朝、スマートフォンを開いて、スンリは自分のうっかりに気が付いた。
夜と朝、ジヨンのインスタグラムが更新されている。
昨日は仕事のあと、マネージャーたちと食事をして、そのまま眠ってしまっていたから、全く気が付かなかった。
(昨日はちゃんと早く帰って、朝も起きれたみたいだな。良かった)
自分も近況を報告しなくてはと、スンリはフォルダから画像を選ぶ。
(これでよし、と)
いつの頃からだろう。二人は、インスタグラムなどのSNSを通して、お互いの近況を報告しあうようになった。初めは、関係が上手くいってなかった頃の名残だったような気がする。直接は聞けないし、言えないので、ファンに向けて発信するふりをしながら、遠回しにメッセージを送りあうようになった。
最近のジヨンは、帰宅した時と、朝出掛ける時に投稿してくれることが多い。スンリは海外にいて、傍にいれないことが多いから、ジヨンがきちんと帰宅して、きちんと目を覚まして仕事に行ったのが確認出来るとほっとする。ジヨンは熱中し過ぎると寝食も忘れてスタジオにこもってしまうし、朝も弱いから、色々と心配なのだ。
スンリは、飛行機に乗る前や降りた後に投稿することが多い。これから移動するよ、無事に着いたよという合図だ。
別に、直接メッセージを送りあってもいいのだが、お互い忙しくて、いつ見れるかわからないし、返事がないと余計にそわそわしてしまう。
不特定多数に向けて発信されたSNSでお互いの近況を確認するくらいが、二人のスタイルにはあっていた。
「ヒョン、いないの?」
帰国したスンリは、一旦自宅に荷物を置いて、汗を流してから、ジヨンのセカンドハウスに移動した。部屋は暗く、ジヨンの姿は見当たらない。今日も飛行機に乗る前にインスタグラムを更新してきたから、もしそれを見る時間があるのなら、スンリが帰ってきたことには気付いているはずである。いないということは、きっとまだ仕事中なのだろう。
そんなことを考えていると、案の定、ジヨンのインスタグラムが更新された。
(まだ帰れないってことかな。頑張ってるな)
スンリは、とりあえずこのままセカンドハウスで待つことにした。終わったらきっとジヨンもこちらに来るだろう。会えないなら会えないで、別に構わない。朝までここで休んで、次の仕事に向かうだけだ。
きちんと約束して会うのもいいし、勿論、そんな夜もあるのだが、お互いに忙しい時は、敢えて「待っているよ」とは伝えない。会えるか会えないかわからないまま、宛てもなく待つのも、楽しいものだ。
(少しでも会えるといいな。でも、無理しないでね、ヒョン)
心の中でそう願いながら、スンリは一人、ジヨンの広いベッドで眠りについた。