いわし雲、案山子、いちじく、うすばかげろうなどの秋の季語も風情があります。きのこがおいしい秋。しめぢ、初茸、椎茸、松茸などの季語はこの季節特有のものです。
食欲のせめぎあいに結局は負けながらも、今年も秋を堪能したいものです。
10月10日午後。中心街で開催されているイベントのアナウンスが聞こえた気がしながらも、ここはまったりと風薫句会を開催いたしました。今回も俳人・石井温平氏に来ていただきました。
■ 半沢 美恵子
にがお絵の皺なき二人ひとむかし
冷ややかや 足に灸すえ氣をもらう
美術展 銀座に赴き淑女なり
彼岸花の背たけを超えてひとり歩き
酔い醒まし とびら開ければスーパームーン
■ 佐藤 宣明
いずこより子ら遊ぶこえ秋の午後
いわしぐも田に入る親子調査隊
夢あらたなりワタラセツリフネソウ
同窓の転勤ですと秋時雨
ひかりさす秋白砂の月山寺
■ 白石 洋一
一周忌 集まりし人 老いてゆき
夏なんだと 思わせるほどの暑さ
幸せでしたか?と尋ぬまま送る
盆過ぎし 静かなる家 猫の来る
ラジオ消す その静かさに怯えたり
■ 刈谷 吉見
生きてゐる秋の蚊に古本の部屋
純露といふ飴舐めて図書室に
あんた生まれてよかつたかねと母
■ 福冨 陽子
コスモスの花びら散らしつ満開なる
蜘蛛の巣や 傘なく雨に歪みおり
古賀志山 大雨のあと道はなし
柿むくや 夕焼け色をむくとなり
サックスの友とバンドよ 寝待月
ポケットに踊る栃の実 鮫の目玉
真夜中の寝ぼけや食そそり をかしけることなり
■ 石井 温平
曼珠沙華ロードここにも宇都宮
曼珠沙華 下野歳時記に見当らず
爽やかや満艦飾の竿三本
命日の妻のほほ笑み さわやかに
生きてゐること確かめつ虫聴けり
