米8月の小売り堅調は誤解 | 経済あらかると

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 昨日のニューヨーク市場では8月の小売りが予想を上回る0.3%の増加となり、9月10日までの新規失業保険申請件数が21万3千件に減少したことから、「景気は予想以上に堅調」と市場は受け止めました。このため、長期金利が一段と上昇、2年国債利回りは3.867%まで上昇しました。この金利上昇を受けて株価は下落しましたが、小売統計は決して「堅調」ではありません。

 

 8月の前月比0.3%増は確かに市場予想のゼロを上回りましたが、7月分が当初のゼロから0.4%減に下方修正されています。実際、この小売りを受けてアトランタ連銀の「GDPナウ」は7-9月のGDP予想を、個人消費中心に引き下げました。消費の予想をこれまでの1.7%増予想から0.4%増に下方修正しました。小売統計を反映したためです。

 

 この消費下方修正が主因で、GDP予想はこれまでの前期比年率1.3%成長予想から0.5%成長に引き下げています。辛うじてプラス成長を維持していますが、景気はかなりスローな拡大で、今後のデータ如何では3期連続のマイナス成長になる可能性も排除できません。物価上昇が個人消費に大きなダメージになっています。

 

 もっとも、FRBはこれをもって利上げ幅を縮小するとは思いませんが、米国景気は物価高、金融引き締めの中で減速しているのは間違いありません。ガソリン価格が下がって他の消費に回せる余裕が出たはずですが、それでも家具は1.3%減、家電も0.1%減、オンライン消費も0.7%減です。ガソリン、自動車等ぶれの大きいものを除いたコアの小売りも前月比ゼロです。名目でゼロですから、実質ではマイナスです。長期金利が大きく上昇するほど、景気は堅調ではありません。