利下げへの政治要請浸透せず | 経済あらかると

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 昨日は朝方公表されたCPIが予想以上に改善したことから、金利が大きく低下し、株の先物が急騰しましたが、午後になってFOMCの結果がでると、上げ幅を縮小することになりました。FRBの利下げへの姿勢が3か月前より大きく後退したためです。

 

 今回の金利据え置きは予想されていましたが、声明文、景気金利見通しが注目されました。声明文では経済成長は堅調で雇用も力強く増加しているとし、インフレは改善しているが依然として高すぎる、としています。経済の需給を調節するために、適切な期間、抑制的な金利水準を維持する、と表明しました。パウエル議長の会見でも、利下げ開始につながるインフレの改善には依然として自信が持てないといい、もう少しデータを確認する必要があるとしています。

 

 それ以上に注目されたのがメンバーによる経済金利見通しです。経済成長予想については3か月前と同じで、今年が2.1%、25,26年がともに2.0%成長を予想、長期トレンド成長率の1.8%を上回る成長が続くと予想しています。パウエル議長は経済の需給を調節するために、抑制的な金利水準を必要なだけ維持する、としていますが、この予想では需給調節が進まないので、抑制的な金利水準をずっと続けなければならないことになります。

 

 そして実際に政策金利予想を見ると、今年末の金利水準は3か月前の4.6%(3回利下げ)から5.1%(1回利下げ)に引き上げられています。利下げなしを予想した人も4人います。経済の予想から見れば、利下げしにくいことになり、この金利予想と整合的です。

 

 しかし、ホワイトハウスからは利下げ要請があり、直前にも複数の民主党議員から利下げ要請がありました。政治の影響は受けないとするパウエル議長ですが、トランプ政権になれば議長解任が言われているだけに、内心はバイデン政権維持を期待し、ある程度協力したいのが心情とみられます。

 

 これもあって、経済見通し、インフレ見通しの強さに反して年内2回の利下げを予想する人も8人いました。それでも政治の要請を十分浸透させることはできなかったことになります。来年以降は大統領がだれになるかで大きく変わるので、今回の予想はあまり参考になりません。