夜の登山 | アラフォー奔放記

アラフォー奔放記

お手本にならない生き方

正直こんな展開になったことが信じられない。

頭の整理もかねて、綴っていきます。


今度は山から夜景を見てみたい!そう思い、仕事の帰りにさくっと登れそうな高さの山について、優弥さんに質問する。

彼はそこをメインにトレランをしていたからだ。
普通のペースで上り降りは30分ほどだと聞いて、条件がぴったりだと思った。
優弥さんも『お付き合いしますよ』と言ってくれたので喜んでお誘いする。


それが大正解だった。
夜の山なんて女性が一人で登るものじゃない。

なおかつ想像力がたくましすぎて、切り株が人影に見えたり、小さな物音にもいちいちびっくりしたりと暗闇に怯えすぎの私。

最初は心配してくれていた彼も途中から、背後でわざと茂みに向かって石を投げ音をたてたり、 突然あらぬ方向を見て『あ』と言ってみたり、私のびびりを面白がる傾向になってきた。

それに毎回引っ掛かるのだから余計に悔しい。

夜だからか全然行き交う人もいなく、徐々に暗くなってくる森の中を二人で自由闊達に話ながら進んでいく道中は、本当に楽しくてこの時間がいつまでも続けばいいのに…と心の底からそう思った。

頂上に着くと想像以上の景色が眼下に広がっていて、息を飲む。

気がつくと彼が自然と背後に回っていて、ここはあれだよ、あっちがあれ。と住み慣れた町のメインポイントを私に指し示してくれる。

近い……そう意識してしまいそうになるのを振り払いながら、自分の右肩から伸びる彼の腕を横目で見る。

ここで自分が見えない境界線を取っ払えば、すぐに後ろから抱き締められるだろうなと思うような体勢だった。

でもこんな山奥で人気がなく、真っ暗な外の中をまるで雰囲気だけでそうなってしまいました、と言うような流れにはしたくなかった。

彼の顔を見ずにそろそろ降りようかと声をかける。
そういえば私、さっきから彼の顔を見ていない。
意識して見ないようにしてる。
見ると自分の顔に感情が出てしまいそうで。

声だけいつもの軽口と敬語を交えた言葉が、軽快に流れ出てくる。
そうすれば感づかれないはずと思い込むように。

そんな時、1つの物音にいつも以上に驚いた私は、とっさに前にいた彼の背中を掴んでしまった。
瞬間バランスを失い、わりと急な坂を一緒に滑り落ちる。
私の叫び声と彼の踏ん張るような声が重なって、そのまま座り込むように二人は転んでしまった。