こんにちは、園庭研究所の石田です。
近年、毎年の様に起こる災害…。
園庭や地域環境での保育・幼児教育として何ができるのか、色々考えさせられます。
(これまでの関連記事:コロナ・自然災害・人、そして園庭や地域 1, 2 )
先日ラジオを聴いていると、防災の専門家の方が「自治体やラジオ等からの情報だけでなく、自分の周りの状況を、自分の感覚で察知してください」とおっしゃっていました。
つまり、危険に気づく力、危険に対応する力ですね。
自治体やラジオ等はもちろん、気象庁や研究機関から最新の情報を得て発信してくれます。
でも、川のこの部分が危ないなど局所的な地域情報を察知することは難しいのが現状です。
だからこそ、自分自身が周りの状況を察知する力が必要なんですね。
そして、前記事でも書きましたように、自然は時に人の健康や暮らしを脅かすもの、自然と関わる中では葛藤があるものです。
そう考えた時、今の子ども達の暮らしがとても気になります。
日本の社会全体として、子どもの遊びについても「危険性のある物事はなるべく取り除こう、制止しよう」といった方法に進んでいます。
保育・幼児教育の分野では、指針や要領で「安全に関する指導に当たっては、情緒の安定を図り、遊びを通して安全についての構えを身に付け、危険な場所や事物などが分かり、安全についての理解を深めるようにすること」等、遊びを通して危険を察知する力、対応する力を身につけることが明記されています。(文部科学省,2018、厚生労働省,2018、内閣府,2018)
けれども、実際の保育・幼児教育現場を見ると、上記のような社会や保護者の動きにおうじようこうして危険対応力を育てようと意識されている園もあれば、危険性のある環境や活動を極力排除しようとされている園もあると感じます。
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ここで、子どもが危険対応力に関して、一つ興味深い研究があります。
子ども(人)は、自分の中に「危険ものさし」を持っていて、様々な経験をしながら、合わせて対処法を学んだり、観察や洞察を繰り返すことによって、「危険ものさし」に目盛りを刻み、より精密な「危険ものさし」を作っていくのではないか、とこちらの研究は指摘しています。
詳しくはこちらでご紹介しています。→「危ない事は取り除く」それで良いのでしょうか? 1, 2, 3, 4
絵(森下智子(2007).「自然環境における「こわい」体験が子どもの危険回避意識を育てる」の概要を石田が図示)
では、もし子どもの周りから、危険性のある環境や活動が取り除かれてしまったら…。
子どもは「何が危なくて何が安全か」さえ分からなくなってしまうのではないでしょうか?
そして「危ない事が起こりそうな時・起こった時にどう対応すれば良いのか」も。
子ども達が日々の生活の中で、当然起こりうる危ない物事に出会いながらも、大きな事故とはならずに、危険察知力や対応力を育てていけるように。
園や保護者としてどのような視点や取り組みが必要になってくるのでしょうか?
これについては、次回以降でいくつかのご研究を紹介したいと思います。
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【園庭や幼児と自然のについての著書】
『園庭を豊かな育ちの場に:質向上のためのヒントと事例』
園庭園庭全国調査に基づいて、園庭での保育・教育の質をより高めるための視点や工夫をご紹介しています。面積が小さな園や制約がある園での工夫や、地域活用の工夫もご覧いただけます。
* 2019こども環境学会賞【論文・著作賞】を頂きました。
『森と自然を活用した保育・幼児教育ガイドブック』
石田は以下を担当させていただきました。→第1章5「幼稚園施設整備指針と園庭調査を踏まえた屋外環境のあり方と自然」東京大学Cedep園庭調査研究グループ/第1章8「幼稚園教育要領等の5領域に合わせた先行研究」北澤明子, 木戸啓絵, 山口美和, 石田佳織
『保育内容 環境 第3版』
石田は第6章4節「自然環境と持続可能な社会」を担当させていただきました。