皐月や皐月 もういくの | 自由俳句 「風薫」(ふうくん)

自由俳句 「風薫」(ふうくん)

宇都宮で自由俳句の会「風薫」を主宰している陽子です。自由な感覚で俳句を詠み合う句会を月に1回開催しています。俳句集もすでに10集集目を刊行しております。

5月24日、今月2度目の句会でした。風が気持ちいいですね。あっけらかんとしていいですね。
かつて「何もたさない、何もひかない」というお酒のコピーがありましたが、エアコンが稼働しなくていい、何もしなくていい季節、あたりまえなのかもしれませんがありがたく感じます。

■ 大倉 美和

夕立ち去れば燕腹見せ空眺む

伽羅色の蕗思い出す若き日々

麦の田を染めし夕焼け雲雀鳴く

巨石かと見れば猪現われり


■ 田代 由美子

五月雨を静かに聴けりおうちカフェ

薫る風 ベンチに座りし花畑

筒に入る猫三匹に西日落つ


■ 半沢 美恵子

穏やかに姑と語らう昭和の日

コンビニで落雁求めケアハウス

母訪ね三人よりてかしわもち

小砂や孫待ち泳ぐこいのぼり

三年へだてようやく食す筍飯


■ 斉藤 乃亜

新緑の明日へ輝き一歩なる

雨の音 楽しむ時間の愛しさ

君の香に甘い思い出たゆたう心

日常や 特別楽しい君となら


■ 小林 祐子

鯉のぼり子どもの歓声懐かしき

田植え後 仰ぐや空に鯉のぼり

若葉なる天に昇らん鯉のぼり

鮎姿 今年は鯉の道の駅   ※茂木

ベランダの小さき鯉は今いずこ


■ 白石 洋一

桜散る花弁は雪のように舞う

一欠片の 桜の花びら 露天風呂

昼風呂は 影と一緒に 足伸ばし

小雨降る 傘さすまでも 無い日和

皮むきて 親指残る フキのアク

酔った頭で575も浮かばないよね

雨音は ガラス越しに聞こえてくる

きいろあか チューリップの咲き乱れる

窓灯り四十年前も変わらない


■ 金子 泰夫

巣立ちした雛待つ空は五月晴れ   ※シジュウカラ発つ


■ 刈谷 吉見

五月晴れウメの毛 銀に舞ふを見ゆ   ※猫

五月晴れウメコの尻尾揺れてをり

五月晴れベッドの下の靴下よ

丸一年 若葉マークはそのままに 未練は未だ練れずといふなり


■ 佐藤 宣明

城跡は 青葉となりて 鳥のみぞ来ゆ    

白八汐 戊辰の道の 夢がたり

青嵐 楓やトンボに化して舞い  

音競い 田植え機動く今朝のあり

学生の声遠くなりて風ぞ囁く治良門橋駅(じろえんばしえき)   
※群馬県太田市 桐生線

西金砂山ゆ 火山角礫岩に織り成す営みありて 神々の頂
(参考)常陸太田市 ・西金砂山(にしかなさやま)


■ 石井 温平

新茶淹れ佛の妻の頷けり


■ 福冨 陽子

老猫の甘えしぐさや風薫る

エンドウの実やふくれ蟻忙し

登校の子 花壇壊すも天高し

赤や白 栃の木の花 束の間に咲く

信号に止まり窓より蛙歌

石ごろも生菓子溶かすや石心     ※宇都宮市大寛・香月堂