いろいろとありてもあるくあきのあさ  | 自由俳句 「風薫」(ふうくん)

自由俳句 「風薫」(ふうくん)

宇都宮で自由俳句の会「風薫」を主宰している陽子です。自由な感覚で俳句を詠み合う句会を月に1回開催しています。俳句集もすでに10集集目を刊行しております。

9月9日の未明から宇都宮市内を流れる川の水量が増し、翌朝のテレビの画面を見て報道で初めて県内の特に鹿沼や小山の被害の大きさに驚きました。俳句会のメンバー宅の一階も浸水してしまいました。自然の脅威ははかり知れません。
 一日もはやく、電気や水道、交通機関などが復旧して日常がもどることを祈ります。
雨後は青空も垣間見ました。元気出していきましょう。

9月12日、風薫定例会を開催しました。ゲストに俳句「あけぼのの会」の石井温平氏をお迎えいたしました。俳句歴五十年の温平先生に来ていただいて改めて気が引き締まりました。


■ 田代 由美子

雷鳴や祭りも気分も打ち消せり

家族のみ静かなお盆また嬉し

立秋のお宮参りや健やかなる

猛暑をも包み込むよにさるすべり

白鷺の黄金稲穂に見え隠れ


■ 刈谷 吉見

夕顔の実ごろごろ運ぶや大地の音

干瓢つくり五十年 人に云はれ甘さ知り

コスモス踏まずブレーキ踏むや駐車場



■ 佐藤 宣明

山椒魚ゆひとはみなかわりもの

朝露の程こそあらめけものみち

見開けば人間の分際がさす

秋雨はガスとかわりて九十九折る

秋霖や乾燥機より甘味とり

コオロギよなにもかんがえずにいたよ


■ 白石 洋一

大雨に 怯える朝は 空を見る

原子力 手に負えないのに 愚かなり

大地揺れ 深夜に不安な 時過ごし

古米を 突く雀や 墓守る

時間だけ 過ぎてくんだな ため息さ


■ 福冨 陽子

夜半なる蝉しぐれ 誰がために鳴く

「七月まで生きる」と言つた父 その通りに逝く

沼原をゆく風になりたし 夏の風邪

「火花」のもたらす笑えぬ可笑しさ

ひとつ終え また次の出だし考える孤独

吉備の道 歩く人生の岐路ありき

ふいに「いい日旅立ち」流る電車待ち

ばさりと消ゆ蝉声の 大雨降る



■ 石井 温平

はらからの気遣い電話夏の風邪     

八月やもうかまだかの七十年