「サルに負けてはいられない」 | はぐれ国語教師純情派~その華麗なる毎日~

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国語教師は生徒に国語を教えるだけではいけない。教えた国語が通用する社会づくりをしなければ無責任。そう考える「はぐれ国語教師純情派」の私は、今日もおかしな日本語に立ち向かうのだ。

「猿は人間に毛が三筋足らぬ」

 

 こんな言葉があります。「毛」ではなく、「色気」「情け」「洒落っ気」」の三つのことを意味するのだと聞いたこともあります。

 傷心を紛らすために、H町の動物園に行ったことがありました。みなさんだって、そんな気分に陥ってしまうことがあるでしょう? 「動物園」と言っちゃうと、なんだか「ふふふっ」と笑いたくなってしまうような小さな小さな施設です。ずいぶん前のことです。 

 サルを見てたら何だか癒されて、すっかり元気になりました。お礼にと、近くのお店で「プリッツ」という番線をぶつ切りにしたようなお菓子を買ってきて、こっそりサルにあげました。もちろん、

 

「えさを与えないでください」

 

という看板や貼り紙がないことは確認しましたよ。

 猿は私が差し出した手からプリッツを一本受け取ると、それを両手でたちまち口に押し込みました。とても可愛らしかったので、すぐにもう一本をあげました。そして、自分でもプリッツを一本食べてみたのです。私としては、

 

「おいサル、一緒に食べようぜ」

 

という親愛の気持ちを込めた行為だったのです。でも、サルはそれが気に入らなかったようでした。多分、私に全部食べられてしまうと焦ったのでしょう。サルは片手を私に突き出してキーキーわめいています。ところがその手のひらは下を向いているのです。普通、我々人間であれば、これは人に何かを「もらう」・「いただく」際の動作ではなく、「取る」行為、「よこせよ」という際の動作ですね。やはりいくら可愛らしくても、しょせん「エテ公」ですな。

 でも、私が聞いた話ですと、N峠近辺のサルたちは、猟師に猟銃を構えられると、両手を胸の前で合わせて拝むらしいのです。それに出くわした猟師さんは、さすがにかわいそうになってサルを逃がしてやらざるを得なくなるとのことでした。さらに興味深いことには、しばらくすると、今度はサルが群れをなして拝むようになったのだそうです。おかげで畑は荒らされ放題、お気の毒。

 

サルA「おい、知ってるか? 手をこうやると人間が鉄砲を撃たないんだぜ」

サルB「へえ、いいこと聞いた。みんなにも教えてやろうっと」

 

 こんな感じなんですかね? この話をT先生にお話ししたら……。

 

T先生「それどころか、うちの近所のサルたちは、みんなスーパー袋を持ってきて、畑の作物

  を取っていくんですよ」

私  「うそだー、それ絶対うそだー」

T先生「本当ですって!」

 

 サルの進歩はすさまじいですね。もしみなさんが進化論を信じるのなら、サルの進化に負けないように頑張らなければなりません。私は進化論信奉者ではありませんけどね。