サンタンデール観光記・前編【スペイン巡礼日記 #10】 | ハゲとめがねのランデヴー!!

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『深夜特急』にあこがれる妻(めがね)と、「肉食べたい」が口ぐせの夫(ハゲ)。
バックパックをかついで歩く、節約世界旅行の日常の記録。

 

闘い

 

スペイン、カンタブリア州の中心都市サンタンデールは、バスク地方のビルバオを出て以来の大都市だ。

われわれは少し先の予定を調整するためサンタンデールで2泊とった。

 

本題に入る前に言っておきたいのだが、久々にATMで現金を引き出したところ、いったいどうしたことだろうか、1ユーロを買うために必要な日本円がほんの2週間くらい前とくらべ6円ほど上がっている。

 

このままではバックパックにしのばせている切り札の万札など、旅が終わるころにはただの紙切れになっているのではないか……。

 

大都会は誘惑が多い。

こじゃれたパン屋やバルが通りの左右にあるし、本屋、雑貨屋、洋服なんかも何もかもかわいい。

しかし表示された金額に「×177(1ユーロ=177円)」をしてみると、伸ばした手も瞬時に引っ込む。

 

円安がわれわれの旅を窮屈にしている。

円安がわたしの心を貧しくしている。

本当に円安が憎い。

昔いた会社と同じくらい円安が嫌いだ。

 

しかし邪悪な円安などに屈し、見るからに面白い美術館に入らなかったり、いかにもうまそうな食いものを見過ごすというのであれば、わざわざスペインにまで来た意味などない。

 

わたしはいったん脳内の計算機を叩き割り、サンタンデールでしか出会わないであろうあれこれは全て許容することにした。

マドリードやバルセロナにはまた行けるかもしれないが、わざわざサンタンデールに行くことはこの先なさそうに思えたからである。

 

今回のスペインの旅は円安の呪いとの闘いだ。

 

 

大都会の愉しみ

 

気を取り直してサンタンデールでの観光について書きたい。

 

われわれは日々、歩行の途中で1回はバルに立ち寄っている。

足を休めたり肩凝りを落ち着かせたりするほか、水分補給、トイレのためにもバルは重要な場所なのだ。

 

バルは飲み屋兼カフェ兼レストランであり、店によってどの役割が強いかは異なるが、店の少ない地域ではさらに雑貨屋も兼ねていたり、地域の社交場にもなっている。

 

そしててきぱきとした主人が1人で切り盛りしているようなローカルな雰囲気の店が多いのであるが、サンタンデールはさすが大都会、店員も多いし個々の店に特色が見える。

 

われわれは洗練されたトルティーヤ(スペイン風オムレツ)の店や、チーズ専門のバルなどに立ち寄った。

 

トルティーヤについてはいずれ別に書きたいものだが、チーズについてはここで触れておきたい。

 

うちのハゲ……いやわたしの夫は常々「世界中のおいしいものを食べたい」と言っているが、その中でも興味を持っているのは肉、パン、そしてチーズである。

 

チーズについてはスーパーでも種類が充実しており、おっぱいの形をした「テティージャ(スペイン語でおっぱいの意)」というチーズを購入して食べてみると、さすがおっぱい、ミルク感が強くまろやかな味。

ジャムにもサラミにも合い、たいへんにうまい。

 

しかしチーズというものは普段、たくさんの種類を味見することは難しい。

そこでサンタンデールのチーズ専門店で、ワイン2杯と一口サイズのチーズ6種の割安セットを提供しているのを見たとき、夫とわたしはプチ贅沢を敢行した。

 

コーヒーや日本酒も同様であるが、チーズについても夫はクセの強い味を好み、わたしはさらっとしたものが好きだ。

お互い3種ずつ選ぶことにし、夫は黒いチーズ、ブルーチーズ、濃い黄色のチーズを、わたしはジャムつきのフレッシュチーズ、黄色いチーズ、ピスタチオか何かが入った白いチーズを選んだ。

 

どれもおいしかったが、わたしは特にマルメロジャムが乗ったフレッシュチーズを気に入った。

夫はブルーチーズに感動しており、しきりに

 

「食べてみ、サワヤカやで、臭くないで」

 

と勧めてくるのでしぶしぶ口に入れると、たしかに独特のくさみはなく、清涼感がある。

ブルーチーズは苦手であったが、このような味は初めてだ。

 

夫もわたしも新たな体験に満足した。

 

さらに夫はサンタンデールで、肉屋のショーウィンドウに生ハムがベロベロはみ出たボカティージョ(バゲットに具をはさんだサンドイッチ)がジェンガのように詰まれているのを見つけた。

 

これも購入したところ、生ハムは甘みがあり、厚めなのに噛み切りやすい。

バゲットも生ハムと相性のよいものを使用している。

 

ああ……さすが大都会。

普段ローカルなバルで食べるボカティージョやトルティーヤもおいしいけれど、ひと味違う愉しみがある。

 

かつて日本ではサンタンデールの比ではない大都会で暮らしていたというのに、バックパックをしょって田舎を練り歩いているとすっかりおのぼりさん気分だ。

 

そして食だけでなく美術館や博物館についても、さすが都会の展示であった。

 

後編へ。

 

(チーズ専門店のおつまみセット)

 

(ハモン(生ハム)のボカティージョ。

これは生ハムを押し込んだ状態であり、本当はもっと大胆にはみ出ている)

 

(サンタンデールを出る日、カフェで朝食をとった。

いかにも老舗な雰囲気の「Cafe La Viña」ではカフェ・コン・レチェ(ミルク入りコーヒー)、トースト(バター×ジャム、すりおろしトマト×オリーブオイルの2種)、ハムとチーズのトルティーヤを食べたが全部で10ユーロせず、非常に割安だった。

 

味は飾らないがしみじみおいしく、「100年前から続く地元で愛される店」という感じ)

 

 

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