パウエル議長に翻弄される市場 | 経済あらかると

経済あらかると

生活を豊かにする経済情報を提供します。

 米国には「FRBと争うな、(争えば負ける)」という格言があります。しかし、このところパウエル議長の発言に市場が翻弄されることが多くなり、この格言が揺らいでいます。

 

 市場は昨年後半のインフレ改善の動きを見て、恐る恐る債券、株を買い進めました。FRBはインフレの高止まりから金利を高いところでしばらく維持すると言っていたからです。ところが今年になって「ディスインフレが始まった」と、これまでのインフレ評価を大きく変えてきたので、市場は一気にこの流れに乗りました。長期金利は低下し、ドルは下落、株は堅調な動きを見せました。

 

 ところが2月に出た1月の雇用統計がまさかの51万人増と失業率3.4%という想定外の強さを見せ、さらに1月のインフレ指標が軒並み強く出て、市場は動揺しました。明らかに強い景気の中でインフレが再加速に見えたからです。そして昨日のパウエル議長の議会証言となりました。

 

 曰く、これから出るデータやあらゆる情報がインフレ警戒的なものになれば、従来の想定以上に金利を引き上げる用意がある。最新の経済データが予想以上に強く、ターミナルレート(最高到達点金利)の引き上げを示唆しました。そしてインフレ高止まりでも、2%のインフレ目標は変えず、2%実現に向かって対応する、とも述べました。

 

 これで2年国債利回りはついに5%を超え、逆に将来の景気後退懸念が強まり、10年国債利回りはやや低下、2年・10年の金利差はマイナス105bpを超えました。これはボルカー・ショック時以来のものです。そして株価はダウが575ドル安と久々に大きな下げを演じました。ドル円は137円台まで上昇しています。