”別名”は意外と知られていない場合も多々あるのですが、今日の花は何でしょう?
・・・って、この下の画像を見れば、一目瞭然ですわよねえ (爆
こんにちは、本日の季語は「雪中花」(せっちゅうか/せつちゅうか)・・・冬の季語です。
ズバリ「水仙」のことですね。他には「水仙花」(すいせんか)、「野水仙」とも。
ヒガンバナ科の多年草で水辺や海岸近くに自生していたり、切り花として栽培されています。
(ちなみに、春に咲く大型のラッパ水仙/黄水仙 は春の季語になります)
白緑色を帯びた細長い葉の間からすうっと花茎を伸ばし、小さな芳香のある花を咲かせる姿は、
冬の終わり頃から庭や公園などで目にすることも多いでしょう。一見して地味な花ではありますが、
うつむきがちに咲く小さな花は清楚で立ち姿も美しく、一輪だけでもサマになる花だと思うなあ。
※2013.1.14 水仙 ( ^ー゜)σ 水仙の一輪ゆへに尊けり
大群落が見られるので、日本古来の植物と思われがちで、姿もいかにも和風のたたずまいですが、
元々は地中海沿岸生まれの植物です。平安の頃、中国経由で伝来して根付き野生化したようです。
(それ以前、例えば『万葉集』などには水仙の歌はありません)漢名を「水仙華」、和名を「雪の華」
として収録され、漢名を音読みした「すいせんか」そして、更に訛って「すいせん」と・・・。
この漢名の「水仙華」は中国の故事に「 仙人は、天にあるを天仙、地にあるを地仙、水にあるを
水仙 」というのに因んだとか。つまり、水に住む仙女に例えられたってことかな?
思わず、このシーンを思い出してしまいました ↓
後に『本草綱目』に「この物は痺濕の場所が適し、必ず水が無ければならぬ物だから水仙と名づける」
云々とあります。「雪中華」は雪の中でも花を咲かせることから付いた名前でしょうね。
江戸時代後期の歌人は雪の中で咲く香り高い水仙をこう詠みました。
ふりかくす雪うちはらひ仙人(やまびと)の名もかぐはしき花を見るかな 千種有功
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うつむきがちに、控えめな様子で咲く水仙の花ではありますが、所変われば品変わる通りに(?)
このスタイルが全然別の姿に映るような感性も・・・水鏡に映る自分の姿を見てはウットリと・・
【カラヴァッジオによって描かれたナルキッソスの一部/加工してあります】
水仙の学名は「ナルシサス」・・・これはギリシア神話に登場する美少年の名前です。
キューピッドの悪戯で、池に映る自分自身に恋してしまい、毎日池に向かって恋心を訴えたとて
所詮は水に映った自分自身であり、彼の恋はかなえられませんでした。
身を滅ぼした彼のいた池の縁に咲いた美しい花、人々は彼を憐れみその花をナルシサスと呼ぶ
ようになりました。水仙がいつも俯き加減に咲いているのは、池を覗き込んでいた彼の姿だとか・・・。
【Narcissus spurning Echo and falling in love with himself Art: John William Waterhouse】
うつむき加減で水辺に咲く水仙の姿は、見ようによっては、水に映る自分の姿に見とれていると
見えないこともないけれど・・・そして、この神話からつけられた水仙の花言葉が「自己愛」・・・
ナルシストとか、ナルシシズムという言葉はお馴染みですよね。(あまり良いイメージはないケド)
うーむ、同じ花でも西洋と東洋の感性の違いは大きいですね。これも文化の違いと言えるのでしょ
うか。私自身は、水仙の花を見ても、”水に映る自分の姿に見とれている”という発想は無いなあ?
むしろ、水仙に感じるのは凛々しさと強さ・・・ほっそりとした姿でありながらも寒風の中で雪の
中でも凛として立つ姿の美しさ、でしょうか。控えめに、ややうつむきがちながらも愛らしい花を
咲かせ、芳香を放つ気品のある花です。
古くから日本に根付き、愛されてきた花でありながらも、和歌の世界では何故か人気がイマイチ
だったのですが、(和歌に於ける”早春の花”のスターは梅でした)江戸時代になり、俳諧が盛んに
なると、厳寒の中でも咲き誇る清楚な姿が多くの俳人の心をとらえたのでしょう。
決して華やかではないのだけれど、咲いているだけでその場所の空気が清冽に澄むような・・・
そんな清潔感もある花だと思います。様々な花が咲き乱れようとも、私は私でここに咲くのよ!
そんな静かな意志と主張を感じさせるのが水仙の花・・・。
今日の句は、そんな水仙の印象を詠んでみました。
ちなみに、こんな清楚な様子をしていても、彼岸花同様に水仙はかなりの毒を持つ植物でもあり
ます。全草に、特に鱗茎(地下茎)の毒成分が多いとか・・・また、細長い葉は野菜のニラとよく似
いるため、稀に誤食されることも・・・ ヒエー! Σ(- -;;ノ)ノ ヤメテクレー!
ただ、ニラやネギには独特の香りがあるので分かるとは思うのですが。まあ、気を付けましょうね。
それでは、今日はこの辺で・・・またね。
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