本日の My短歌 [ 病床で無実を叫ぶ老爺には春の扉の固く閉ざされ ] | 俳句でDiary ─ できるかな?

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このブログは俳句をテーマとしているので、基本的にはニュースは扱わないのですが・・・

3月27日静岡地裁で「袴田事件」(1966年)の再審(裁判のやり直し)が決定しました。

それに伴い、袴田巌氏が拘置の停止を言い渡され、東京拘置所から釈放されました。


マスメディアで大々的に報道されたのであなたも御覧になったことでしょう。


本日のMy短歌はこの袴田氏のこと? 釈放が認められたのに、春の扉の閉ざされて・・・?

いいえ、袴田氏のことではありません。もうひとつ・・・重大な冤罪事件を忘れたくはありません。


奥西勝氏TOP

事件発生から52年、死刑判決を言い渡された後も無実を訴え続けて、現在は八王子医療刑務所に

入院中の奥西勝氏・・・法的には”死刑囚”と呼ばれる立場ですが、敢えて”氏”と呼びましょう。

そう、1961年(昭和36年)3月28日の夜に起きた「名張毒ぶどう酒事件」です。



三重県名張市の小さな村落・葛尾地区の公民館で起きた「名張毒ぶどう酒事件」・・・

どれ程の方が興味・関心を持っているのか私には判断がつかないのですが、この奥西氏については

ブログをスタートした当初に、危篤状態に陥ったと報道された事もあり、句には詠んでみました。

※2013年 7/6 梅雨雲  ( ^ー゜)σ  梅雨雲や冤罪さけぶ老爺あり

名張市葛尾地区

【名張市葛尾地区】



閉ざされた村の集落で、関係者も限られた中で起きた殺人事件・・・出席したのは生活改善クラブ

のメンバー32名。その内、5名の方が死亡し12名の方が毒物による中毒症状を起こした事件・・・

犯人として逮捕され、今も冤罪を訴え再審を求め続けているのが奥西勝氏です。現在88歳

老人になった奥西氏



この事件では奥西氏の奥様と、そして愛人関係にあった女性が犠牲になりました。

以下は、この事件についての概要・疑問点など記しますので興味のある方はお読み下さいね。


えっ?何故こんな事件に関心を持つかですって? 理由は簡単です。いつ何時自分の身に

降りかかるか分からないからですよ。何も悪い事をしていないのに犯人にされちゃう事って・・

・・・あるんじゃない? でもでも、裁判できちんと自分の無罪が証明されるのではないの

さあねえ、それはどうでしょうか。 え? 正義は1つ、ですって?

そう思うのは・・・多分、あなたが善人である証拠なんでしょうけれどもね・・・。


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< 事件の概要 >

昭和39年3月28日の夜のことです。地元の公民館で生活改善クラブの懇親会が行われました。

出席者は32名、ここで仕出し料理と 男性には日本酒を女性にはぶどう酒がふるまわれましたが、

このぶどう酒を呑んだ女性たちが突然苦しみ始めたのです。医者が呼ばれ手当てを受けましたが

その甲斐も無く5人が死亡し、12名が中毒症状を起こして入院・・・

倒れた村人たち



当初は食中毒を疑われましたが、その形跡は無く、検査の結果女性達が呑んだぶどう酒から

農薬が検出
されました。死因は明らかに農薬中毒によるものとされました。



誰かがこのぶどう酒に農薬を入れた? ぶどう酒の工場等も調べられましたが同時期に出荷された

物に異常は全く認められませんでした。 静かな農村を襲った突然の大量殺人事件・・・

ぶどう酒一升瓶



関係者は限られていますよね? このぶどう酒を購入し公民館に運んだのは誰でしょう?

警察は、この村の中に犯人がいると考え、事件当日ぶどう酒(一升瓶入り)の購入&搬入に関与

三人の男性を重要参考人として取り調べました。(一週間後に奥西氏の犯行と断定。)


全員が否認しましたが、その中で奥西氏は死亡した女性の中に妻と、未亡人だった愛人がいた為

三角関係の清算」という動機が有るとされ、厳しい追求を受け、この尋問に耐え切れずその場を

逃れたい為に嘘の自白をしてしまいます


逮捕時



妻と愛人を殺すために、公民館で一人になった時に 家から竹筒に入れて持参して来た

農薬ニッカリンを混入しました。
」と・・・そして、4月24日に起訴されました。


< 経 過 >

1961年6月16日から、津地方裁判所にて公判が始まり、ここで奥西氏は犯行を全面的に否定します

そうして、1964年12月23日に無罪判決が下されます。


ここでは、王冠の傷が奥西氏の歯形とは断定できないし、毒物混入の機会は他の人にもあった。

また、自白が信憑性に欠け、動機も納得できない、と・・・。

疑わしきは・・・

【↑被告人が罪を犯したか否か、証明に疑問の余地がある場合裁判官は無罪を言い渡さなければならない】



しかし、検察側はこの判決に納得せず控訴、一審と同じ証拠状況で、1969年の名古屋高裁(二審)

では、逮捕当時の自白が正しいとされ真逆の死刑判決が下されました。 逆転死刑です。


そうして、1972年、最高裁は上告を棄却、ここで死刑が確定します。

翌年から再審(裁判のやり直し)請求を行いますが、1973年~2002年まで7回にも渡る請求が

すべて棄却されます。


そうして、2005年、毒物に関する決定的な新たなる証拠を元にして名古屋高裁が再審開始を決定!

