アユタヤでもち米三昧
バンコクから日帰りできるほどの距離にある、観光地アユタヤ。
日帰りできる距離だが日帰りすると疲れるので、1週間近く滞在していたわれわれである。
アユタヤの駅から渡し船で川の向かい側に渡り、市場を抜けて宿に向かう途中、気になる店があった。
かわいらしい横長の店舗で、店先にマンゴーが並んでいる。
どうやらスイーツ系の店らしい。
近づいてみるとフルーツスムージー各種やマンゴースイーツが食べられるらしい。
しかしそれよりバナナの葉で包んだ何かが気になる。
東南アジアの葉包み系スイーツはおいしいと決まっている。
値段はひとつ5バーツ、つまり20円ちょっと。
三角錐と細長いものと2種類あるので、どちらも買ってみることにした。
宿に帰ってあけてみると、予想通りもち米が現れた。
三角錐はタロイモ、細長いほうはバナナが中に入っている。
食べてみるともち米はかためでぐじゅっとしておらず、モチモチした歯ごたえがある。
バナナは熱を加えると芋のようなホクホク感や歯ごたえが出てきて、タロイモは素朴な甘さがたまらない。
もち米はただ蒸されただけでなく焼きあとがあり、おこげ部分もいい味をしている。
安い。
うまい。
というわけでこのもち米葉包みはアユタヤ滞在中、おやつや夜食としてほぼ毎日食べることになった。
普段はコンビニで飲み物を買うときなどに砂糖の分量を確認するなどし、自主的に糖質制限している夫が、この店のもち米スイーツに関しては無制限に食べていた。
毎日やってくるわれわれを、店のおばちゃんはいつも
「あら、また来たんやね」
といった笑顔で迎えてくれたのも嬉しかった。
マンゴー先進国
われわれが毎日食べていたのは葉包みだけではない。
この店のイチオシはマンゴーである。
「マンゴーwith スティッキーライス」、これはもち米とマンゴーに練乳(ココナッツミルク?)をぶっかけたスイーツであるが、わたしはこれが非常に好きだ。
しかしバンコクの屋台街では量が少ないわりに値段が高く、「まあいいか、マレーシアで食べたし……」と諦めていた。
しかしこのアユタヤの店舗はバンコクより安く、もち米の絶妙な蒸し具合にも信頼がおける。
注文するとおばちゃんはマンゴーを1個分むき、そしてもう一つ手にとった。
小ぶりではあるがマンゴー1.5個分がパックに入れられ約270円……!!
食べてみると予想通りのうまさで、熟したマンゴーの甘さはココナッツミルクと同等であった。
そしてマンゴースムージー。
渡されたたっぷりのスムージーは粘度が高く自立している。
「わが輩はマンゴーである!」
と自ら何者であるかを叫んでいるような濃厚さ、味だけでなくねっとりとした食感。
ミキサーでかき混ぜられてもマンゴーそのものであった。
わたしは常々思うのだが、食事に関してこの世界では
「路上よりも店舗、そのままより加工されたもの」
というのがより「文明国」の証と見なされているような気がするが、それは食の豊かさと相反してはいまいか。
わたしは食の幸福度を「マンゴー(などの栄養豊富な生の食べ物)へのアクセス」によってはかることを提唱したい。
美食の国と言われるフランスより、多くの人が憧れるアメリカより、東南アジアの路上はもっともっともっとおいしい。
今まで訪れた地域の中で、わたしは東南アジアがもっとも豊かであると自信を持って言う。
スリランカもフィリピンもタイもインドネシアもマンゴー先進国である。
そしてそういう国を出てヨーロッパなどのマンゴー後進国に向かうとき、または同じく後進国の日本に帰るとき、わたしはいつも
「ああ……しばらくひもじい思いをするのか……」
という残念な気持ちになるのである。
(アユタヤ、「FRUIT LAND」のおばちゃんが売っているのはスイーツではなく「幸せ」)
(右がマンゴー、左がオレンジスムージー。
水滴受けに使っているのは韓国で買ったマッコリ用のカップ。
アジアの屋台ではスープをポリ袋に入れて渡されることが多いので、スープ皿としてもよく使っている。
軽くて汚れにくくて重宝する)
(別の店(アユタヤのココナッツデザート専門店)で買った「ココナッツパンケーキ」
これもとんでもなくうまい。
生地はモチモチどころかモチモチモチモチーーっ!!
としており、その中にコリっと歯応えのあるココナッツがはさまっている)