梅雨の晴れ間に満月が……「見る」「受け取る」「詠む」 | 自由俳句 「風薫」(ふうくん)

自由俳句 「風薫」(ふうくん)

宇都宮で自由俳句の会「風薫」を主宰している陽子です。自由な感覚で俳句を詠み合う句会を月に1回開催しています。俳句集もすでに10集集目を刊行しております。

人と会えば「よく降りますね」が当たり前のあいさつになっているこの頃、本当によく降りますね。
 雨の中、植えられたばかりの稲苗は清々しく田に並んでいるように見えます。
 私たちが住んでいるこのあたりでは麦の二期作畑もよく見かけます。この雨でまだ刈られていないところもありますが、本来なら今頃が刈り取り作業の忙しい時期。また、麦畑と稲田が隣接している場所はその絶妙なコントラストが風景を彩り不思議な感覚にもなります。秋と春が混在しているような感じです。
 天気がよければ黄金色に輝く麦の田や青々とした稲田を眺めると、見ているこちらまで豊かな気持ちになります。


6月14日の句会の作品です▼

■ 大倉美和

朱の橋を渡る花嫁 青葉風        ※日光の神橋で結婚式の列に遭遇

真夜中の鏡の皺に父の居り

一斉にエンジンかけし梅雨晴れ間    ※麦を刈った後の田に待機する耕運機


■ 田代 由美子

桐の花 しょうしゃな家の屋根に越えり

ようこそと てるてる坊主 鎮座する

梅雨晴れ間ことりよ華よ娘(こ)は嫁ぐ

あじさいの菓子折抱え急ぐ家路(いえ)  ※季節のねりきりの生菓子

軽やかに赤い風鈴 雀舞う


■ 白石 洋一

手を添える太れやキュウリ夏に向け

この水が米を実らせ人生かす

ジャガイモの葉茂りており根付き待つ

紫のジャガイモの花 しとやかに

笹の葉や舞う風景に桜見る

雨降れば 野鳥は何処に 帰るやら

雪に倒れたナンテンや 夏の力を取り戻し

時報の音とカッコウが合奏する雨の朝


■ 小林 祐子

母とふたり ただ音のなき雨を見る

草いきれ 庭一面まどろむ午後

あじさいに驚かされり馴れた道


■ 佐藤 宣明

坂田稲荷路地抜ける 黒塀坂は 定家葛と吸い葛

花エゴの滝の如しに打たれおり      ※エゴノキ

枯萱を出でて黒実が遅春告ぐ       ※黒実の鶯神楽(ハスカップ・戦場ヶ原)

緑陰のモッコク一枝 咲き足りし朝

ネクタイを外して寂しクールビズ

梅雨入りや 憂い入りしや 蟻の入り


■ 金子 泰夫

梅雨の街 ビニール傘の花開き

ヤマユリのつぼみ十一揃うなり

朝顔の双葉や開く雨に向け


■ 刈谷 吉見

紅い傘 取りに戻るや梅雨晴れ間

味海苔を同時に買いし梅雨晴れ間

深刻な電話す木陰蚊に刺さる

長雨やコートジボアールは雨乞いか

短き夜 麻婆茄子作るもらしからぬ

ツェッペリン レインソングをリピートす


■ 福冨 陽子

満月の出でし梅雨の間 鳥の声

暮れなずむバス停にある赤い傘

酸素吸う父の刈りたる若竹重し

調理場の婦ら楽しげに怒られつつ

あじさいの花の重たさ 走り梅雨

カッコウの声聞こゆ 支度の手を止めり

大ごとの夢に疲れり ヤマボウシ