日銀の変化に対応できない市場 | 経済あらかると

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 日銀はこのところ政策スタンスをはっきりと変えています。国会での植田総裁の発言、大型連休前の決定会合における「主な意見」でもこれがはっきり表れています。

 

 つまり、従来は円安の物価への影響は軽微としていましたが、先の決定会合では多くの意見が円安によって、輸入コストがまた上がり、低下してきた財の価格がまた上昇する可能性を示唆しています。植田総裁も国会での発言は、円安が物価に影響を与える可能性を認識し、その場合に金融政策で対応することを示唆しています。

 

 そして「主な意見」の中では、市場が思っている以上に利上げが早く、大きくなる可能性を示唆しています。そして2年後には「自然利子率(中立金利に近い)」近傍に上昇している可能性も提示されています。自然利子率の水準には明言を避けていますが、一般には実質でゼロないしややマイナス、従って名目の政策金利は2%弱となります。

 

 これに従えば、今後2年で0.25%の利上げを8回行って2%近辺に引き上げることになります。これに対し、「主な意見」では急激大幅な利上げを回避し、緩やかに徐々に引き上げる形を示唆しています。これは1年に3回ないし4回の利上げにあたり、市場が予想する今年秋の利上げ1回とは大きく乖離します。

 

 政策金利が2%まで上がるなら、その前に10年国債利回りは3%前後に上昇している可能性があります。足元の10年国債利回りは0.9%をやや超えたところまで上昇していますが、とても3%までの上昇は視野に入っていません。

 

 利上げを経験したことのない市場参加者が多い分、利上げ後の世界をイメージしにくく、利上げへの備えができていない可能性があります。利上げ、金利上昇世界のシミュレーションが必要です。