かつて「何もたさない、何もひかない」というお酒のコピーがありましたが、エアコンが稼働しなくていい、何もしなくていい季節、あたりまえなのかもしれませんがありがたく感じます。
■ 大倉 美和
夕立ち去れば燕腹見せ空眺む
伽羅色の蕗思い出す若き日々
麦の田を染めし夕焼け雲雀鳴く
巨石かと見れば猪現われり
■ 田代 由美子
五月雨を静かに聴けりおうちカフェ
薫る風 ベンチに座りし花畑
筒に入る猫三匹に西日落つ
■ 半沢 美恵子
穏やかに姑と語らう昭和の日
コンビニで落雁求めケアハウス
母訪ね三人よりてかしわもち
小砂や孫待ち泳ぐこいのぼり
三年へだてようやく食す筍飯
■ 斉藤 乃亜
新緑の明日へ輝き一歩なる
雨の音 楽しむ時間の愛しさ
君の香に甘い思い出たゆたう心
日常や 特別楽しい君となら
■ 小林 祐子
鯉のぼり子どもの歓声懐かしき
田植え後 仰ぐや空に鯉のぼり
若葉なる天に昇らん鯉のぼり
鮎姿 今年は鯉の道の駅 ※茂木
ベランダの小さき鯉は今いずこ
■ 白石 洋一
桜散る花弁は雪のように舞う
一欠片の 桜の花びら 露天風呂
昼風呂は 影と一緒に 足伸ばし
小雨降る 傘さすまでも 無い日和
皮むきて 親指残る フキのアク
酔った頭で575も浮かばないよね
雨音は ガラス越しに聞こえてくる
きいろあか チューリップの咲き乱れる
窓灯り四十年前も変わらない
■ 金子 泰夫
巣立ちした雛待つ空は五月晴れ ※シジュウカラ発つ
■ 刈谷 吉見
五月晴れウメの毛 銀に舞ふを見ゆ ※猫
五月晴れウメコの尻尾揺れてをり
五月晴れベッドの下の靴下よ
丸一年 若葉マークはそのままに 未練は未だ練れずといふなり
■ 佐藤 宣明
城跡は 青葉となりて 鳥のみぞ来ゆ
白八汐 戊辰の道の 夢がたり
青嵐 楓やトンボに化して舞い
音競い 田植え機動く今朝のあり
学生の声遠くなりて風ぞ囁く治良門橋駅(じろえんばしえき)
※群馬県太田市 桐生線
西金砂山ゆ 火山角礫岩に織り成す営みありて 神々の頂
(参考)常陸太田市 ・西金砂山(にしかなさやま)
■ 石井 温平
新茶淹れ佛の妻の頷けり
■ 福冨 陽子
老猫の甘えしぐさや風薫る
エンドウの実やふくれ蟻忙し
登校の子 花壇壊すも天高し
赤や白 栃の木の花 束の間に咲く
信号に止まり窓より蛙歌
石ごろも生菓子溶かすや石心 ※宇都宮市大寛・香月堂
