止まらぬトランプの大統領令攻勢 | 経済あらかると

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 有言実行と言えばそれまでですが、トランプ大統領は「大統領令」を駆使して、これまで公約してきたことを次々と実施に移しています。25日にはついに、メキシコ国境への壁建設など、2本の大統領令に署名しました。
 
 まず、メキシコとの国境3200キロにわたって壁を建設するものです。選挙戦中から繰り返し主張していましたが、批判も多く、「まさか」と思われていましたが、今般、大統領令を出し、これに署名しました。今後数か月のうちに工事をはじめ、費用は100%メキシコに払わせる、といっています。当然メキシコは支払いを拒否しています。この問題を巡って今後さらにひと悶着ありそうです。
 
 もう一つは、不法移民を保護する州、都市に対して、連邦補助金を停止する、というものです。都市で言うと、ニューヨーク、ロス、シカゴ、フィラデルフィア、ボストンなどで、多くは民主党系の市長がいるところです。また、入国審査の職員を大幅に増やすとも言っています。
 
 これに留まらず、数日中に新たな大統領令を出し、移民の入国制限を打ち出す模様です。具体的にはシリア、イラン、イラク、リビア、スーダンなど、イスラムの多い中東、北アフリカ国出身者にはビザを発給しない、というものです。
 
 これら移民、難民への排斥行動は、すでに米国に入国し、生活しているイスラム系の人々や、非白人グループに大きな不安を与え、移民保護団体から強い反発を呼んでいます。
 
 この大統領令という手法、議会の承認なしに政府や軍を動かすことのできる大統領特権ですが、無制限にできるわけではありません。例えば、最高裁が違憲判断を下すか、連邦議会が反対の法律を通すことで、大統領令を無力化する道はあります。
 ただ、最高裁が違憲判断した大統領令は過去に2件しかないようで、これを抑え込むのは結構大変なようです。そして最高裁の長官をトランプ氏が自ら都合の良い人物を選ぶ可能性があり、歯止めが効かなくなるリスクはあります。
 
「いくら大統領が言っても、議会が認めないだろう」との良識、常識は通用しなくなっています。とんでもない人を大統領にしたわけで、今後とんでもないことが起きる覚悟が必要です。