「先生と呼ばれるほどの馬鹿でなし」 | はぐれ国語教師純情派~その華麗なる毎日~

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国語教師は生徒に国語を教えるだけではいけない。教えた国語が通用する社会づくりをしなければ無責任。そう考える「はぐれ国語教師純情派」の私は、今日もおかしな日本語に立ち向かうのだ。

 太宰治の「風の便り」という作品には次のような箇所があります。

 

   向こうの人が、ほんのちょっとでも計算して、意志を用いて、先生と呼びかけた場合に

  は、すぐに感じて、その人から遠く突き離されたような、やり切れない気が致します。「先

  生と言われる程の」という諺は、なんという、いやな言葉でしょう。

 

「先生と言われる程の馬鹿でなし」

 

 この川柳がいつ読まれたものかは知りませんが、人をむやみに先生呼ばわりする風潮や、呼ばれて得意になっている人への批判を込めて言う際に用いられます。

 

 広辞苑で「先生」を調べてみました。

 

① 学問や技術・芸能を教える人。特に、学校の教師。また、自分が教えを受けている人。

② 教師・師匠・医師・代議士など学識のある人や指導的立場にある人を敬っていう語。呼びか

 けるときなどに代名詞的に、また人名に付けて敬称としても用いる。

③ 親しみやからかいの意を含めて他人をよぶこと。

➃ 自分より先に生まれた人。年長者。

 

 さらに、「先生」と呼ばれる職業を調べてみました。

 

 教員、保育士、学童保育の職員、予備校講師、塾講師、家庭教師、医師、歯科医師、薬剤師、獣医師、心理カウンセラー、栄養士、管理栄養士、小説家、漫画家、画家、評論家、写真家、映画監督、歌人、俳人、作詞家、国会議員、地方議員、議員候補(候補になった段階で先生となる)、弁護士、税理士、労務士、不動産鑑定士、弁理士、土地家屋調査士、会計士、司法書士、労働安全コンサルタント、労働衛生コンサルタント、美容院、理容店、エステティックサロンの店主、スポーツインストラクター、占い師、茶道師範、華道家、日本舞踊家、作曲家、編曲家、箏曲師範、三味線師範、浪曲師、指揮者、囲碁棋士、将棋棋士、柔道家、柔術家、剣道家、空手家、合気道家、用心棒……

 

 まだまだいっぱいありそうです。日本人は、「先生」と読んだり呼ばれたりするのがよほど好きなのでしょうか? 先生と呼ばれて漫然と返事をしている自分の戒めとなりました。