最近の「若者言葉」に苦言を呈します。
若者は流行の最先端にいますから、言葉の文化においても、常に新しい表現を模索し続けています。いつの時代もそうでした。ある程度の時間が経過すれば、その時代を風靡した若者言葉の大半は「死語」と化していくのです。それでいいのです。それが自然の摂理なのです。逆に言うなら、それをやめた時が、「さよなら若者時代」ということなのかもしれません。
だから、私は「若者言葉」にそう目くじらを立てるつもりはないのですが、それでもその中のいくつかに対しては、やはり苦言を呈さざるを得ません。
まず、「それな」という表現ですけど、もういいんじゃないですか? 「オワコン」にしちゃったら? もう、旬は過ぎているでしょう? そもそも、会話における品がない言葉ですよね。おそらくその発生は、
A 「困ったもんだよね、日本の少子高齢化問題は……」
B 「ああ、それなあ……。国の政策も万策尽きてしまってるしなあ。日本の未来は暗いなあ」
と、こんな感じで、「やれやれ感」「しみじみ感」漂うようなシチュエーションで用いられる「同意」表現の「それなあ」が、いつの間にか語源と無関係に「禿同(激しく同意)」の意味で「それな」連発になってしまっているのだと推測します。この表現、嫌いです。
それから、最近、男子諸君が連発使用している「ワンチャン」。「One Chance」を略した言葉でし
ょう?「もしかしたら可能性がある」という意味で使うんだと思います。「ワンチャン間に合うんじゃない?」とか。でもね、それを使っている人が、とっても重みのないぺらぺらの人に見えちゃいます。これもやめませんか?
極めつけは「やばい」。今流行りの若者言葉というよりも、ずいぶん前から使われてきた言葉だと思います。「今さら?」と思っているかもしれませんが、ここで問題にしたいのは、その用い方が変わってきているということです。
望美 「原宿のMAISON ABLE Cafe RonRon、前から来たかったんだ。ようやく来れたね、ああ、最高。
嬉しいな!」
光 「ほんと! ねえ、何食べる?」
望美 「まず、マカロンコットンキャンディかな。フォンダン・オ・ショコラとウー・ア・ラ・ネージュ
も食べたいな。」
光 「じゃあ、まず、フォンダン・オ・ショコラからにしようよ」
望美 「いいよ♡」
光 「どう?」
望美 「やばーい!!」
さあ、みなさん。望美さんの「やばい」はどういう意味で使われているのでしょう? そう、「めちゃ
めちゃ美味しい」ということですね。でもね、これじゃあ、語彙が乏しすぎるでしょう?! 私は、美味
しいものを食べた時、こんな言葉しか出てこない日本人だらけにはなってほしくありません。
最後は、もしかしたら若者言葉とは限定できないかもしれません。なぜなら、ちゃんとした、いっぱしの社会人でさえもこの表現を使っているからです。私からすればいただけませんなあ、実に……。こんな感じです。電話が鳴りました。
A 「はい、〇〇です」
B 「△△さんは御在宅でしょうか?」
A 「すみません、ちょっと買い物に出かけています。すぐ戻るとは思うんですが……」
B 「あ、ホントですか?」
こう返されると、私は一気に不快になります。今まで何度もそう感じました。
『はあ? 疑っているんですか? なんであなたに嘘をつく必要がありますか?』
と言いたくなります。しかも、決って「本当ですか?」ではなく「ホントですか?」です。困った流行りです。品位のある大人が使う言葉ではありませんな。