ところが、検察側が即座に異議を申し立て、
翌年の2006年、再審開始決定が取り消されることに・・・



2007年には最高裁へ特別抗告。(もう一度裁判をやり直しできるようにして欲しいと頼むこと)

最高裁は2010年に、この毒物に関して「推論過程に誤りがある可能性が有る」として

名古屋高裁の決定を破棄して、審理を名古屋高裁に差し戻しました。

差し戻し? 何故最高裁で再審決定をしてくれなかったのでしょうか。私には分かりません。


さて、差し戻された名古屋高裁は、2012年に以前と同じく「捜査段階での被告人の自白が信用でき

る」
として、再審開始の決定を取り消し。つまり、裁判のやり直しはしないよ、と決定。

疑わしきは・・・

【↑ホンマかいな?】



で、弁護側は改めて最高裁に特別抗告を・・・。

2013年、最高裁は名古屋高裁の決定を支持して、検察側の異議申し立てを認めました。

つまり、再審は認めません、ダメよ、という事ですね。


この後、弁護団が改めて名古屋高裁に対して第8次の再審請求を申し立て、現在に至る・・・と。

もうね、読んでいて嫌になったでしょ? 同じ事を繰り返すばかりで・・・


そう、死刑判決が一度確定するとなかなか覆すことは出来ないんですよね。

再審すら受け付けてもらえないのが現状です。


< 疑 問 点 >

さて、奥西氏の自白の件ですが・・・ここで大切なことがひとつ有ります。

日本の刑事裁判では、犯人とされる証拠が自白のみの場合、有罪とすることは出来ません

つまり、物的証拠が必要なんですよね。


この事件では、奥西氏がぶどう酒のビンに農薬を入れているのを見た目撃者は存在しません

犯行に使用したと言う農薬のビンは名張川に捨てたと自白しましたが、このビンは見つからず。

名張川

【名張川:市街地に近い所ですが】



家から入れて持ってきたという竹筒は公民館の囲炉裏で燃やした、との事ですが、この灰からも

農薬も竹筒の燃えカスも検出されませんでした



また、ぶどう酒の一升瓶は王冠で蓋がされていて、この王冠を歯で開けたと自白していますが

王冠についた傷が奥西氏の歯型と一致するか鑑定に出され、これが検察の主張する唯一の物的証

拠?とされたものの、後に顕微鏡写真の倍率による不正と判明、また三次元的に測定すると両者は

全く別物であると鑑定
されました。何とこれが第5次の再審請求のときですよ。

王冠の傷跡鑑定

【王冠の三次元傷跡鑑定:両者が全くの別の傷跡というのが分かります】



また、弁護側の執念が実ったというべき新事実についてですが・・・犯行当時、混入された毒物は

当時よく使われていたニッカリンという農薬だと、衛生研究所が分析しました。


しかし、当時のデータを見ると、このニッカリンと飲み残しのぶどう酒中の成分が微妙に違う・・

この農薬開発研究者の意見も参考にしながら、日本国内で新品同様の状態で保存されていた

問題のニッカリンを新たに最新機器で分析してみると・・・

ニッカリン



何とまあ、凶器として使われた農薬はニッカリンとは別物と判断されたのです。

それならば、「ニッカリンを入れました」という奥西氏の自白は何だったの?


まず、ニッカリンという農薬だと判断され、その結果に合わせて自白が誘導されたと考えても

おかしくはないですよね?


検察側や名古屋高裁が錦の御旗として「信用して間違いない!」とされる奥西氏の自白その

ものが覆される事になるんですが・・・


他にもいろいろと疑わしいことがあります。ある日を境にして、村人たちがいっせいに証言を

ひるがえし、同じ時刻を証言したとか・・・何らかの誘導があったとも考えられますしね。

つまり、最初に「結果」を作り、それに合わせて自白を誘導していったとも考えられるよね。


35歳で逮捕された奥西氏は、2014年現在88歳・・・何度も危篤状態に陥りながらも 再審を

訴え続けておられます。

(この事件の真犯人については、かなり無責任な噂レベルではありますが、ある男性の名前も

上げられています。正誤の判断材料となる情報が曖昧なので、敢えてここでは言及しません)


さくら2



再審への扉は現在も閉じられたままです。逮捕以来、世の中では何度も春が来ましたけれど

本当の意味で奥西氏に春が来ることはあるのでしょうか。


もう・・・あの方には残された時間が・・・と考えると胸が痛みます。

今日は、余りにも長くなったので、この辺でストップしますが、なぜこうした冤罪が生まれたのか

なぜ、やってもいないのに「自白」してしまうのか、お話できる機会もあるでしょうね。

最後まで読んで下さって本当にありがとうございました。

この事件に関心を持つものとして、あなたに心から感謝いたします。