同じものなのに複数の標記の仕方があるものがあります。調べてみると、そこには実は微妙な違いがあったり、まったく同じだったりもします。今日は、そんなことを話題にしてみたいと思います。
まず「おすし」についてですが「おすし」には大きく「鮓」「鮨」「寿司」の三種類の標記の仕方があります。中国では、「おすし」は古く2000年前以上もから食べられていたそうです。それが日本に伝わってきたわけですが、その当時の「おすし」は「鮓」で、これは川魚を塩と米で発酵させた保存食だったそうです。また、「鮨」も似ていて、今でいう塩辛のようなものであったそうです。今も「なれずし」や「塩から軍艦」などがありますね。
「寿司」は江戸時代に入ってから、現在、私達が食べる江戸前寿司のスタイルになったものを呼ぶ際に、縁起を担いで「寿(ことぶき)を司(つかさどる)」という、江戸時代の江戸っ子が考えた粋な当て字です。現在ではこちらが最も一般的ですよね。
『ならば「寿司」に統一すればいいのに……』
となりそうなものですが、東京への対抗意識や伝統の重々しさを表したい「おすし」屋さんなんかが「こだわり」で、あえて今も「鮓」や「鮨」を使いたがるので複数の表記が混在していると
いうことらしいです。関西では、江戸前寿司のスタイルであるにもかかわらず、東京への対抗意識であえて「鮓」の字が好んで使われているそうですよ。みなさんのお家の近くのおすし屋さんはどの字で表記されていますか?
「しょうゆ」には「醤油」と「正油」の両方の表記があることですが、これは明らかに正しくは「醤油」です。ただ、「醤」の字は難しく「常用漢字表」にも含まれていないため、昭和の後半になってからあえて「俗字(正式ではないが世間一般で広く行われている字体)」として用いられるようになったとされます。
「正しくはないを知っているけどわざと使っているですよ」
という使い方ですね。
年齢を表す際の「歳」と「才」。これについては明確です。「歳」は中学校に入ってから新出漢字として学ぶものです。「才」の方はいわゆる教育漢字で小学2年生で習います。そうした場合、小学生は中学生になるまでの間は、しかたなく
「私は12さいです」
と「歳」を平仮名で「さい」と書くよりありません。
「それもちょっとなあ……」
ということで、あえて「才」の使用が寛容に認められているというだけのことなんです。
だから、いい大人は意識して「歳」を使うようにすべきです。テレビドラマや映画のタイトルなんかで意味もなく「才」を使うのは好ましくありません。
以上のように、複数の表記がある場合にはちょっと立ち止まってみて、どちらが望ましいのか考えて使っていく必要がありますね。