約2年ぶりに更新してみる。気分的にはいま流行のリボーンといったところだ。2年という時間はどれほどのものだろうか、保育園に入園したての息子が小学校へ入学するほどの歳月・・・。サボったなぁと自分では思うが、一般的にはやめたと言うのだろう、きっと。


感慨に耽っている父に向って息子が言う。「弟が欲しいんだけど」と。それはあまりにも突然で唐突で突拍子もなく放たれた言葉という矢じり。息子よ、父さん開いた口が塞がらないじゃないか。お前になんと説明したらいいのか、もしお前に弟が出来るとしたら、それは父さんと母さんでつくる訳だが、そのなんだ、父さんちょっとムリな感じだ。


思案に思案を重ね息子に提案をしてみる。「父さんがお前の弟になろうかな?」と。父の言葉が終わるのを待って、息子の目はカッッッと見開かれる。そして無言のまま父に背を向け、無言のまま手袋をはめる。無言のままブーツをはき、無言のまま家を出ていく。


おいおいと息子を追いかけると、息子は駐車場の雪をせっせと集め始めた。なんだ雪遊びかとホッ胸をなでおろしながらしばし雪遊びを観覧する。それから1時間がたち、2時間がたち、3時間がたつが一向に雪遊びが終わる気配を見せない。寒さに耐えかねて30分ほど暖をとりに部屋へ帰る。


再び駐車場に出てみると、そこには小さな小さな「かまくら」があって、傍らには息子が誇らしげにたっている。おぉ、すごいじゃないか。お前一人でこんな立派なものを作れるんだねと声をかける。しかし目を見開いたままの息子は、そこに父など存在しないかの如く横をすり抜け家の中へと入っていく。


そしてポテトチップスを片手に家から出てきた息子は、出来たての「かまくら」へともぐりこみ、バリバリとポテトチップスを食べ始めた。そうかわかった、お前それは家出だな?家出のつもりなんだな?しかし父さんから言わせればそれは引き籠りだ。家出ならせめて敷地から外に出なさい。父の説教を聞き流し、家出先からまた家へと向かう息子。今度はコーラを持って出てきた。


息子よ、なんて便利な家出なんだ。家は食糧庫じゃないんだぞ、それに一回で用事が済まないなんてお前段取り悪いんじゃないか? こんな寒空の下、しかも「かまくら」の中でコーラだなんてお前は誰ににたんだっっ! 母さんだな。さあ、いつまでもスネていないでそろそろ家へ入ろう、カゼをひいてしまうよ。しかし説得に全く耳を貸そうとしない息子。


父さんがお前の弟になると言った事がそんなに気に入らなかったのかい?一縷の望みをたくしもう一度息子に提案してみる。「お前が父さんのお兄ちゃんになればいいじゃないか」と言い方を変えてみた。息子、一瞬喜ぶ、何かに気づき動きが止まる、中途半端な笑顔で首をかしげたまま動かない、全力で考えている模様、少々顔が曇る、気づき始める。


こうなったら奥の手を使うしかない。息子よ、トイザラスへ行こうじゃないか。そのフレーズに思考が完全リセットされる息子。カッッッと目を見開き、中途半端な笑顔で首をかしげたままの息子はいち早く車に乗り込み、早く車を出せとばかりにこちらへ目くばせをしている。


息子よ、お前このままだと簡単に騙される大人になってしまうよ。お金と自分以外何も信じない母さんを少し見習いなさい。でも父さんはお前のそういうゆるさキライじゃないぞ。

息子よ、お前が手に持っているそれは何だい? クッキーかい? クッキーだね? いいもの持ってるじゃないか、父さんに1枚よこしなさい。


お? 息子よ、お前いま父さんに渡す前にひとくちかじったな? ひとくちかじったクッキーを父さんによこしたな? ・・・・まあいいか。いちおうお礼を言っておくよ。


息子よ、今度は何を食べているんだい? ラムネかい? ラムネだね? そーか、そーか。父さんに一粒よこしなさい。


むむっ!? 息子よ、お前いまなめたな? 父さんに渡す前にペロッとなめたな? なに? なめてないだと? こんなにラムネが濡れているじゃないかっっ! ま、まあいい、もらった事にはかわりはない。とりあえずお礼を言っておく。


息子よ、またしても何か食べているな? アイスじゃないか。やっぱり暑い日はアイスに限るよね。父さんにひとくち食べさせなさい。


ほっほー。 息子よ、お前いまアイスを全部口の中に入れたな? 無理矢理口の中に押し込んだな? なに? そんな事はしていないだと? 父さん見たぞ!! お前の口からアイスの棒だけ出ている瞬間をこの目でみたぞっ!!


ってゆーかお前ぜんぶ父さんの目の前でしているじゃないかっ!! 父さんもういらない。そんなずぶ濡れアイスなんかいらない。


息子よ、なぜなんだ・・・。

息子よ、保育園の先生から聞いたぞ。父の日のプレゼントに父さんの似顔絵を描いてくれたんだって? もしかしてお前が大事そうに抱えているソレか? それがそうなのか? どーなんだ? そーなのか? え? どーなんだよ。


とにかく見せなさい、いいから見せなさい、早く父さんにみせなさいって。と、息子の抱える絵を奪い取り、天高く掲げながら仰ぎ見る。


こ、これは・・・・ ちゃんと目だってわかる・・・ 素敵なくちびるもある・・・ 去年はなかった鼻もついてる・・・ 息子よ、お前天才だな。


こんな衝撃父さんはじめてだ!! これはどういった派に属するんだ? 印象派か? 父さん印象派がどんな派なんだか知らないが言葉だけは知ってるんだ。


まあそんなことはどーだっていい。ありがとうー息子! ありがとー息子! 父さんこれを一生大事にするよ! さっそく通販で額縁かうよっ!


その前に聞かせておくれ! お前の口から聞かせておくれ! これは誰を描いたんだい? このナイスガイは誰なんだい? ん? よくきこえないぞ! ハッキリいっておくれ! さあいっておくれっ!!


カエル? おや? カエルってなんだい? 父さん今カエルってきこえたぞ。息子よ、お前の口の中にギッチリ詰まっているその幼児用エビせんを早く飲み込んでもう一度言うんだ。


ん? なんだい? カエルかい? そうかい、やっぱりカエルかい。保育園の先生にお父さんの似顔絵を描きましょうって言われなかったかい?


うんうん、言われたんだ、言われたんだね。そうだよね、父の日のプレゼントだもん。そりゃ先生だってお父さんの似顔絵描こうって言うよね。それなのにお前はカエルを描いたんだ。そーなんだ、そーなんだ。


おー のー