パブロ・ハーゼル支持の抗議 | QVOD TIBI HOC ALTERI

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 今日も見ているドイツ紙(Zeit online)に気になる記事が載っていたので、雑ではあるが、訳してみる。

 

 タイトルは、"Proteste für Pablo Hasél: Der große Frust"(パブロ・ハーゼル支持の抗議:大きな不満)。「スペインのラッパー、パブロ・ハーゼルの懲役刑判決に対する抗議は、表現の自由に関するだけではない。抗議は若者の怒りのはけ口である。」ジュリア・マッハー(バルセロナ)の記事。以下、内容である:


 スペインのラッパー、パブロ・ハーゼル逮捕に反対する暴力的な抗議に関する最も鮮やかなインタビューの一つは、まだ法定年齢に達していない若い女性のライアによって行われた。今週初めのバルセロナでの抗議行動中に、彼女は廃ガラス入れをひっくり返し、警察にガラス瓶を投げた。警察は硬化ゴム弾で撃ち返し、そのうちの1つが友人の目を潰した。

 木曜日に、ライアは民間放送局のカデーナ・セール・カタルーニャに電話をかけた。彼女は罪悪感を感じた。彼女の友人は実際にはデモに行きたくなくて、たまたま彼女の後ろにいた。「ごめんなさい」とライアは言った。「しかし、私たちは怒っていたので、それを示したかったのです。」司会はそれが政治的に何であるかを尋ねた。「自由を守れ」とライアは答えたが、それは戦闘的というより絶望的に響いた。「とにかく、私たち若者は誰も将来への希望を持っていない。すべてが不明瞭で、ニュースはすべて不正についてです。」

 32歳のラッパー、ハーゼル、本名パブロ・リヴァドゥラ・デュロが火曜日にテロを称賛し、王室を侮辱したとして逮捕されて以来、スペインの人々は路上で抗議をしている。マドリッド、バルセロナ、バレンシアでは、コンテナが燃え、車やショーウィンドウが壊され、店が略奪されている。抗議者のほとんどは18歳から25歳の若者で、警察によれば、彼らは「白兵戦に従事している」。毎晩、双方に負傷者が出て、未成年者を含む数十人がすでに逮捕されている。

 公式には、(この抗議は)表現の自由に関するものかもしれない。アムネスティ・インターナショナルは、ハーゼル逮捕を非難している。すなわち、ソーシャルメディアで話しかけたり、品のないことや衝撃的なことを歌ったりするだけで起訴される恐れがあってはならない、とアムネスティ・インターナショナルのディレクター、エステバン・ベルトランは述べた。スペインの左翼連合は議会で刑法改革について議論している。「芸術的、文化的、または知的」行動の文脈における言語的過剰は、もはや刑法に抵触しないはずである。しかし、路上では、表現の自由とその限界についての議論は、長い間背景に押しやられてきた。

 「パブロ・ハーゼル事件は、不満、将来への見通しの欠如、貧困問題といった氷山の全体を可視化したきっかけに過ぎなかった」とジョルディ・ミールは言う。この社会学者は、ポンペウ・ファブラ大学で社会運動と紛争の研究に従事している。彼は抗議者の年齢に驚かない。「それは、2008年の金融危機の余波によって子供・青年時代が形成された世代である。」現在、彼らは成長し、コロナによる危機に直面しているが、その程度はまだ推定できない。「彼らは彼ら自身に問いかける:私は人生から何を期待できるのか?」とミールは述べる。

 実際、スペインは金融危機の余波を完全には克服していない。教育・医療制度の削減は、将来への見通しの欠如と同様に、今日でも知覚される。2010年初頭には、若者の失業率は50パーセントを超えていた。現在でも40.7%で、EU平均の2倍以上である。それはヨーロッパ全体で最高の値である。スペインの若者はコロナ危機の影響を非常に受けている。というのも、彼らはその多くがパートタイムおよび短期契約の労働者であるが、彼らの雇用は今回の危機で最初に解約されたからである。

 金曜日の午後、抗議行進のために、300人の学生がバルセロナの大学広場に集まってきた。ポスターにはラッパーの肖像画が飾られており、大きな旗には「釈放と独立」と書かれている。彼らの多くはカタロニア独立運動に近いか、左翼のオルタナティヴシーンに属している。会話の中でこうした態度は混ざり合っている。たとえば、Queralt Brunetがいる。黒髪ショートカットの21歳の政治学科の学生は、過去数日の間、再三再四、デモに参加して、「横行するファシズムと戦う」ために街頭を行進した。

