日銀に不都合な今朝の貿易統計 | 経済あらかると

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 財務省が本日発表した12月の貿易統計は、日銀にとってあまりうれしくないものでした。少なくとも2つあります。

 

 まず日銀は来年の景気見通しを上方修正しましたが、その要因の1つに、供給制約が改善し、世界経済が順調に拡大する下で、日本の輸出が増えると前提しています。しかし、今回の統計では、中国向け輸出数量が、昨年10月以降、3か月連続でマイナスになっています。12月は5.6%のマイナスでした。輸出の約2割を占める中国向け輸出の減少は、日本の輸出全体に影響します。

 

 もう1つが輸入物価の上昇加速です。日銀は今回の展望リポートで物価の見通しを引き上げましたが、資源価格の上昇は次第に減衰し、物価への押し上げ圧力は弱くなるともみています。しかし、本日の貿易統計では、12月の輸入価格が前年比39.7%上昇と、前月の35.6%、21年全体の18.3%を大きく上回り、まだ加速しています。

 

 物価の上昇の波及にはずれがあります。まず資源価格などの輸入物価が上昇し、これが国内企業物価に波及し、さらにその後消費者物価に遅れて波及します。日本ではまだ最初の波動の輸入物価が減衰ではなく加速していています。パイプの中にはインフレのもとがまだ蓄積されています。

 

 そしてこれが今後企業物価の上昇に波及し、そこからさらに消費者物価にはねます。こうしたステップを考えると、今すでに通信費除きで実態的には2%前後のインフレになっている状況から、新年度にCPIが1.1%に「低下」すると考えるのはかなり無理があります。

 

 今朝の貿易統計は、日銀には「不都合」な事実を突きつけたことになります。