴れや雲間より光線射す
雨上がり三和土を横切るかたつむり
あじさいやうす紅白のてまりかな
麦秋の刈り取られてや青田広がる
大竹和音
春の市帰りの汽車で漂ひぬ
明日からの仕事忘れて今楽し
春紫苑 名もなき草と呼ばないで
鯉のぼれ滝の壁越え銀の河
軒先の雑草伸びしもまだ摘まぬ
チャリ飛ばし色とりどりの花と会う
白石 洋一
兄弟猫の喧嘩平和な夕暮れ
去る者は追わずと頭では理解できても
心とは何だろうと思う辛さ有り
全ては終わりに向かうんだね
旧友に呼び捨てにされ嬉しい
刈谷 吉見
蜥蜴つかみ甘噛みされて夏来たり
夏の星由里子死してなほ輝く
サクランボ来たり真竹につまづきぬ
台風それて烏山のタケノコ届来る
誕生日プチトマトの赤を見ゆ
誕生日 期限の切れたパン食らふ
石井 温平
橡の花数へ栃木県庁へ
新樹風隣の塔婆こちら向く
万緑の中や五体の躍動す
万緑を映せる妻の遺影かな
紫陽花や行ってらっしゃいお帰りと
父の日や北海わっぱ飯届く
福冨 陽子
更ける夜の星や煌めく花つばき
柿の木や実の赤子つけ南風
夏衣いちまいごとの真竹剝く
山形のさくらんぼ食み雨ながむ
入梅やパセリの花に羽虫飛び
夏掛けを半分被りて蚊の声聞く
茄子漬けの色鮮やかに見とれり
薬膳師 認定書来て肩の荷落つ
工場よりパンの香来てバス停に居る