 暴力で? デモ参加者の暴力は常に自己防衛に過ぎないとケラルトは答える。いつの日か彼女は国際機関で働きたいと言う。しかし、修士号は別として、彼女は「少なくとも数年の専門的な経験」を必要としている。「どこで得たらいいのか?スーパーのレジに立てたらラッキーだと思う」。Esther Jorqueraは彼女から数メートルのところに立っている。彼女は33歳で年配の一人であり、以前は水泳トレーナーとして働いていた。彼女は、残業と副業込で、(グロスかネットか指定しなかったが)、収入は月に精々1,100ユーロにしかならないと言った。現在、彼女は教師になるためにカタロニア言語学を勉強している。「立ち退き、失業、独立住民投票を組織した政治家の逮捕ー私を怒らせるものはたくさんあります」とJorqueraは言う。「私たちは街頭に行くしかないのです。」

 8台の装甲兵員輸送車に続き、小さな行進が始まる。スペインの警察本部の前で、数人の抗議者がカートリッジから花火と黒煙を上げる。「今夜お会いしましょう」と男の一人が警察に呼びかけ、拳を握りしめた。スマートフォンのカメラのシャッターを押す。これは、パブロ・ハーゼルがリェイダ大学で撮影されたのと同じポーズである。このミュージシャンは逮捕される前にそこに立て籠もっていた。

 「このジェスチャーは彼を衆目には一種の英雄にした」と社会学者ミールは言う。「パブロ・ハーゼルは、例えば、カルレス・プッチモン(分離主義の独立カタロニアの指導者)のように海外に追放されたことがなく、他の独立主義者のように簡単に逮捕されもしなかった。さらに、逮捕前には狭い音楽シーンでしか知られていなかったミュージシャンは、王室に対する明白かつ全面的な批判で中心になった。スペインでは君主制ほど国家を象徴するものはない。したがって、体制に対する無期限の怒りの投影面としてこれほど適したものはない。

 金融危機の数年間、スペインの政治的および社会的システムに対する一般的な批判は、政治運動を引き起こした。2011年5月、若者は全国の公共空間を占拠した。いわゆるテント村憤慨運動では、民主主義の欠陥が議論され、左翼のオルタナティブ政党ポデモスが出現した。そのようなことがまた起こるのであろうか?ジョルディ・ミールはそれに懐疑的である。彼は、現在の抗議行動に「虚無主義的な衝動」があると考えている。「政治的モデルはなく、政党への言及もない。」

 ミールにとって、これは危機の結果でもある。すなわち、スペインの政党制は腐食しており、カタルーニャでは独立運動がこの展開にさらに拍車をかけている。その結果、政府と野党の境界はますます曖昧になっている。カタルーニャでの激しい抗議の後、今週バルセロナで分離主義のJunts per Catalunya は警察を批判し、治安部隊の改革を求めた。彼ら(および彼らの前任者であるコンヴェルジェンシア)は所管の大臣を任命した。「彼らが本当に望んでいたなら、彼らはずっと前に警察を改革することができたであろう」とミールは述べる。マドリッドでは、ラッパーが逮捕された後、スペインの民主主義の「質の悪さ」について苦言を呈したのは、パブロ・イグレシアス副大統領であった。

 「民主主義が実際に機能するためには、政党も信頼できるものでなければならない」とこの紛争研究者は言う。「しかし現在はそうではない。」急進左翼のCUPと右翼過激派Voxは現在、大衆の怒りと不満から利益を得ている。両党は2月14日のカタロニア地方選挙で大きな利益を見出した。史上最高の46パーセントと、棄権率だけがより明確に増大した。

 午後の早い時間にデモが解散したとき、Queralt Brunetは、もはや政党を信じていないと言う。彼女は数える、すなわち、彼女は10代の頃に政治に興味を持ち始めて以来、新しい地方議会がカタルーニャだけで4回選出され、さらにスペインで5回の議会選挙が行われた。選挙では何も変えることはできない、と彼女は述べる。


 以上である。私のコメントとしては、このような状況で、よく議会制民主主義が機能しているものだな、と、かえって感心する。ナチス類似の極右、暴力主義、反民主主義勢力が台頭しても何らおかしくない状況と思われる。それがなんとか阻止されているのは、ひとえにスペインがEUに所属しているからであるとは思うが、他人事ではない気もする。