バンコクのスイーツ
世界各地のコンビニ世界地図というものが存在するなら、モンゴルは韓国でありタイは日本である。
モンゴルの首都ウランバートルには韓国のコンビニが実にたくさんあったが、バンコクではセブンイレブンがそこらじゅうに現れる。
そしてそこにローソンが少々食い込んでいる感じだ。
バンコク滞在中のぞいたセブンイレブンでは、セブンイレブンといえども商品ラインナップは日本と異なっており、そして1店舗あたりの商品の種類がとても多い。
オーストラリアと違い安価な飲み物、デザート、化粧品がたくさん売られている。
久々に購買意欲を刺激され、つい「あれもこれも試してみたい」という気になってしまう。
インドネシアやフィリピンではそのへんのワゴンや市場で売られているスイーツが美味しく楽しい。
しかしバンコクは大都会であり、麺類やおかずの屋台はよくあるが、路上系スイーツはやや中途半端で種類も豊富ではない。
そのため夫とわたしはコンビニやちょっとした店舗で夜食用のスイーツを物色していた。
焼きバナナにココナッツシュガーをつけて食べるレンチンスイーツや、菓子ではないが「TOFU SAN」というかわいいパッケージの豆乳などがその例である。
スイーツが充実しているのはコンビニだけではない。
バンコクにはMRTやBTSなどという韓流アイドルのような名の鉄道があり、その駅には軽食や菓子類を販売する店がいくつも並んでいる。
そうした店のひとつには、インパクトのあるスイーツが売られていた。
カボチャ、そのもの。
いや、正確に言うと小ぶりのカボチャを4等分し、中央部にはプリンらしきものが詰めたデザートである。
他にも気になるお菓子を何種類か買い、宿に持ち帰って食べた。
うまかった。
特にカボチャがうまかった。
夫は食べたものに関してだけは日記をつけているが、このカボチャについては
「作れるようになりたい」
と書いていたので期待している。
サヤーム博物館
バンコクにはサヤーム博物館という中規模の博物館があり、宿からのアクセスもよかったので行ってみることにした。
タイの文化や歴史、習慣などを知るための博物館であるが、考古学的遺物が展示されているわけではなく、正直言うと展示物には物足りなさを感じた。
ミュージアムショップのかわいい雑貨のほうが見ごたえがあった。
しかし体験型の展示は工夫されており、興味をひくテーマもあった。
それはタイの食文化についてである。
その展示室の壁にはタイ料理が描かれた皿がずらりと並んでおり、それを裏返すと料理の説明が載っている。
たとえばそこには「カオソイ」もあった。
これはタイ風カレー麺であり、以前チェンマイを訪れた際にたらふく食った。
てっきりタイ北部発祥のローカルフードだと思っていたが、皿の裏に書かれた説明によると
「200年前にチェンマイに移住した中国系ムスリムが導入したもの」
とある。
人とともに食文化も移動するというのはトルコのカイセリにある博物館でも感じたが(以前パストラミについて記述した)、まさかカオソイにもそのような背景があったとは。
こうなるとタイにおけるムスリムの存在も気になってくるので、新たな探索テーマができてしまった。
さて、駅ナカのスイーツ店に話を戻すと、そこで売られているパック売りのお菓子の中にはこの博物館の展示で見たものもあった。
それは「ジャックフルーツの種」。
東南アジアではカレーの具だとか揚げものだとか、ことあるごとにジャックフルーツにぶちあたる。
そして今回は種!
と思ったら、本物のジャックフルーツではないようだ。
豆のペーストを使った菓子の見た目がジャックフルーツの種に似ているため、その名がついたという。
いずれにせよ、その国では何がとれるのか、どういう歴史があるのかなど、食べ物を通しても十分に旅ができる。
いや、「旅を味わえる」、というほうが適切かもしれない。
(ジャックフルーツの種。
甘いが小ぶりで適度な歯ごたえ。
つまみやすい素朴な味)
(お菓子詰め合わせ。
右上のもち米は同様のお菓子をたしかインドネシアでも食べた)
(カボチャまるごとプリン。200円ちょっとで2人前。
カボチャは本来の甘さ以上の甘みはなく、プリンと合わせてちょうどよい)
(サヤーム博物館に展示されていたゾウの像。
尻がかわいく、手足の短さが夫に似ている)