流浪の「タイティー」 | ハゲとめがねのランデヴー!!

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『深夜特急』にあこがれる妻(めがね)と、「肉食べたい」が口ぐせの夫(ハゲ)。
バックパックをかついで歩く、節約世界旅行の日常の記録。

 

コーヒー屋台の「タイティー」

 

 

タイ、遺跡の町アユタヤの暑い暑いクソ暑い日、宿から「暑いなあ」と思いながら遺跡の方へ向かっていると、ふと飲み物のワゴンが目に入った。 

 濃いコーヒーを抽出する「ビアレッティ」という器具がいくつも並んでいる。

コーヒーや紅茶、ジュース類の屋台はそこらへんにあるが、それはすでにできている液体を用いたあまり本格的には見えないものであることが多い。
それはそれで安くておいしく暑いときにガッと飲むのによいのだが、アユタヤでうまいコーヒー屋に通っていたわれわれはちゃんとした飲み物を飲みたいというセレブな感覚になっていたのだ。

この屋台は珍しくこだわりの見えるコーヒー屋。
現地語のみのメニューだが、客の女性が「これはアメリカーノ、カプチーノ」などと教えてくれたので、ちょうど暑さにめげそうであったわれわれはアイスラテとタイティーを注文した。

「タイティー」というのはタイのミルクティーである。

しかしわれわれが普段目にする「紅茶に牛乳を入れた白っぽいもの」ではない。

まず、色。


色はオレンジ。
サーモンのオレンジをもっとこってりさせたような色である。

それはおそらく濃いめの紅茶にミルクと練乳を混ぜているがゆえの色であり、練乳というのは東南アジアのドリンクによく使われているが、タイティーでも存在感をいかん無く発揮している。

 

この屋台はこだわりの見える店。

紅茶も出来合いを使うのではなかろうと思っていたら、コーヒー抽出の器具に茶葉を入れ、ぐつぐつやりだしたではないか……!

 

夫とわたしは成り行きを見守った。

紅茶エスプレッソと呼べる濃い液体はミルクや練乳とあわさると例のオレンジ色となった。

加えて最後にミルクの泡を乗せるのがこの屋台流であった。 

 

カフェラテとともに受け取り、歩きながら、飲む。

 

お、おお……!

茶葉の味が、する!

ほんもののタイティーだ!

 

目の前で抽出された紅茶の紅茶としての味が、コクのかたまりである練乳と絶妙に組み合わさっている。

砂糖なしで注文したため甘さは練乳と牛乳のものであり、甘いが甘すぎない。

そのミルク味は紅茶の渋みはなくすが茶葉の味は消さない。

 

もちろんラテのほうもおいしかったが、タイティーといえばシロップみたいな安い店でしか飲んだことのなかったわれわれはタイティーのほうにより感激した。

 

この屋台の主は夫婦と思われる感じのよい男女であった。

わたしたちは本格的だが手頃な値段のこのタイティーが忘れられず、翌日も翌々日も同じ場所に行った。

しかしそこに彼らの姿はなく、結局ここで飲んだのは一度きりであった。

 

ワゴンをひいて幸せを売り、また次の場所へと向かう、流浪のコーヒー職人……。

 

単に定休日だったか場所を移動させたかのどちらかであろうが、移動が容易なワゴン屋台という形態に旅の気分が重なり、ロマンをかきたてられたのだった。

 

 

ほんものの茶葉の味

 

タイティーについてはもう一軒、その屋台が見つからず近くのカフェに入ったときにも「ほんもの」に出会った。

 

それは白い壁のこぢんまりした店舗。

席数は少ないが小さな家のような店で、クーラーもきいている。

 

われわれは「タイティーをノンシュガーで」と注文。

 

エスプレッソマシンの「ガー、ガガッ」という音がする。

紅茶をマシンで抽出したのだと思われる。

 

そして出てきたのは、今まで飲んだタイティーの中で一番濃いオレンジ色の液体。

 

一口飲むと、

 

あれ、甘く、ない……!!

 

ノーシュガーにしてもたいてい練乳である程度甘くなるのだが、ここでは甘くない。

ある意味新しい味。

 

夫と口々に感想を言い合ったが、それをまとめると、

 

「まろやかだけど全くミルク感に負けない茶葉の味。

ミルクティーというよりストレートに近いくらい紅茶の味が強い。

これは『ほんもののタイティー』だ!」

 

と、新たに経験した味に興奮した。

この店の濃さであれば、通常の砂糖アリの注文でも甘すぎずほどよくなるのかもしれない。

 

 

このようにアユタヤはコーヒーだけでなく、紅茶についても気づきをたくさんくれた。

われわれは意図せずこのアユタヤで、古い遺跡よりも新しい味を堪能していたのだった。

 

 

(アユタヤ、流浪のコーヒー屋台)

 

(その屋台があった場所の近くのカフェのタイティー)

 

*タイ編はこれにておわり。

 

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