ワクチン如何の経済見通し | 経済あらかると

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 IMF(国際通貨基金)はこのほど世界経済見通しの改定を行いました。2020年の世界GDPがマイナス3.5%成長だったのに対し、2021年は5.5%成長を予想、前回昨年10月の予想から0.3%引き上げました。日米が追加の経済対策を打ち出したことを反映したものですが、ワクチンの普及如何で変わりうるとしています。

 

 今回の予想では、先進国と一部新興国では今年夏までにワクチン接種が普及し、すべての国で22年後半までに普及する、との前提に立っています。ワクチン接種が遅れ、感染拡大がさらに広がる場合は、約0.75%成長率が落ちる、としています。

 

 この前提で21年の各国GDPは、米国が5.1%成長、中国が8.1%、日本が3.1%となっています。日本は3か月前の予想から0.8%も上方修正されています。

 

 このうち日本については楽観に過ぎる予想と見られます。確かに19兆円余りの追加補正予算を決めましたが、コロナ感染の拡大で緊急事態宣言が延長される可能性が高く、1-3月はマイナス成長の可能性があります。ワクチンについても、ファイザー、モデルナ社からいつどれだけのワクチンが入荷するのか決まっていないと言います。2月下旬には医療関係者に接種といいますが、この保証もないと言います。

 

 仮に2月下旬から始まったとしても、夏のオリンピック開幕までに国民の半分に2回の接種をするとなると、1日87万回のワクチン接種が必要になりますが、この体制は全くできていません。イスラエルのように接種情報をコンピューター管理できれば良いのですが、日本ではマイナンバーも普及せず、国と自治体との接続もなされない状況では、管理もできません。1回目がファィザー社製で2回目がモデルナ社製となりかねません。

 

 マイナス75度対応の冷凍庫も足りず、接種場所の確保、ワクチン接種の医療担当者の確保も困難と言います。日本では夏までにワクチン接種が普及することは、ほとんど奇跡に近いものです。米国でもワクチンの接種が遅れていると言います。そうなると五輪開催も怪しくなります。これが中止となるとさらにGDPは下方修正されます。